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モンブレビルでまた問題が起きる

 クルーズンの西側の地方の山間の町グランルスから南のモンブレビルに向かう。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


 グランルスで騒動に巻き込まれてずいぶん滞在が長くなってしまった。もともとその南のモンブレビルの町に行くことになっていた。


あまりに問題が片付かないので、同行していたレオーニ氏には先にモンブレビルに行ってもらった。

ただ1週間で帰ってくると言っていたのに帰ってこない。クルーズンの彼のレストランではそろそろ彼に帰ってきてもらわないと困るはずなのだけれど。


仕方がないので、俺がモンブレビルに向かうことにする。モンブレビルまでは1日かからない。



 朝にグランルスを出てモンブレビルに向かう。乗合馬車も1日に何本か出ている。途中何度か休憩して午後にモンブレビルにたどり着く。


たぶんうちの支店に行けば足取りはつかめるだろう。支店立ち上げのときは来ていたので、地理はわかるかと思ったが、よくわからずけっきょく人に聞く。すぐに忘れてしまうものだと思う。



 支店に行って店員に聞くと、居場所がわかる。来るなりすぐにキッチン付きの家を借りたそうだ。もちろんレオーニ氏が主導だが、リアナも止めなかったらしい。


部下の子はどうにもできずその場の雰囲気に流されていたようだ。そりゃまあ、あの2人を止めろと言っても無理ということはわかる。



 家に行くと彼ら3人がいる。また農場に出かけたりしていたらどうしようかと思ったが、無事に会うことができた。


けっこう広めのキッチンのある家を借りている。5人くらい一緒に調理できそうだ。ともかく彼と話する。


フェリス「レオーニさん、心配しましたよ」

レオーニ「やあ、グランルスの問題は片付いたのかい?」

フェリス「なんとかヤクザ者は裁判にかけられることになりました」

レオーニ「そうかい、それなら里の飯屋には手出しもしにくくなるね」

フェリス「それはそうと、そろそろ帰らないと、クルーズンのお店の方は困りますよ」

レオーニ「うん? まだ大丈夫でないかな」

フェリス「2週間と言って来ていたのに、もう1か月近くなりますよ。お店のマンローさんも心配しているんじゃないですか?」

レオーニ「ああ、そうだったね。でもね……」

フェリス「でも、何ですか?」

レオーニ「彼が2週間と言ったら、彼の心づもりは1か月なんだよ」


やれやれ、読まれていた。確かにマンロー氏は俺に1か月で返してくださいと言っていた。


仕事の依頼など遅れがちな人がいると、本当の期限よりずっと手前の期限を言うことがある。


すると本当の期限を教えろなどと言ってくる人がいる。その手のしようのない駆け引きをさらに悪くした感じだ。


フェリス「もし心づもりが1か月だとしたら、いま直ぐ帰らないと間に合いませんよ」

ここからクルーズンまでギフトを使わなければどんなに急いでも3日はかかる。そうすると1か月ぎりぎりだ。


レオーニ「まあ、そうなんだけどね。だけど1か月の心づもりなら、何かトラブルがあれば1週間くらいの延長は織り込み済みじゃないか」


何か借金して返さない人間の言い訳のようだ。これで大都市クルーズンでも指折りの料理人なのだからよくわからない。もっとも才能のある人なんてそんなものかもしれないけれど。


フェリス「もうトラブルもないでしょう」

確かにグランルスではトラブルが起きた。レオーニ氏も手伝ってはくれたが、もう彼の仕事は終わっている。


レオーニ「いや、新たな問題が発生してね」


え? 何かまたトラブルを起こしてくれたのか。グランルスでは確かにうちが契約していた大型店は味も態度も悪くて、仕事を頼むわけにはいかなかった。


とは言え、田舎だと都会ほどの腕を求めるのも無理があるのは確かだ。レオーニ氏があまりに高い水準を求めて、うちの契約先とトラブルを起こしたのかと不安になる。


フェリス「なにかこちらでも契約しているお店に問題がありましたか?」

おそるおそる聞いてみる。


レオーニ「それは、まあまあ、悪くないんじゃないか?」

レオーニ氏のまあまあ悪くないはかなり良い方だと思う。だったら何が問題なんだろう。


フェリス「それでは何が問題なんですか?」

レオーニ「うん、それがね、このシャーベットが何か物足りないんだよ」


とつぜんずっこけたくなる。そう言う言い方もオッサンぽいか。それはともかく、またトラブルかと思ったらスイーツの話だ。


氷魔法はコストが高いし、俺が組織的に養成をするまでは使い手も少なかったので、この世界の人々は氷を手にすることがほとんどなかった。


とは言えモンブレビルは高山の山すその町だ。半日かけて上に登れば1年中凍り付いた世界もある。


そこに氷室を作って氷を保存し、夏になると氷の塊を落として、シャーベットにして食べるのが、この辺の名物になっている。レオーニ氏はその名物が何か物足りないと言うらしい。


フェリス「それが何か問題なんですか?」

レオーニ「何かできそうなんだ。ぜひともここで作ってみたい」

フェリス「氷が必要でしたら、氷魔法使いに頼めばいいだけですから、クルーズンでもできます。帰りましょう」

レオーニ「いや、場の雰囲気というものもある。ここじゃないとやはりうまくないと思うよ」


何かテコでも動かない感じがある。だけどそろそろ連れて帰らないといけないんだよなあ。


かといってギフトなど見せたら便利に使われそうだし。どうしたものかと思い悩むことになった。


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