仕入れた者の始末
西部旅行ツアーの企画でグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスで契約していた大手食堂がいろいろまずかったので、小規模の別の食堂・里の飯屋と契約したら、元の大手からいろいろ嫌がらせを受けた。
仕入れに圧力はかけ、ヤクザ者をみせのまわりにだすなど、やりたい放題だ。ヤクザ者の方は自警団では対処できないので騎士を呼ぶことにする。騎士向けの食事を作っていてもらおうと言う算段だ。
肉の仕入れを止められているので、豆腐のようなものを作って肉の代わりにすることを考えている。風味を出すために獣脂を使いたい。
それも手に入らないので農場に行って買おうとしたが、大手食堂の仕返しが怖いらしく、売ってくれない。
レオーニ氏がうちの金でむちゃくちゃな交渉をして1年間全量引き取りということで、何とか売ってもらえることになった。
それなら肉もあるといいのだが、それはないそうだ。家畜ではなく狩りをしたときだけらしく、いまは手元にはないとのことだった。ただ手に入ったときはこちらに回ってくる仕組みだ。
1年間全量引き取りとなってしまったので、その使い道も考えないといけない。レオーニ氏が言うには質がいいので、彼のレストランで使いたいくらいだと言う。
とは言え、輸送だって大変だ。勝手に決めて来て彼のレストランの事務担当のマンロー氏も頭が痛いだろうと思う。
とりあえず引き取ったものをどう分配するかを街に戻って考える。
フェリス「というわけで、全量引き取りになってしまったんですよ」
里の飯屋主人「えっ! それは……、またとんでもないことをしましたね」
フェリス「なんかまずいですか?」
主人「いえいえ、あの農場の作物はなかなか質がいいものですよ。さすがお目が高い」
まあ俺の見る目があるのではなくて、レオーニ氏の見る目があるわけなんだけれど。ただ彼も商売の方は必ずしも見る目があるかどうかは疑問だ。
レストランが上手く行っているのはもちろん彼の料理の才能が一つの理由ではあるが、それだけでなく彼を助けてくれる人たちがいるからだろう。
パトロンあたりが裏で失敗しないように人をつけていることもあるようだ。それ以外にも運だってある。
フェリス「じゃあ、こちらにも回しましょうか」
主人「ええ、そうしていただけると助かります」
輸送料や経費が掛かる上に、それだけでなくさばけなかったときのリスクなどもあるから、まったく仕入れ値そのままで売るわけにはいかない。
ただ暴利を取るような真似はせずに、それなりの利益を載せて里の飯屋に卸すことにする。それからレオーニ氏も欲しいと言うので、必要量は卸すことにする。
フェリス「レオーニさんの方も産物が欲しいんでしたっけ」
レオーニ「ああ、けっこう物がいいからね」
フェリス「そうは言っても、輸送費も含めてペイしますか? それに途中で悪くなることだってあるでしょうし」
レオーニ「うちの店は高級店だからね。材料もより良いものを探さないといけないんだよ。そのためには少しくらい割高でも構わなくてね」
それはそれで確かに高級店だと必要な考え方だろうけれど、程度問題というのはある。まあ、そっちは心配しても仕方ないかもしれない。
ともかく里の飯屋とレオーニ氏の店とに卸してもまだまだ残りそうだ。卸売業をするほどまでは仕入れられそうにないので、あとは小売りをするしかない。
いまいる従業員の仕事を増やして販売もさせるとなると、ブラック化するのでそれはしないことにする。現地の従業員と相談して、人を新しくとって小売りをすることにした。
前世のころに考えたことだが、従業員をあまりに忙しくさせるのはよくないと思う。世の中には従業員を徹底的に使うだけ使わないと損だと考える経営者がいる。
しかし従業員が忙しすぎると見過ごされる種類の仕事もある。つまり本当はした方がいいのだけれど、なされないタイプの仕事だ。
短期的には問題なくても、放置することで中長期的にはボディブローのようによくないことが起こるような課題がある。
あるいは新規の研究開発の類の話で、やはり目先は特に問題がないが、中長期的にそれをしないとだんだん先細りになって行く類のものもある。
コスパなどと言うと、ものすごく賢そうに見えて、実は目先のことしか考えていないことは多々ある。
常にそうだとは言わないが、短期的な利益と中長期的な利益が整合しないことが多々あることは知っておいた方がいい。
そう言うわけで既存の従業員と相談して、店の場所を決めたり、従業員の採用を決めたりする。
旅行ツアーの話で来ていたのに何でこんなことをしているのかと思う。
とはいえ、金があるときは屋台骨が壊れるような無茶な投資でなければ、有望そうなのは手を出してみるのも悪くない。




