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とりあえずヤクザ者騒動は一息つく

 クルーズンの西側の地方の山間の町グランルスに来ている。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


 レオーニ氏たちと一緒だったが、この町でトラブルに巻き込まれ、彼らだけは先に南のモンブレビルに向かった。


俺はトラブルを片付けないといけない。トラブルというのは俺が頼んだ里の飯屋という店が大型店に頼まれたヤクザ者に嫌がらせされたことだ。


騎士の協力で無事にヤクザ者を捕まえたのだが、その取り調べをしているのが自警団で、ヤクザ者を頼んだ大型店とつながっている。そのためうやむやにされそうだ。



 大型店の反対派と手を結ぶ話もあったが、そこまでこの小さな町の抗争に巻き込まれたくはない。


そこでまた騎士をつつくことにした。騎士は入れ替わりで里の飯屋に来ている。この前、ヤクザ者を捕まえた騎士がちょうどよく来ている。


騎士「うん、この店の味はなかなかだな」


実は大型店の嫌がらせで肉が手に入らないのだが、豆腐で代用品を作っている。


もっとも肉が手に入らないことについては、嫌がらせがなくても前世ほどには手に入らない。


牧畜産業がそれほど高度化されていないのだから、年がら年中肉が手に入ると言うことはない。


とは言え、やはりまるっきり手に入らないとなると、飲食店としては困る。そこで獣脂を使った代用肉を出しているのだ。



 ただこの店の特徴はそれだけではない。主人はまじめだし、味付けはレオーニ氏がかなり工夫している。


前世で俺が子どものとき田舎の店にはまずい店も少なくなかった。都会の情報がさほど行き届かなかったし、店が多くなかったから多少まずくても店はやっていけたのだ。


いまこのグランルスの町もそれに近い気がする。インターネットがあるわけでもない。魔法で通信ができないわけでもないが、前世の電報より高額だ。


大型店はうちの旅行客相手にまずい料理を出していたが、ことさらひどいわけでもなく、けっこう当たり前のことだったのかもしれない。


そう言う状況の中でレオーニ氏が工夫したとなると、鄙には稀な都会の味ということになる。


主人「お褒めいただきありがとうございます」

騎士「うん、そこらの店とは全く違うな。主人、何をしたんだ?」

主人「ええ、クルーズンの名店の方にいろいろ教えていただきました」

騎士「なるほど、そうか。ここらあたりではお目にかかれない代物だと思ったわ。ただな、クルーズンには何度か行っているが、ここまでのものがあったかなあ?」

主人「ええ、教えていただいたのは名店でございまして、技量が違うかと思われます」

騎士「ほう、何という店だ?」

主人「レオーニ亭というそうです」

騎士「そうか。次にクルーズンに行くときは行ってみよう。ところでその後は嫌がらせなどないか?」


何とかこの話に持ちこむ相談になっていた。向こうから聞いてくれるのはうれしい。騎士に例のことを知らせる。


主人「それが、特に問題はないのですが……」

騎士「うん、何かあるのか?」

主人「はい、あ、いえ、まったくいい加減なうわさ話に過ぎませんが、例のヤクザ者が釈放されるなどと言われておりまして」

騎士「は? 取り調べはうちではないからよくわからないが、なんであんなわかりやすい犯罪者が釈放されるのだ?」

主人「さて、自警団の中にそういうお考えの人もいるらしいとのことです」

騎士「わかった、そちらは問い合わせておく」


何とかなりそうだ。その後はまたうちのグランルス支店の店員から聞いた話だ。


店員「例のヤクザ者の件ですが、騎士団から自警団に問い合わせがあったそうです」

フェリス「それでどうなったの?」

店員「何とかうやむやにしたかったらしいですが、そうもいかなくなったようで、裁判にかけられるそうです」

フェリス「それにしてもずいぶん簡単に動くんだね」

店員「ええ、さすがに自警団の中でも処分するべきだとの声はあったので。ただなんとなく中の力関係でうやむやにしかけていたところに、騎士団からの一撃ですからね」

フェリス「それで耐えられなくなったと」

店員「町民もヤクザ者には恨みを持った者も多かったですし、うやむやにしていたら自警団自体が瓦解しかねなかったようです」


とりあえず、ヤクザ者の件は進んだようだ。あとはヤクザ者だけ切り捨てられて、大型店の方に追及が行かないことになると困る。


けっきょく、そのあたりで時間切れになってしまい、その後は見届けることができなかった。ただ別れ際に里の飯屋の主人とは話した。


フェリス「あんなことがありましたが、大丈夫ですか?」

主人「ええ、おかげさまで騎士の方にもごひいきいただいておりまして。うちをどうにかしようと言うことはたぶんありませんよ」

フェリス「それならよかった。お忙しいとは思いますが、うちの旅行客の方もよろしくお願いします」

主人「ええ、そちらはもちろん責任をもっておつくりします」

フェリス「余計な仕事を頼んで、すっかり面倒をおかけしてしまい申し訳ありません」

主人「いえいえ、おかげさまでレオーニさんにも多くを教えてもらいよいものが出せるようになりました。レオーニさんにもよろしくお伝えください。」


先行きはまだわからないが、何とか良い結果で終わったようだ。主人と別れて、俺はモンブレビルに向かう。


問題なのはレオーニ氏だ。1週間で帰ってくると言ったのに一向に帰ってこない。しかたなく俺も向こうに行くしかなくなってしまった。





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― 新着の感想 ―
レオーニ氏の暴走がまだまだありそうで嬉しいw
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