ヤクザ者の嫌がらせ
西部旅行ツアーを企画でレオーニ氏とリアナとその部下といまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスでツアー向けに契約してた大手の食堂の内容が悪いので発注はやめて、小さい食堂・里の飯屋との契約を結んだら、大手から嫌がらせをされる。
大手の店は仕入れに圧力をかけ、領主との関係をちらつかせ、里の飯屋について悪い噂を流し、こちらが反応しないのを見て、激高してきた。
それで何が起こるのか不安に思っていた。悪い噂の方はまたしてくるかもしれないが、あまり有効とも思えない。
だいたい町にいる人なら到底信じないようないい加減な噂を流したし、噂の効果が出るまで待つこともできなかった。
たぶんその路線ではないだろう。とは言え、あれだけ辛抱できない性質だとすると、またすぐに何かしてくるに決まっている。
すると翌日案の定くだらないことをしてきた。ヤクザ者を里の飯屋の店の中や周りによこしたのだ。とは言え、直接的な暴力はしてこない。
さすがにそれをすれば自警団なり騎士団に通報されて捕まるのが目に見えているからだろう。
ただ店の周りを風体の悪い連中がうろうろしていれば他の客は入りにくい。客が入ろうとすると露骨に近づいてきてぶつかりそうになる。
「おっと、この辺は危ねえからな。気をつけろ」
表面的には親切のようだが、要するに来るなということだ。
店の中でもヤクザ者が席に座り込んで大声で話している。
「さて、どんなもの食うかな?」
「兄貴、ここは食中毒を出したという噂ですぜ」
「え? なんだって? そりゃ恐ろしいな」
「うっかり、こんな店で食ってお陀仏になったら目も当てられませんぜ」
「おい大将、水持って来い、水。水なら当たらんだろ」
こんな会話をが聞こえてきたら店内の客は嘘だとわかっていても嫌だろう。よほど熱心な店の支持者でなければ、逃げ出してしまうに決まっている。
実際に食べ始めた者は嫌そうに食べていたが、まだ料理が来ていない者は主人に断ってそそくさと出て行ってしまう。
客「すいません、ちょっと用事があったもので」
主人「うちは食中毒なんか出していませんよ」
客「そうでしょうね。まあ、ちょっと都合が悪いんで」
そんな風な調子だ。食べ始めたり、この店で食べると決めている客に対しては、ヤクザ者は絡み始める。
ヤクザ「おう、どうだこの店は?」
とつぜん、風体の悪い男に声をかけられても客は居心地がよくないだろう。
客「ええ、まあ」
ヤクザ「なんだ、はっきりしねえな」
そう言って肩を叩く。
客「はあ」
ヤクザ「まあ、命あってのものだねだからな。店はちゃんと選べよ」
どう見ても嫌がらせだ。こんなことを21世紀の日本でやったらすぐに警察が飛んでくるだろうが、それよりもっと前ならあったかもしれない。
こちらの世界は暴力について少し寛容だったりする。ただそう言うことは逆に反撃を受けたりすることもある。
この店では見ていないが、酒場でやはり風体の悪いのが絡んで、逆に返り討ちにされていたのを見たこともある。
とは言え、暴力で返すのはちょっと難しい気がする。ヤクザ者同士の争いになれば大きい組織が勝つだろう。
里の飯屋の主人にヤクザ者に伝手があるようには思えないし、あったとしても財力的に勝てないだろう。向こうの店の方がそう言うことには長けている。ろくでもないことだとは思うけれど。
そんなことに使う金があれば、もっと料理人の待遇をよくするとか、研修に金をかけるとかまともな方向に使えばよいのにと思う。
この状態を放置していたら里の飯屋は続かないだろう。うちの旅行客は宿で食事の提供を受ける。たぶん連中も宿までは来ないだろう。
そうは言っても店が立ち行かなくなってしまったら、主人は料理を提供することもできなくなる。
フェリス「さすがにこの状態はまずいですね」
主人「ええ、これでは店が立ち行きません」
フェリス「自警団や騎士団に相談しましょう」
主人「はい、昼の営業が終わったらすぐに行きます」
それで昼の営業が終わったらすぐに主人と二人で自警団に向かう。その上で嫌がらせについて話す。
自警団「それで、どんな被害なんだ?」
主人「客に絡んだり、根も葉もない噂を流したりです」
自警団「具体的な被害はないのか」
主人「ええ、いまのところ」
自警団「それだと動きづらいんだよな」
主人「そうだとは存じますが、実際にお客さんは帰ってしまったり来なくなっています」
自警団「まあパトロールには行くから」
何となく期待できそうにない。実際夜の営業になったとき、やはりヤクザ者は嫌がらせに来ていた。
自警団のパトロールも来るがそうするとヤクザ者はその手の行為をやめてしまう。すると外形的には摘発しにくい。
主人「さっきまで嫌がらせがあったのですが」
自警団「だがいまは止んでいるようだな」
主人「ええ、ただ団員さんがいなくなったらすぐに再開するかと」
自警団「またパトロールに来るから」
そんな感じでこすからく監視の目を逃れようとする。自警団の方も制服なしで客として来てくれればいいのにと思う。また次の手を考えなくてはならなくなった。




