130. レオーニ氏の指示で作り方を片っ端から試す
西部旅行ツアーの企画でグランルスにいる。レストランのレオーニ氏と、うちの飲食部門のリアナとその部下の子と来ている。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスで契約していた大手食堂との契約を辞めて、里の飯屋という食堂と契約したら大手から嫌がらせを受けている。
いまは里の飯屋に騎士を呼ぼうとメニューの工夫をしている。なんとか豆腐っぽいものを作り、それを肉っぽくするために動物の脂を手に入れた。
リアナの部下「ところでこの脂で何をするんですか?」
フェリス「前に作った豆を煮て固めたあれがあるよね。あれをこの脂で焼くんだ」
リアナ「なるほどね。確かに獣脂を使うとずいぶん味が変わるわね」
獣脂を使ってジューシーと言いたくなったが、言葉が違うので飲み込んだ。
ステーキを焼くときにいい牛脂で焼くと安い肉でもおいしくなったり、ポテトを上げるときに牛脂を入れると風味が出たりする。その効果を狙う。
食べ過ぎはよくないが、いまはそもそも肉自体が足りないので何とかなるだろう。さっそく豆腐を作って獣脂で焼いてみる。
フェリス「さて、できたぞ」
さっそく味見してみる。
部下「前は素朴な味しかしませんでしたが、脂を使うとずいぶん違いますね」
リアナ「本当ね。ここまで変わるとは思わなかったわ」
レオーニ「野菜なんかもけっこう味が変わるからね」
里の飯屋主人「前のときはちょっと不安でしたがかなり期待が持てそうです」
何となくいい雰囲気だ。
レオーニ「だけどこれではまだまだだぞ」
リアナ「そうね。ちょっと肉というには物足りないわね。あまりにも柔らかすぎるし」
部下「ちょっと風味も物足りません」
主人「確かに肉と言われるとちょっと遠い気もします」
今度はダメ出しがたくさん出てきた。そりゃ、素人がアイディアだけで作ったものだから、それだけで何とかなるはずはない。やはりブラッシュアップや微調整が必要だ。
フェリス「まあ、その辺はいろいろ工夫して……」
そう言うがちょっとどうしたらいいのかわからない。
レオーニ「そうだな。いろいろ工夫してみるか」
助け舟を出してくれた。やった! さすがプロ。頼もしい。
そう思っていたが、リアナは何となく浮かない顔をしている。どうしてかはすぐにわかる。
その後はなかなかつらいものだった。いや、さすがプロなのだ。とにかくいろいろな試作品を次から次に作って片っ端から試すのだ。
レオーニ「よし、片っ端から試すぞ」
水の量や水の抜き方、脂の入れ方や焼き方などいろいろある。たとえば水の量が2通りで水の抜き方が2通りなら、それだけで掛け算して4通りになる。さらに脂の入れ方が2通りならまた掛け算で8通りだ。どんどん増えていく。
ただその辺はある程度はある程度工夫もある。確かに脂の入れ方で2倍だが、それは作ったものを半分にして試せばいい。
だから材料も手間もそれで2倍までは必要ない。それに歩いてい度は予想がつくから、明らかにうまくないやり方は途中でやめにしてしまう。
リアナ「この水の量だとあまりうまくないね」
フェリス「じゃあ、やめにしましょうか」
レオーニ「うん、まあそうなんだけど、ちょっとやってみたい」
フェリス「なんでですか?」
レオーニ「うーん、何というか、後で焼くときにまた変わるかもしれないような気がするんだ」
なるほど、そういうことか。つまり相乗効果みたいなことがある。やり方の組み合わせによって何か別の結果が出ることがありうるようだ。それで確かに切り捨てようとした条件がよさそうなこともあった。
やってみるとやはりプロはすごいと思う。いや単に愚直な方法なのだけれど、それを実際に実行できるのがすごい。
俺だったら少し試してダメならすぐにあきらめてしまうと思う。その辺はいままでの経験からくる自身なんだろう。
ところで途中でちょっと疲れてきたこともあるし、なんとなく先が見えてきたので、レオーニ氏に聞いてみる。
フェリス「また大量に残り物が出そうですか?」
レオーニ「まあ、そうなるだろうね」
フェリス「じゃあ、また救貧院に出せそうですか?」
レオーニ「そうだね」
フェリス「じゃあちょっと行ってきますよ」
ちょっと疲れたので一息つきに出かけたい。リアナは少し恨めしそうな顔で見ている。部下の子は真剣そうだが、少し疲れが見える。
里の飯屋の主人に救貧院がどこにあるか聞いて、そちらに出かける。ただちょっと疲れていたので、すこしぶらぶらする。
救貧院についたら修道士と話して食材にあまりが出そうだと話す。
この辺、俺は教会育ちだからか、わりと話しやすい。少し話して適当な時間に引き取りに来てくれることになった。食材を無駄にせず、食材によって贖罪を行うことになった。




