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レオーニ氏が無茶な仕入れ

 西部旅行ツアーを企画でレオーニ氏とリアナとその部下といまはグランルスにいる。


10日くらいでクルーズンに帰るつもりだったのに、巻き込まれて長居してしまっている。このままだと1か月コースになってしまいそうだ。


とはいえ、クルーズンに戻ったら戻ったで、あの危ない子爵に狙われかねないので、出ているのはいいことかもしれない。


商会の経営もとりあえずは大きな決断などはしなくてよさそうだ。ということはマルコたち幹部に任せておけば、特に問題もない。


俺がいなくても商会が問題なく動くようなら、しばらくはいないのも悪くないと思う。それに慣れておいた方が、とつぜん俺が不在になったときのためにもいい。


雇われ経営者でどうしてもその地位にしがみつきたいようなら、自分がいないと組織が動かないようにしておいた方がいいのかもしれない。


だが、俺はオーナー経営者だし、正直仕事が手放せるならその方がいいような気もする。世の中の少なくない人もそうだと思うが、たいていの場合は惰性でその地位に居続けるのだ。


俺の場合は何が何でもしがみつきたいわけでもない。というわけで俺が不要になるならそれはそれで大歓迎だ。



 ところで俺はそれでいなくてもいいとして、一緒に来ているリアナも実はすでに研究中心なのでいいし、その部下もさほど重要な役回りではないので構わない。

ところがレオーニ氏はそうでもないはずだ。2週間くらいの予定だったと思うが、1か月コースになりそうだ。彼は大丈夫なのだろうか。


フェリス「あのーレオーニさんは、こんなに長居していいんですか?」

レオーニ「まあ、大丈夫じゃない?」

フェリス「でもお店の方もあるし」

レオーニ「部下たちがちゃんとやるはずだから」

レオーニ氏の元部下だったリアナが複雑そうな顔で見ている。いまの部下たちの気苦労を気遣っているのだろうか。


フェリス「とはいってもやはり主人でないと対処できない問題もありませんか?」

レオーニ「それを対処できるようにならないと、お店は動かないよ。だいいち僕は新しい料理のネタを仕入れる方がよほど店にとってもいい」


前半は取って付けたような理由だ。後半も実は店にとっていいと言うのは嘘ではないが、大半は彼にとっていいだ。


まあここまで乗りかかったら、帰そうにも帰りそうにないが、レオーニ氏の店を守るマンロー氏らが気の毒に思う。



 さていまは肩入れしている食堂・里の飯屋をどうも俺のせいで起こってしまった大規模店の嫌がらせから守るために騎士に来てもらおうとしている。


騎士たちにある程度店に長居してほしいので彼らに向く料理を作ろうとしている。


料理で物事が解決しようとするのは料理漫画のようだ。もっともこっちに来てからの人生は漫画みたいではある。


仕入れに嫌がらせがあって肉が手に入らないが、騎士たちは肉を好むそうなので、豆腐でもどき料理を作ろうとしている。獣の脂があればよさそうな感じだ。


フェリス「獣の脂は手に入りませんか?」

里の飯屋主人「ちょっと手元にはありませんね。市場に行っても買えません。いままではこんなことはなかったのに」

リアナ「やっぱり大型店が嫌がらせしているのかしら」

主人「わかりません。その可能性はあるとは思いますが」

フェリス「他では手に入りませんか?」

レオーニ「農場に行ってみればあるかもしれないな」

フェリス「そうなんですか?」

主人「ええ、市場には農場から持ってきますし、狩りの場合も農場が関わることは多いですね」

リアナ「じゃあ農場に行ってみましょう」



 そう言うわけでみなで農場回りに行ってみることにした。ところが農場に行ってみても獣肉やら獣脂やらは一向に手に入らない。


別に真冬というわけではないのだから、まったく肉が手に入らないはずはない。農場の方まで大規模店の圧力がかかっているらしい。


3軒ほど回ったがいずれもないと言われてしまう。ないはずないんだけどな。


里の飯屋主人「何とかお分けしてもらえませんか」

農場主「うーん、ないんですよ」

何か目が泳いでいる。


レオーニ「あるんだろ。露骨に肉を処理したときのにおいがするぞ」

農場主「勘弁してくださいよ」


やはり圧力がかかっているのだろう。大型店の意向に逆らって里の飯屋に肉類を売ったときの圧力はおそらく市場に出すときに何か嫌がらせをされるということだろう。


市場で全く買い取ってもらえなくなるとか、ひどく安く買いたたかれるなどだ。確かに農場主の立場もわかるだけに心苦しい。


レオーニ「じゃあ、農場の産物を1年間全量買い取るならどうだ?」

レオーニ氏がとつぜん農場主相手にとんでもない条件を出してきた。確かに全量買い取りなら、圧力をかけられても平気になる。

農場主の方はあきらかに動揺している。


農場主「本当に買い取ってもらえるんで?」

レオーニ「なあ、フェリス君、いいよな」

レオーニ氏は自分で言っておいて、こちらに支払いを振るらしい。


フェリス「ちょっと待ってくださいよ。そんなの条件を考えないと答えられませんよ」

レオーニ「まあ、市場で買うよりは安く買えるようにすればいいよ」

フェリス「そうは言っても買ったものはどうするんですか。農場の産物1年分だなんて」

レオーニ「そりゃ、飲食店などに卸すか、小売りの店でも作るか、その辺じゃないか?」

フェリス「そんな気軽に言われても困ります」

レオーニ「市場で買うより安く買えればいいじゃないか!」


うーん、何か話がかみ合わない。

フェリス「仕入れたもの全部、処理できるかが問題なんです?」

レオーニ「いざとなったらクルーズンまで運んだっていいし」


レオーニ氏はなかなか強引だ。ただ何となくいいような気もしてきた。全量というのがどれくらいか聞いてみたが、うちの経済力からしたら大したことはない。


それに前世でも特殊な規格の作物など作ってもらう場合には全量買い取りの契約などがされていたようだ。こちらで引き受けて、ちゃんと使いきれるなら、確かに損はない。


そう言うわけで、商人もはさんで1年間全量買い取りの仮契約を行うことにした。

これで無事、獣脂も手に入る。樽の中にかなりの量が入っていた。

肉の方は狩りをしてきたときだけだと言うので、とりあえずはないそうだ。

ただとりあえず脂だけでもあれば一歩前に進めそうだ。


 結果オーライとは言え、レオーニ氏の独断専行ぶりはちょっと危ない気がする。後で少し文句を言うことにする。


フェリス「さっきのあれですが、あんな風にすぐに重大なことを決めてもらっても困ります。今後は事前に相談してください。」

レオーニ「いや、そうでもないぞ。あの農場の作物はなかなか良かった。前に来た時に目をつけておいたんだ。だから全部引き取っても悪くない。

クルーズンのうちの店で使ってもいいくらいだ」


またすごい告白を聞かされた。もしかすると前に農場見学をしたときに目をつけておいて、この機会だから独り占めしようという魂胆なのかもしれない。


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