ようやくクルーズン帰還
クルーズンの西側の地方への視察の帰り道にいる。いまはシャルキュの町にいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
西部のシャンプやグランルス、あるいはその南のモンブレビルへのツアー用にこの町から半加工品の食材を持って行く話だった。
レオーニ氏がこの町の懇意の店から持って行けばいいと提案するが、冷蔵・冷凍でないと持って行けない。この辺りは冷蔵流通はまだだが、レオーニ氏は整備するよう勧める。
理由を聞くと何のことはない、うちの都合としてはシャルキュから西に食材を持って行きたいのだが、彼は東のクルーズンに持って行きたいらしい。冷蔵流通ができれば確かにそれが可能になる。
レオーニ「冷蔵流通がスタートしたらな、いろいろ持ってきてほしいものがあるんだ」
もうスタートするつもりでいるらしい。
レオーニ氏の友人「クルーズンの方じゃそう言うのがあると聞いたが、こっちにはいつ来るのか知らんぞ」
レオーニ「ああ、大丈夫だ。ここにいるフェリス君がその責任者だから。近いうちに開始するぞ」
そりゃそうだが、今すぐ決められる問題ではない。
フェリス「いやちょっと待ってくださいって。さっきも言ったように氷魔法使いが足りませんから」
レオーニ「と言うことだそうだ。それで氷魔法使いを育てたいんだが、この店で少し人を取ってくれないか?」
レオーニ氏の友人「ちょっと待て、いきなりそんなこと言われても困る」
フェリス「ええ、あれはある程度素質もあるので、誰でもというわけにはいきませんよ」
レオーニ「その素質って言うのはどうやって見るんだったっけ?」
フェリス「魔法学校の先生がしばらく講習して様子を見ないとわからないようですよ」
レオーニ「そうか。じゃあ魔法学校の先生に声をかけて、この町でしばらく講習をするように図ってくれないか? ついでにお前の方は候補者を集めておいてくれ」
友人「あのな、そういうことはもう少しゆっくり調整してから決めるものだ」
フェリス「けっこう費用も掛かりますし、そんなに簡単には行きませんよ」
レオーニ「費用の方は出資者に言えば何とかなるだろう。今度会ったときに頼んでおく。」
フェリス・友人「いや、ちょっと!」
レオーニ「だってフェリス君だって西の方にここの食材を送れるし、私だってクルーズンで受け取れるし、どちらも高く売れるぞ」
レオーニ氏の方はもうする気が満々だ。だが、そんなに簡単でもないだろう。氷魔法使いを育てるのも冷蔵流通を確立するのもそんなに簡単でない。
それにこちらの店だってそんなに生産量を増やせるものでもないはずだ。レオーニ氏の友人に耳打ちして、事務的な話をするとレオーニ氏に言い訳をつけて2人だけで話すことにする。
フェリス「何かおかしな話になっていますが……、どうします?」
友人「いやちょっと海のものとも山のものともつかない話で。上手く行くのかい?」
フェリス「流通の確立もいろいろ面倒がありますからそんなに簡単には行きそうにありません。それにそちらのお店の方もそんなに生産量は増やせないでしょう」
友人「そうだな。人雇っても安定的に量を増やすには少し時間がかかるな」
フェリス「まったく困ったものですね」
友人「だけど、あいつ思いついたら止まらないからなあ」
フェリス「ええ、存じています」
友人「どうする?」
フェリス「彼の店のスタッフは知っているので、そちらを経由して出資者とも話してみます。冷蔵流通自体はいいものなので、小さく始めてみませんか? 上手く行ったら拡大すると言うことで」
友人「まあ、それならいいかもな」
フェリス「ではそんな感じでやりましょう」
友人「お互い苦労するな」
フェリス「ええ、ああいうお人ですから。とは言え、ずいぶん助けてももらっています」
友人「まあ、そうだな。料理に関しては気前よく助けてくれるな。あとは全然ダメだけど」
フェリス「ええ、まあ」
思わず苦笑するしかなかった。
翌日はクルーズンに向かう。途中の町でもレオーニ氏の知り合いの店に立ち寄り、また冷蔵流通の話を持ち掛けていた。
前の日と同じくこちらが引き取って、小規模でできるならするし、できないならしないことにした。
そしてとうとうクルーズンに帰る。こちらは商会の方は俺ができるだけクルーズンにいないようにすると言っていたこともあり、割と順調のようだ。
実はギフトで時々顔を出していたので、長期出張から久々に帰った感じでもなく、仰々しく帰還をお祝いされるような状況ではなかった
役員たちは慣れないとぼやいているが、本当に俺がいなくなったときの予行演習だと思って、何とか対応できるようにして欲しい。
その後は、レオーニ亭に行く。マンロー氏に怒られそうなのであまり行きたくなかった。例の冷蔵流通の話はきちんと打ち合わせておかないといけない。
レオーニ氏だけで決めたら、出資者に頼んでどんどん大きい規模で進めてしまうに違いない。そして気が進まないながら、彼の店の門をたたいた。




