領主のうわさ
西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスでもともと大手の食堂と契約していたが、いろいろ内容が悪いので発注はやめて、小さい食堂との契約を結んだ。
ところが大手の方の主人が気に食わないらしい。仕入れに圧力をかけてきたうえに、領主との関係をちらつかせて発注するように圧力をかけてきた。
クルーズンにギフトで戻ってアランに聞いてみる。
フェリス「前に話していたグランルスの食堂の契約だけど、あの大手の食堂がなんか圧力をかけてきたよ」
アラン「なにがあったんですか?」
フェリス「小さい食堂と契約したら、仕入れに圧力をかけて来て、それでもこちらが発注しないと領主との関係をちらつかせてきた」
アラン「あそこの領主の男爵はそんなに評判が悪いという話は聞きませんね」
フェリス「どうしても地元の子爵のことが思い浮かんでしまってね。クルーズンの領主は悪くないんだけど」
アラン「あのゲルハーはひどかったですからね」
フェリス「過去形だといいんだけど、ぜんぜんそうじゃなくて」
アラン「現地の従業員の子たちもいろいろ頼りになるので聞いてみてください」
フェリス「俺が言うのもなんだけど、うちは若い子が多いからあんまり面倒なことを頼むのも気が引けてね」
アラン「彼らの家族にも話を聞いたりしたこともありますよ」
フェリス「それなら、そうしてみるよ」
よくよく考えるとアランを担当役員として事業を任せているのに、経営者が頭ごなしに介入するのはよくない気がしてきた。
何でこんなことになったかと考えてみると、あの契約していた大型店にいったら、おいしくなくて同行者がみんな文句を言ったからだった。
それでもアランに文句を言ってそちらで解決するべきだったと思う。
フェリス「なんかよけいな首を突っ込んでしまってごめん」
アラン「いえいえ、こちらもあの店の件が見抜けなくてすいませんでした」
フェリス「しかし、別の料理人まで用意するなんて手の込んだことよくするよな」
アラン「人をだます人間もいる前提で仕事しないといけないですね」
実に世知辛いと思う。とはいえ、よくよく考えてみると、前世のブラック企業はごまかしの嵐だった。
残業などしてないことになっていたし、役所に出す文書もまったく実態を現していなかった。
表面だけ取り繕っておいしいところをもらおうとする人間はいつの世もいると言える。
グランルスに戻り現地の従業員にも聞いてみるが、やはり領主についてさほどの悪評があるわけでもない。
フェリス「いま大手食堂の主人とトラブルになっていて、向こうから領主との関係をちらつかせられたけど何か知っている?」
従業員A「いえ、特に領主様が特定の商人に肩入れしているとは聞いていません」
従業員B「あの大型店の主人が話を盛っているだけじゃないですか?」
どうやらこちらの心配し過ぎらしい。あの大型店の店主がありもしないことを言っている可能性がある。
ただもしものこともあるので、もう少し確かめようかと思う。
ところで他のことでは頼りになるが、こういう時に同行者は頼りにならない。興味もないようで、今日も外の農園を回ったり山登りをしたりしている。
レオーニ「そんなつまらないことをしていないで、材料を見に行かないかい?」
リアナ「私たちがいても仕方なさそうなので、師匠について行きます」
部下「すいません。リアナさんたちについて行きます」
人それぞれ向き不向きがあるから仕方ない。とは言え、きちんと特技を持ってそれに向かっていく方が、人間関係ばっかり気にしているより幸せな気もする。
肝心の里の飯屋の主人にも聞いてみる。
主人「ご領主様ですか? うちにもたまにいらっしゃいますよ」
領主は男爵で、他の村より少しだけ大きいこの町の町長といった人らしい。
それで町内の店にはどこにでも現れるそうだ。多少のひいきはあるかもしれないが、そこまであらわなものはないとのことだった。
どうやら大型店の店主は自分の店に来てもらって何か声をかけられて舞い上がっているか、その程度のことらしい。
それなら渡りをつけてもらって一度くらいあっておいた方がいいような気もしてきた。
フェリス「領主様にあいさつをしておいた方がいいような気もするけれど」
主人「何か御用があればお会いできるかとは思います」
確かにそうだ。町長のような人が何も用がないのにいちいち人に会ってもいられないだろう。
本当は大型店の店主がしいれの妨害をしてくるのを何とかしてほしいと言う請願もあるのだが、それも確実な証拠があるわけでもない
また領主との関係をちらつかせて脅してくるのも苦情を言いたいが、それも証人がいるわけでもない。
ただちょっと顔合わせくらいはしておいた方がいい気もするので、何とか会う理屈を考えることにした。




