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グランルスの領主に会う

 西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


グランルスでツアー向けに契約してた大手の食堂の内容が悪いので発注はやめて、小さい食堂との契約を結んだら、大手から嫌がらせをされる。


うちが契約した食堂は肉の仕入れが難しくなり、さらに領主との関係をちらつかせて発注するように迫ってきた。だが領主はそれほど無茶な人間ではないらしい。




 領主というのは男爵でこの町の町長のような者らしい。貴族と言ってもいま一緒にメニューを考えている里の飯屋にもふらっと現れるくらいのお人だそうだ。


ただ俺たちに嫌がらせしている例の大型店の主人がその領主との関係をちらつかせているので、事情を聴いておいた方がいいような気がする。ついでに今後のためにも顔合わせをしようかと思う。



フェリス「ご領主様にご挨拶できませんかね」

里の飯屋主人「まあご挨拶に伺うだけなら家宰さんに話を通せば可能ですが」


フェリス「それではお話を通してもらえませんか?」

主人「何でお会いしたいのですか?」


フェリス「例の大型店の主人がごひいきだと言っていたので確かめておきたくて」

主人「うーん、あまり問い詰めるような会見は上手くないですね」


フェリス「ええ、それはもちろん気を付けます。表向きは、ますますの観光の振興にするつもりです。例のことも直接でなく間接的に聞くようにはします」

主人「それでしたら何とかしましょう」


フェリス「あ、ついでにこちらの料理をランチボックスにしてお持ちできませんか? 少しくらい余計にかかってもこちらで出しますので」

主人「また面倒な依頼ですね。とは言え光栄なのでお引き受けします」

フェリス「よろしくお願いします。」


ともかく会見の設定も料理も主人は請け負ってくれた。


会見の主題を相手を問い詰めることではなく、もっと先の利益に設定するのは、前世で客先の相手をしたときの経験があるからわかる。


たいして出世もしていなかったが、俺が出ることもあった。そうなると相手が客だと多少理不尽でも耐えないといけない。先の取引に照準を合わせつつ、問題点にも触れるようにしていた。


里の飯屋の主人にしたら、俺は子どもにしか見えないから、直情的に問い詰めたりしかねないと思ったのかもしれない。



 ギフトでクルーズンに戻って商会の様子を見たりして帰ってくると、明後日に領主の屋敷に伺うことになったとのことだった。


なおレオーニ氏たちはまた材料を探して外を出回っている。まったくこういうことには何の役にも立たない。


ところがそう思っていたら、里の飯屋の主人が領主に出すメニューを考えていたのに横から口を出していた。味見して主人の方はずいぶんと納得している。うん、訂正しよう、料理のことなら役に立つと。


翌日もけっきょく料理を考えるのに、主人とレオーニ氏とリアナと部下で試行錯誤していた。



 会見の当日になり、ランチボックスをもって領主の屋敷に向かった。


従者に案内されて屋敷の中に入る。さほど広くはないが、質実剛健な雰囲気が漂っている。


家宰に連れられて部屋に入ると、男爵がいる。60過ぎくらいの少しやせぎすで中肉中背だが眼光の鋭い男だった。




男爵「おや、今日は観光の相談と聞いていたが、まだ子どもではないか」

フェリス「はい、見た目の通り未成年ですが、クルーズンでは観光も含めていささかの商売をしております」

男爵「ふむ、そうか」「外から客に来てもらうのはわが領としても歓迎しておる」

フェリス「クルーズンからツアーでお邪魔しておりますが、お客様方はこの町を大変堪能しておられます」

男爵「おお、そうか。それなら重畳じゃ」


フェリス「それはそうと、ご領主様。本日はいささか趣向がございます」

男爵「ほう、なんじゃ?」

フェリス「こちらに里の飯屋に頼んでランチボックスをご用意いたしました。どうぞお召し上がりください」


箱の中は日本の弁当のように3×3の9つに分けてそれぞれに野菜と穀物主体の料理が少しずつ入っている。


男爵「ほう、これはなかなか見事じゃな。どれ……」

そう言って男爵は食べ始める。


男爵「これはいつもの店の味とは違うな。肉がないのはちょっと物足りないが、ただこれはかなり洗練されておる。クルーズンまで行かないとここまでのものはお目にかかれそうにないな」


それはそうだ。元は主人の料理だが、レオーニ氏が監修している。まさにクルーズンの名店の技量が入っている。それだけでなく日本の弁当の工夫も入っているのだ。


フェリス「お褒めに預かり光栄です」

男爵「さて、それでなんだったかの?」


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