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レオーニ亭 マンロー氏の苦労

 西部旅行から帰ってきた。西部地方の契約先の店の飲食にテコ入れするはずだった。それでレオーニ氏を連れて行ったが、いろいろトラブルが起きていまいちだった。


レオーニ氏の思い付きでいちおう後から冷蔵でシャルキュの食材を送る話もあるが、これもまた調整しなおさないといけない。


レオーニ氏はさんざん滞在を引き延ばした。こちらも彼の店でいろいろややこしいことになっていそうな気がする。それで彼の店に行く。



 彼の店に行ってスタッフのマンロー氏にあいさつする。

フェリス「こんにちは、ちょっとお話したいことが……」

マンロー「あ、シルヴェスタさん。すいません、ちょっと忙しくて……」

そう言われてもこっちも、例の冷蔵流通を大々的に進められても困る。一言言っておかないといけない。


フェリス「お時間は(あまり)取らせませんから。あのですね、例の冷蔵流通の話ですが、あまり先走りされると困るので、うちのアランと相談の上で進めてください」

マンロー「ああ、うちの主人レオーニが進めたいと言っていましたね。すいませんがそれは後回しにします。喫緊の課題があるので」

他人との約束を後回しというのもずいぶんな話だが、とりあえずこちらにとっても都合がいいのでそのままにする。


フェリス「はあ、それなら結構ですが、何をそんなに慌てておいでなのですか?」

マンロー「これはお宅にも責任があることですが、主人があまりに店を空けているので出資者たちがおかんむりなのです。なんでもっと早く帰してくれなかったのですか?」

あ、帰らなかったのが俺のせいだと思っているのか。それで少し態度がきついのか。


フェリス「いえ、何度も帰るように促しましたが、まだ大丈夫だと言ったのはレオーニさんの方です」

マンロー「え? シルヴェスタさんの御用で長引いたんではないですか?」

フェリス「ええ、はじめはやってくれましたが、最後の数週間はむしろレオーニさんの独自研究のための滞在ですよ」

マンロー「ああ、まったく!」

フェリス「それで何が問題なんです?」

マンロー「あまりに主人いないので、出資を見直したいとおっしゃる出資者の方が出てきまして……」


レオーニ氏は店を出すときに金を借りている。それは利子は払わなくてはならないもののすぐに返さないといけないものではない。


だがレオーニ氏の不在が長引いて、出資者が不義理と思ったのか不安に感じたかで、返還を要求してきたのだろう。


ふつうはすぐに返さないといけないと言うことには契約上ならないはずだが、ある程度先でも返すのはやはり店にとってはつらいだろう。


フェリス「何か特別な新しいメニューを見せれば出資者の方も納得すると聞いています。今回はかなり珍しいシャーベットを完成させました」

マンロー「ええ、あれは素晴らしいものです。ただたいていの出資者の方は鷹揚で納得しますが、中には強硬な方もいらっしゃいまして」


確かにグルメマンガじゃあるまいし、おいしいもの食わせておけば金も権力も従わせられると言うのも変な話だ。


ただ今回のことはレオーニ氏に大半の責任があるとはいえ、誘ったのは俺だし、帰せなかったのも俺の責任だ。うちで出資を検討してもいいと思う。


とはいえ俺が出すとレオーニ氏は際限なくいろいろ要求してきそうなので、その点だけは注意しないといけない。


フェリス「あのー、差し出がましいですが、その返還しないといけない額はおいくらほどなんですか?」

マンロー「はあ、それが5千万です」


それくらいならまったく簡単に出せる。だいたいレオーニ氏の要求している西部の冷蔵流通の方がもっとかかるくらいだ。とは言え、簡単に出してしまうと付け込まれそうなので、あまり簡単には引き受けられない。


フェリス「全部はなかなか難しいですが、一部でしたらお引き受けできますし、知り合いの商人にも声をかけることはできますが」

そう言うとマンロー氏は顔が明るくなる。

マンロー「そうしていただけると助かります」


その後もマンロー氏にいろいろ聞くが、何でも出資者たちに謝って回ったそうだ。

レオーニ氏の才能で店ができたわけだが、それを継続させるにはそのサポートが必要だ。それをしているのが彼のようなスタッフなのだろう。



 ところで騒動を引き越したレオーニ氏の方は厨房で何か作業している。

フェリス「こんにちは、レオーニさん」

レオーニ「ああ、君か。きょうは何だい?」

フェリス「お店の方、一大事じゃないですか?」

レオーニ「なんか一部の出資者が特別扱いを要求しているって話だろ。まああのシャーベットを見せれば黙るだろうし、そうでなくても新しい出資者は現れるだろうし」


それはそう言う気もするが、いつもそれで上手く行くとは限らない。もちろんレオーニ氏のような料理に特別な才能のある人はそれに特化した方がいいことは確かだ。とは言え、もう少し経営のことを考えてもいいとは思う。


レオーニ「ところでさ、こんど出資者たちの会があるんだが君も来るといい」

フェリス「え、でも、出資者だけの会でしょう?」

レオーニ「まあ、そうなんだが、要するに金を出している者だけ先に新メニューを見られるというそう言う会だ。君はとっくに見ているわけだし、別に問題はないだろう」


何か思い切り問題がありそうだ。ただ店がどうこうなると言うことになると困る。出ざるを得ないような気もしてくる。


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