面倒ごとを片付ける間、レオーニ氏はまた大はしゃぎ
西部旅行ツアーを企画でレオーニ氏とリアナとその部下といまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスでツアー向けに契約してた大手の食堂の内容が悪いので発注はやめて、小さい食堂・里の飯屋との契約を結んだら、大手から嫌がらせをされる。
大手の店は仕入れに圧力をかけ、領主との関係をちらつかせ、里の飯屋について悪い噂を流し、こちらが反応しないのを見ると探りを入れてきた。
悪い噂が流れていると言ってくるので、それは間違いだから意味がないと反論する。すると相手は激高してきた。
大型店主人「なんだと!」
フェリス「ええ、本人以外にも聞きましたが、食中毒など起きていませんし、彼はこの町の出身です。流れてきたなどという話は嘘です。ですからよそで問題を起こしたというのも嘘です。もっともよそから来た人でも問題なければ仕事はお願いします」
大型店主人「うるさい理屈を並べおって。子どもは黙って大人の言うことに従っていればいいんだ。」
フェリス「はあ。商人同士の対等な取引の関係で、まだ契約も生きていますし、仕事をお願いすることもあるかと思っていましたが、そのような姿勢ではとてもお願いできませんね」
大型店主人「えーい。この町で商売できなくしてやるからな! 覚えていろ」
ありがちな三下の捨て台詞だ。しかしなんともすることが安っぽい。もう少し搦め手とかできないものだろうか。
悪い噂自体がろくでもないが、どうしてもするならすぐに嘘と分かるようなものじゃなくて、本当か嘘かわからないようなものにすればいいし、それに噂を流した後にもう少し待てばよさそうなものだ。
だいたい大手なんだから、仕入れも有利だし、腕のいい料理人使って、調度もよくして、横綱相撲で正々堂々勝負すればいい。そうすれば大半のところでは勝てるはずだ。
どうしても店主が前に出たいのか、それとも職人を安く雇いたいのか知らないが、腕の悪い料理人を出して、まずいものを出していたら仕方ない。
ところでレオーニ氏たちはかってに近隣の山に登ったり農園を見歩いたりしている。この町はこの辺では少し大きめなので、見て歩くところはいくらもある。
フェリス「いろいろトラブルに巻き込まれてしまいすいません。もうすることがないようでしたら、俺はおいて次の町に行ってもらってもけっこうですよ」
レオーニ「いや、いろいろ見て回っているからいいよ。けっこうこの辺の食文化も面白い。それに材料の加工法を習っていたりすると、半日くらいすぐに過ぎてしまうしね」
リアナ「ええ、調理法探しの旅と考えればずいぶんいろいろ見つかっているわ」
いろいろ巻き込まれているが、実は半月余りしか経過していない。彼らが充実しているなら悪くないかもしれない。
とはいえ、レオーニ氏だっていつまでも店を離れているわけにもいかないはずだけど。本人は離れていたいのかもしれない。
リアナ「師匠ったらずいぶんいろいろ調理道具なんかを買い込んできているのよ」
珍しいものを見れば欲しくなるだろうし、そう言うのもこういう旅行の醍醐味だろうなくらいに思っていた。
ところがうちの社屋に行くととんでもないことがわかる。1部屋の片隅に鍋だの釜だの石臼だの山のように積まれているのだ。
フェリス「これどうしたの?」
現地職員「ご同行のレオーニ氏から置いといてくれと言われまして」
しかし、持って帰るにしても馬車一台使いそうなくらい買いこんでいる。大丈夫なのだろうか。
けっきょくうちで手配することにして俺がギフトで運ぶことになりそうだ。もしかしてレオーニ氏は俺のギフトに気づいているのかもしれないとまで心配になる。
いちおうレオーニ氏にも聞いてみよう。
フェリス「レオーニさん、ずいぶんいろいろ買い込んでいるみたいだけど、大丈夫なんですか?」
レオーニ「ああ、いろいろ面白いものがあってね。やっぱりその土地の材料はその土地の道具で加工した方がいいと思ってね」
リアナ「師匠ったら、かまどまで持ち帰ろうとしていたのよ」
レオーニ「さすがに無理そうだから、大まかな構造だけメモしてきたよ」
クルーズンに戻って作るつもりらしい。
フェリス「それにしても、こんなに持ち帰れるんですか?」
レオーニ「後で払うからさ、馬車の手配を頼むよ」
いちおうギフトはバレていないようだ。それにしてもこんなに持ち帰って、レストランの管理をしているマンロー氏のストレスになりそうだ。
フェリス「ところでその土地の材料の方はそんなに持ち帰れるんですか? 季節のものだってあるだろうし」
レオーニ「うん、すでにあちこち声をかけて、定期的に送ってもらうことにしたよ」
旅に出てレストランへの出勤を休んでしまっているが、ある意味レストランの仕込みをしているのかもしれない。
ただ買ってきた材料だって、変わったものがたくさんあったら持て余しそうなものだと思う。
フェリス「だけど、そんなよくわからない材料で、レストランの料理に合うんですか?」
レオーニ「まあ合わなかったらまた救貧院にでも出すよ」
考えたらレオーニ氏の店は高級店で、新しいものを出さないといけない。そう言う圧力が強い。
だからよくわかったものをちょうどよく仕入れてちょうどよく使いきるのではなくて、わからないものにも果敢に取り組むのかもしれない。
それで上手く行かなかった分も、料金の中には入っているのだろう。
それにしてもこれ、ギフトで持ち帰るにしても俺がホールを通す距離持ち帰るのも疲れそうなほどある。
いまの体は健康そのものだが、前世の腰が痛かった時分を思い出してちょっと憂鬱になる。




