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オーク退治(上)

 オーク退治のためにレナルドとスコットと協働することになりロレンスも含めた3人の前でホールを使う。


クロが教会の居住スペースにいるので、4人で礼拝堂に移動する。さいわい今は他に人がいない。


礼拝堂の壁にホールを作り、3人を連れることを念じつつクロのところに移動する。


ロレンスはもう慣れているが、初めてのレナルドとスコットは目を丸くして驚いていた。


いや一番驚いているのはクロで、さっき抱えられたのにやはり慣れない人は好きではないようだ。突然飛び上がってじたばたしていた。




「これだけでなく1日以内なら元の場所に戻ることもできます。やってみましょう」


そういって、ホールを逆にたどって礼拝堂に戻る。


「どうですか?」

「は、は、これはすごいな」

「いや驚いた。ギフトというのはすさまじいものだな」

「それでオーク退治ですが、まず迅速に逃げることができます」

「確かにそうだな」

「ただそれだけでなく、いまは戻る方を使ってホールからこっそり攻撃することも考えています」


3人とも二の句が告げられない様子である。


「ぶっつけ本番では危ないので何度か練習してみましょう」

「それはいいがフェリスは疲れないのか?」

「ええ、どうも魔法とも異なるようで、魔力切れも疲労も感じたことはありません」




 せっかくなのでこの機会にいろいろと実験することにした。まずはホールに出先からクロの方に向かってホールに入っていく様子がどのようなものか外側から観察してもらう。


すると壁に穴が開いて見えるわけではないという。外から見ているものによると壁に体が吸い込まれていく様子だそうだ。


また2つ目のホールを開けたときにはもう1つのホールは消えるようだ。その中に誰か残っていても強制的に排出されることを確認する。




 それから敵がホールに入り込めないかどうかを試す。レナルドが敵役になり、他の3人で逃げることにする。


ホールに人や物を入れるときはフェリスがそれを入れたいと意識する必要がある。


敵役のレナルドが味方役のスコットの腕をつかんで引っ張っているとその力に勝たない限り、スコットもホールには入れられないことがわかる。


またフェリスがレナルドをホールに入れないつもりなら、レナルドはホールに入れず壁にぶつかるだけであることもわかった。この辺は実際にオークと戦うときには必要になることである。



 さらにホールから出先に戻るときに、そこにいる者からどう見えるかである。ゆっくり出ていくと、壁から少しずつ顔が出ていくとのことだった。


実はこれは俺も少しは意識したことがある。ホールから出先に戻るとき、人がいて見つかったら困るからだ。ほんのちょっとだけ顔を出して人がいないことを確認して出るようにしていた。


ただし顔を出すのは危険なこともあるので顔を守る仮面のような鉄の防具を用意することにした。防具はホールの外側からはつかみにくい形状にする。


実際にまたレナルドを敵役にして試してみると、ホールから仮面が現れるという不気味な仕様だったとのことだ。


そしてつかもうとしてもうまくつかむことはできず、その間にフェリスは外の様子を確認することができた。




 ここまで実験して、今度はフィールドでの訓練に移る。ロレンスは戦闘はできないので、こちらには参加しない。3人で連れ立って人のいない森の方に向かう。


実戦を想定していろいろなことをしてみる。レナルドとスコットが交互に敵役になり、かなりの勢いで追い詰めて無事に逃げおおせる練習をする。


またホールから棒だけ出して外の敵役をつついてみることもした。実際は槍か剣をさすことになるだろう。


さらには弓矢を持ってきて、中から撃てないか試してみた。さすがに敵役に充てるわけにはいかないので、木に向かって射て、その様子を観察する。これは矢じりを外に出せば可能であった。




 ホールを使う攻撃でいいことは、もし敵が俺たちの出入りできるホールに気づいたとしても、いつが来るかわからず壁をずっと見ているわけにはいかないのだ。


ところが俺にとって有利なことにホールは1日以内ならいつでも戻ることができる。


つまりクロを散々撫でまわして遊んで、ゆっくり休んで、場合によっては眠ってから、気が向いたときに戻って攻撃することができる。


その間、敵の方はずっと壁を見ていることなどできない。これは攻撃するときには圧倒的な有利になる。




 ホールに入るには俺が先頭でなければならないが、ホールから出るときはクロのところでも出先でも他の人でも物でもいいということも分かった。


そのようにホールについての事実を確かめ、攻撃の訓練をする。いくつかシナリオを作り、それに従って演習を積み重ねる。


今回は俺はできるだけ前面に出ないシナリオである。だがそれでも危険にさらされることは間違いないし、想定外の事態が起こりうることもある。


レナルドとスコットの2人はフェリスがいないところでも演習を積み重ねていた。




 ある程度はシナリオに沿った演習をするが、敵役はアドリブを入れる。本当の敵がシナリオ通りに動いてくれるはずもない。


それに対してとっさにまずまず以上の判断をすることが求められる。レナルドとスコットはお互いに相手を出し抜いて感覚を鍛え、俺に対してはとっさにうまく逃げられるようになることを求めた。


得物としては剣ではなく槍と弓矢を使う。槍と剣で戦えばよほどの実力差がない限り槍を持つ者が勝つ。


そうはいっても槍は狭いところでは取り回しがきかない。建物の中などは最悪であり、その場合は剣の方が有利である。


しかし今回は村と町の間の田舎道であり、槍の方がはるかに有利である。また弓矢も広い場所では離れたところから有利である。この辺の武器はあまり使ったことがないが、訓練を積み重ねる。



 そして作戦を立てる。オークを見つけ、できる限りオーク同士を引き離し、また離れたところから弓で攻撃する。近づいてきたら2人は俺を守りつつ槍で攻撃する。


押され始めたら3人でホールで逃げ、様子をうかがう。また相手が背中を見せたところで打って出る。


もし離れ離れになったらフェリスだけ逃げろと言われている。


「いいか、俺たち2人なら何とか対応できるから危なくなったら自分だけ逃げろ。その方が俺たちもやりやすい」


フェリスはまだ子どもであり、弱いのだ。

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