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ヤクザ者の取り調べ

 クルーズンの西側の地方のグランルスにいる。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


 もともと西部の地域のツアーを企画していた。レオーニ氏が同行しているが、さんざん滞在を延長してさすがに帰らないといけない。


ただグランルスで巻き込まれた事件の顛末を、被害者の店主から聞いている。



 うちが大型店と契約していたが、いろいろよくないので小さい店と契約したら、逆恨みしてヤクザ者を使い嫌がらせしたはなしだ。


騎士と鉢合わせさせて捕まえてもらったが、大型店の意を受けた自警団がうやむやにしようとした。だが騎士の追及で悪事がばれたとのことだった。


この後のことは、自警団から漏れてきた話を店主とうちの支店の従業員から聞いたものだ。



 捕まってもヤクザ者は黙りこくっていたらしい。取り調べする自警団もうやむやにしたいから、八百長の取り調べだったのだろう。


だからと言って背後関係くらい調べるべきだろうが、それもろくになかったとか。ヤクザの組にはさすがに事情を聴きに行ったが、親分から知らないと言われて素直に引き下がったとか。


まったく取り調べになっていない。それで2週間くらい牢に入れておいて、これで懲りただろうから釈放という方向になったそうだ。



 ただ自警団の中はうやむやにしてしまいたい者が多いとはいえ、そうでもない者もいた。単純に正義感からというのもいるし、騎士の手前、まずいと思う者もいる。あるいは単に大型店やそのお仲間が気に入らないと言うのもいたようだ。その辺の誰かが騎士に通報したらしい。


騎士の方は捕まえただけで、あとは自警団がうまくすると思ったのに、まったくそうではなかった。当の捕まえた騎士がかんかんになり自警団に詰め寄ったそうだ。



 そこで自警団の中は動揺する。バレれば大型店がまずくなるとあくまでうやむやにしたい者はいる。だが、実際に騎士に詰め寄られるとそうでもない方が優勢になる。


別に正義感だけではなくて、単に騎士や領主ともめたくないだけだ。自警団というが、領主の承認を得てやっている。承認がなくなれば住民や店舗から取っている協賛金が取れなくなる。


いきなり承認を取り消すことはないだろうが、管理監督が厳しくなる可能性は高い。それでは煩わしくて仕方がない。



 大型店で協賛金が多いなどと言っても、別に中小店舗や住民に対して利益があるわけでもない。むしろ大商人たちで牛耳ってやりたいようにしている。


日頃の恨みもあって、この際片付けてしまえと相談がまとまったようだ。自分たちで立ち向かいたくはないが、上が片付けてくれるならそれに乗った方がいいとなる。


自警団の会議でヤクザ者について取り調べで何も出てこないしこれ以上は拘束できないから釈放する方向で議論が進んでいるときに、チクチクとそれへの反対意見が出る。

「まさか騎士様や領府に逆らおうと言うつもりですか?」

「自警団だって領主様の承認のもとでできているわけですよ」

「もうどういう経緯でヤクザ者が動いたのかはわかっているんじゃないですか?」


最後の意見にはさすがに議長がたしなめたが、それでも不満や愚痴は止まらなかったらしい。けっきょく釈放の話は沙汰やみになってしまう。



 ところがその後は遅々として進まなかったそうだ。釈放はなしだが取り調べの方は進まない。だがそれでもヤクザの方は分が悪い。


いちおう刑事訴訟法で人権が守られている前世と違い、いつまでも無期限に勾留しておくことができる。牢に入れて最低限のものだけ食わせておけばいい。


当のヤクザ者の方はしばらくすれば出られると思っていたから、頑張ることもできた。しかし一向に釈放される気配はない。



 長期の拘束となると、拘束されている方もいろいろ金銭面の問題が出てくる。反社会的であるにしても経済活動をして何らかの金を儲けている。


独り身であれば拘束されて、衣食住があれば困らないが、家族でもいればそうはいかない。なんにせよお金が必要になるのだ。


家族がいてもいなくても組の意を受けて犯罪をしていれば、組から何らかの金を出さないといけない。そう言った点でも拘束が長くなればなるほど取り調べ側が有利だった。



 自警団が組の方に聞くとあいつが勝手にやったのだと言い張っている。短期間で釈放されるなら、犯人は自警団から組がそう言っていたと聞かされてもお約束だと納得がいく。


ところが思いのほか拘束が長くなると、もしかして本当に切り捨てられたのかと動揺したらしい。だんだん取り調べに応じるようになったそうだ。


その供述結果に基づいて、組の方にも取り調べをかける。犯人と組は連絡が取れないのでお互いにどんどん疑心暗鬼になる。


さすがに組も危機感を覚えて自警団の中に工作して連絡を取ろうとしたのだが、それも気づかれて対策されてしまったそうだ。




 けっきょくは犯人のヤクザ者の方が落ちてしまい、供述を始めた。すると出るわ出るわ。もちろん嫌がらせの依頼は大型店からで組からの命令でしていたそうだ。


食中毒を出したとか流れ者だとか噂を流した件もやはり大型店の依頼だったとのことだった。

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