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出資者の集まりに参加

 西部旅行にレオーニ氏を連れて行ったら、レオーニ氏のレストランの経営問題になってしまった。


あまりにも長く店から離れすぎて、出資者が怒っているらしい。出資の引き上げまで検討している者までいる始末だ。


レオーニ氏は彼の作り上げた素晴らしいシャーベットを食べさせればどうにかなると思っている節がある。

もちろんそれは素晴らしいもので、こちらの世界では画期的だとは思うが、それはそれで出資者は揺さぶってくると思う。


フェリス「出資者の方は大丈夫ですか?」

レオーニ「まあ何とかなると思うよ」


フェリス「だけど出資の引き上げなんて話もあるんじゃないですか?」

レオーニ「そんなこと言っているのもいるようだけど、どうせ翻意するだろうし、そうでなかったとしても誰かが代わりに引き受けると思う」


フェリス「そうは言ってももしそれが失敗したら店はまずいじゃないですか?」

レオーニ「じゃあさ、君も出資を引き受けてくれないかな?」


確かにレオーニ氏には世話になっているが、いや世話をしているような気もするが、なにか引き受けたら際限がなくなるような気もしている。ほどほどにしておいた方がよさそうだ。


フェリス「うちで引き受けるとなると、役員たちにも諮らないといけないので」

レオーニ「うーん、なんか面白くないよね。トップがいいと思ったらそれで進む方がいいんじゃない?」


経営にそう言う側面がないわけではない。博打みたいに一か八かにかけて会社を大きくするようなことだ。

とは言え、前世でさんざんブラックでかき回された身からすると、あまり賛同できない。もう少し時間をかけてゆっくり環境を整える方が好みだ。


フェリス「経営のことももう少し考えた方がいいのではないかと」

レオーニ「マンローもそう言うんだよね。いちおう考えてはいるよ。だけど僕がそんなことしてもなんかあまりうまくないような気がしてね」


確かになんでも計算づくで上手く行くわけではない。完全に制御してきっちり計画通り経営を進めるのは無理だし、むしろそんなことはしない方がよくなりそうだ。


ただある程度の方向性くらいは定めておいた方がよいとは思う。何が違うかというと、完全に制御しようとすると無理が生じる。


実はあるのだけれども見えにくい、経営を支える基盤のようなものが作られないままに上滑りして計画が進んでしまう。


そうは言っても全く行き当たりばったりというのも困る。それでは経営の形は作られない。だから方向性は定める。


トップが全て決める必要はないが、どちらの方向に行くかは理解してそれを伝えられないといけない。


レオーニ「とにかくさ、出資者の集まりに来てよ」

フェリス「出資者の集まりに出資者でない私がどういう名目で参加するのですか?」

レオーニ「まあ出資を検討しているとでも言っておけばいいんじゃないか?」



 そして数日後に出資者の会が開かれ、俺もレオーニ氏の希望で参加することになった。

だがさっそく見つかって、とがめだてされる。それは出資していない者が経営について話し合う席に来たら愉快ではあるまい。


出資者「こちらの子は何だね?」

出資者「彼も出資者なのか? この会は出資者のみの会だよ」

フェリス「実は出資を検討しておりまして」

出資者「ふーん、いくらお小遣いをためたのか知らないが、出資と言ったら数百万からだよ」


出資者は自慢げにそう言うが、その程度の金でドヤ顔するなどまったくのお笑い草だ。


俺が出資に躊躇しているのはレオーニ氏にいいように使われたり、関係が変わってしまったりするのが嫌だからで、数百万程度の出資などすぐに可能だ。その10倍だって難しくはない。


とは言え、ことを荒立てても仕方ないので、適当にいなしておく。

フェリス「はあ、ご忠告恐れ入ります」


出資者「ここで新メニューの相伴に預かれるのは、すでに出資している者だけかと思ったが」

レオーニ「実はですね、今回紹介する全く新しいシャーベットは彼との旅行中に作り、しかも彼のアイディアが重要な基盤になっています。ですから彼はもうすでに何度も食べております」


出資者「出資者より先か。我々もずいぶんなめられたものだな。金を出さずとも新メニューをいち早く知れるとはな」

レオーニ「確かにその通りではございますが、私の助手は皆様より先に食べるわけですから、ある意味そのような者とご了承ください」


出資者「なるほどな、レオーニ君の助手か。まあそれならスタッフのような者だから、先に食べるのもおかしくない」


わざわざ君呼ばわりするところが嫌らしい。ついでに自分と同輩の者が先に食べたとなると気に入らないが、下の立場の者が業務として食べたのは許せるのだろう。


ずいぶんと面倒な話だ。自分がおいしいものを食べられればそれでよしとすればよさそうなものなのに。

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