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シャーベットの試作がえんえんと続く

 クルーズンの西側の地方の山間の町グランルスから南のモンブレビルにいる。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


 同行のレストランの主人レオーニ氏はいい加減にクルーズンに帰らなくてはならないのだが、モンブレビルでシャーベットの研究をしたいと言う。


本人の言でもレストラン側の言い分でも新メニューを開発して出資者に提供すれば、しばらく帰らなくてもいいらしい。それを理由にここで食べ歩きをしている。


ただ必ずしも遊びではない。全部の店で食べるぞとばかり頭やお腹を痛くしていたそうだし、絡んできた店の主人と料理の勝負をして負かしている。リアナたちは他のものを食べ歩いているが、レオーニ氏はあくまでシャーベット一筋だ。


ところで料理勝負できるくらいならそれを出せばいいんじゃないかと思うのだけれど。その辺を聞いてみる。


フェリス「シャーベットで勝負して買ったと聞きましたが、出資者に見せるのはそれじゃダメなんですか?」

レオーニ「あれは前にここに来た時に美味しい店があったんで頼み込んで教えてもらったんだけど、やはり自分で新しいものを作らないとね」


フェリス「でも出資者の人たちは単に目新しいものを見たいだけじゃないんですか?」

レオーニ「そう言うこともあるだろうけどね。だけどここに来たことのある人もいるかもしれないからね。自分で新しいものを作らないと不安だよ」


自分の本拠であるレストランの運営の方はいい加減にしているが、こういうところはストイックでまじめらしい。



 そこからはすさまじかった。まずうちで調理場を用意する。そこでレオーニ氏はまたいろいろ条件を変えながらシャーベットを作る。


果物の種類をいろいろ変えてみたりそれを混ぜてみたり、酒を入れたり、パルプの入れ方や凍らせ方や途中のかき混ぜなど、いろいろ条件があり、その組み合わせは膨大だ。


ただそれを試せばいいだけという簡単な話でもない。果物も氷もたくさん用意しないといけない。前世のようにそれほど安くないのだ。いちいちけっこうな金額が出ていく。それでもレオーニ氏は平気で払ってしまう。


フェリス「そんなに気前よく払ってしまってレストランの運営の方は大丈夫なんですか?」

レオーニ「うーん、これが失敗したら運営はまずくなるし、逆に成功すればこれくらいの出費はすぐに取り戻せるよ」


ふつうのレストランはうちの運営のも含めて、ふつうに食事に来ているお客さんからの代金で運営しているが、どうやらそうではないらしい。


出資者が自慢のために金を出しているだけあって動く金が桁違いのようだし、新メニューの開発が成功するかどうかで運営が決まるなど何かギャンブルじみている。


なお調理場はうちで探したが、きちんと賃料は払ってくれた。レオーニ氏はわざわざ金貨まで持ってきているくらいだ。

山道には盗賊も出るし、多額の金品を持ち歩くと危ないので、早くこの地とも為替を交換できるようにした方がいい。それはアランに指示しておこう。



 新メニューの開発と言っても、何かすごいことをしているというよりはいろいろな条件を片っ端から試しているという風だ。


とにかく大量の試作品が出来上がる。それも片っ端から試さないといけない。リアナたちもちょっとうんざりした顔だ。


フェリス「十分美味しいと思いますが」

リアナ「ええ、この町で食べ歩いたどのシャーベットよりもおいしいですよ」

部下「わたしもこんなのは初めてです」

レオーニ「うーん、確かにまあまあ上出来だとは思うだけどね。ただ劇的に違ってまったく新しいものかと言われると、そうでもないように思うんだよね」


確かにそう言われるとそんな気もする。既存のもののちょっとした改良版というようなものだ。とはいえ、そんなにいつまでもいることはできない。


クルーズンのレオーニ氏のレストランの管理部門のマンロー氏から言われた期限まではあと2週間ほどしかない。


彼が短めに言っている可能性が高いので、少しは融通が利くかもしれないが、そうそういつまでもはいられない。



 とにかく多数の条件の試作でまた大量の試作品が残るので、例の食べ歩きのときにレオーニ氏たちについて回って残りを食べていた子どもたちを呼んで食べさせたがそれでも追いつかない。


教会の方に顔を出し、救貧院の方にも持って行く。そちらの処理だけでもなかなか大変だ。


そうこうしているうちに時間がどんどん過ぎていく。レオーニ氏も少し焦っているようだ。




 ところでなんでシャーベットにこだわるのかとは思う。アイスクリームの方向にはいかないのだろうか。そういえばこちらでアイスクリームを見たことがない。


何か条件が足りなくてできないのか、それとも何か条件が足りないからその発想に至らないのだろうか。


また前世のものをとつぜん思いつくのも不自然で疑われそうな気もするが、このまま実験が続くのもどうかと思うようになった。


フェリス「シャーベットにミルクは使わないんですか?」

レオーニ「え? 君また何か妙なことを思いついたのかい?」


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