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160. レオーニ氏の出資者の会での突然の発言

 レオーニ氏の出資者の会に出ている。まるでアイスクリームのような新作のシャーベットを出す前は不穏な空気が漂っていた。


レオーニ氏は店を空け過ぎだったし、出資を引き揚げるとまで言っていた者もいた。出資者でもないのにここにいる俺のこともさんざん貶めていた。


シャーベットを出してもそれはやまなかった。しかし出資者たちがそれを口にするとあっという間に手のひらを返したのだった。



 試食した彼らはこんなものはいままでない、王都にもない、王宮にもないと褒め、お代わりを求め、さらに増資まで申し出たのだ。俺はこの店の裏方をしているマンロー氏と顔を見合わせる。小声で他に聞こえないように話す。


フェリス「完全にレオーニ氏の思惑通りになってしまいましたね」

マンロー「まあうちにとっては助かりますが」

フェリス「とはいえ、もう少しレオーニさんが困って反省する場面があってもよさそうなものです」

マンロー「そうなるときは私はもっとつらい目にあうので、私のいないときにして欲しいですね」


2人でさんざんなことを言っているが、レオーニ氏にはもっとさんざんなことをされているので罰は当たらないだろう。




 それでこの世界初のような画期的なデザートを見せて、出資者も納得してみなそれぞれに満足してことが終わると思っていたら、そうではなかった。レオーニ氏が発言を始める。


レオーニ「さて、新作をお楽しみいただいているところですが、ここで皆様にお願いがございます」

出資者「ほう、なんだ」

出資者「まだ何かあるのか?」


レオーニ「実はこのデザートは西部に旅行しモンブレビルの名物にヒントを得て開発しました」

出資者「そうだったな。あそこの名物はシャーベットだったな」

出資者「だがこんないいものではなかったぞ」


レオーニ「新しいメニューを開発するには新しい出会いや場所が必要です。皆様にお顔合わせをできないのは大変に恐縮ですが、研究旅行を認めていただきたいと存じます」

出資者「ふむ、確かにこんな画期的なものは店にこもっていたらできないかもしれないな」

出資者「主人が店にいないのは残念だがそれも必要かもしれないな」


何か不穏な雰囲気になってきた。ますますレオーニ氏が好き勝手しそうな勢いだ。ある程度制限されてそれをぎりぎりで破るくらいがちょうどいいように思うのだけれど。


ただなあこのアイスクリームは俺の異世界のアイディアが多分に入っている。俺は調理の能力がないので実現できないが、レオーニ氏が出歩いたからと言って俺のアイディアなしに実現できるとも思えない。それなのにそんなに出歩いていいのかとは思う。まあ面倒だから何も言わないけど。


とは言え、ここまではある意味想定内だった。さんざん俺やマンロー氏に止められたので、外を出歩くのを認めろくらいのおねだりはするだろうとは思っていた。


ところがとつぜん思いもよらぬことを発言しだしたのだ。いや伏線がなかったわけではない。


レオーニ「さらに皆様にお知らせしたいことがございます」

出資者「なんだ?」

出資者「まだなにかあるのか?」


レオーニ「このシャーベットに限らず、西部地域にはまだまだ素晴らしい食材や料理がございます」

出資者「ふうむ」

出資者「確かに田舎の変わり映えのしないものでもレオーニ君が手をかければ何か際立ったものになるかもしれないな」


レオーニ「さて最近クルーズンでは冷蔵流通技術が開発されました。ちょっと前に皆様にお楽しみいただいたシーフードもそれを使って持ってきたものです」

出資者「あれはよかったな」

出資者「マルポールまで行かないといけない魚が楽しめたな」


レオーニ「そこであの技術を使って西部地域の食材を運ぶことを計画しております」


おいおい、うちはまだそんなことは計画していない。冷蔵流通技術はほぼうちの独占だ。よそも参入したがたいてい失敗している。


だいたいあれは冷凍するだけではだめで、その経路全体の整備が必要なのだ。競合を作るつもりでなければ、またうちに乗っかるつもりなのか。


出資者「ほう、それは楽しみだな」

出資者「またよその地方の食材がここで楽しめるのか」


食材自体を楽しむのか、他の人が食べていないものを先に食べたり人に食べさせてその優越感を楽しむのかよくわからないが、そう言う需要はあるのだろう。


レオーニ「そこで西部地域への冷蔵流通の確立のため、さらなる増資をお願いしたいと考えております」

出資者「それはそれで楽しみだが……、冷蔵流通はそんなに簡単ではないのではなかったか」

出資者「知り合いの経営者が手を出して失敗していたぞ」

出資者「確かあれはシルヴェスタ商会がほとんど一手に仕切っていたはずだ。大丈夫なのか?」


ちょっとまて、具体的な計画はまだなのにいきなり金の話か。かなり不穏な空気になってきたぞ。そう思っていたら、さらにとんでもない弾が飛んできた。


レオーニ「ご安心ください。実は冷蔵流通の中心であるシルヴェスタ商会の主人のフェリス・シルヴェスタ氏に本日お出でいただいております」

え!? とつぜん俺の名前が出てしまった。そのシナリオは聞いていない。いったいどうなるんだ?


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