115. 新たな料理を工夫する
西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
旅行客の食事を大型店に頼んでいたが料理がよろしくないので、小型店の里の飯屋に替えたところ、元の大型店から仕入れについて嫌がらせをされる。
肉類が入ってこないそうだ。里の飯屋の主人と相談したところ、いろいろな仕入れルートはありうるが、食材に制限が出てきてしまうことはあると言う。
そこで一つ隣の町のシャンプから仕入れをしようということになった。さっそく手配する。ところがいろいろうまくないことがわかってくる。
現地のうちの商会のスタッフの知り合いに朝早くに行ってもらい、夕方頃に帰ってきた。仕入れに行ってくれた人が言うにはまずとても毎日は仕入れできそうにないとのことだ。
スタッフの知り合い「ちょっと仕入れは上手くないですね」
フェリス「何がまずいですか。少し余計にかかっても構いませんが」
知り合い「買いに行ってみたところ、向こうもそんなに多くは売れないようです」
フェリス「ちょっと量が多かったですか」
知り合い「ええ、もう少し前に注文しておかないと無理のようです。それに馬車の都合もあまりよくなくて、今日は少し無理して融通してもらいました」
なるほど。それは仕方ない。ただそれらを増やすとなるとまた資金が必要になるし、少し大掛かりになってしまいそうだ。
それだけでなく今の時点で割高で、これ以上となるといつまでも続きそうにない。それはそうだろう。近場で調達できるならその方がたいていはいいに決まっている。
それに肉の種類によってはあまり時間をかけるとまずいものもある。冷蔵流通はまた金がかかるのでここでは導入されていない。
というわけで隣の町から仕入れ作戦の方はほとんど助けにしかならないことがわかってきた。
よその町から仕入れ作戦がうまくいかず、里の飯屋で主人も含めてどうしたものかと悩んでいると、レオーニ氏は別の方向で考えていた。
レオーニ「きのう食べさせてもらった料理だが、あれはあれで悪くないが、もう少し別の考え方があるよね」
主人「といいますと?」
レオーニ「肉が手に入らないけれど、いままでと同じようなものを出そうとしていたね。そう言う考え方をすると、つまらない制限になってしまう。思い切って全く違うものを出してしまえばいい」
主人「それはどういう方法ですか?」
レオーニ「まあ、作ってみるからちょっと待っていてくれ」
もちろんリアナや部下や俺も含めて動員される。主人も手伝うと言う。今日は客を取るのはあきらめているそうだ。
そう言って作ったものは確かに肉の要素が全くない。野菜や穀物の料理だった。
むしろ野菜や穀物が主役なのだ。作った過程に関わっているのである程度分かるがかなり面倒な下準備がされている。
たとえば野菜を切ってから数時間干したりするのだ。レオーニ氏は昼前からすでに仕込んでいた。出来上がってテーブルに並べる。
野菜や穀物が脇役でなく主役になっている。ふつう小さく切るものを大きく切って焼いたものや揚げたものなどだ。
主人「こんな料理は初めてです」
リアナ「一品一品は似たようなものを見たことがあるけど、こういうふうに並ぶのは初めてね」
部下「クルーズンのお店の方ではしないですよね」
みんなで試食するが、かなりの驚きがある。いちいち野菜や穀物の味が深いのだ。
レオーニ「どうだい?」
フェリス「いや、これは驚きですね」
主人「野菜だけでこんなものができるんですね」
リアナ「クルーズンのお店の方でも出したらいいのに」
部下「ええ、ぜひ出すべきですよ」
フェリス「だけど肉がほとんどありませんね。ちょっとこれだと拍子抜けするかも」
主人「ところでこんなに肉の雰囲気が全くなくていいものでしょうか?」
レオーニ「考えてみればわかる。旅行客はもちろんこの町に住む人だって、別にこの店で全部の食事をしなくてはいけないわけではない。
価格から行ってもふだん使い以上だから毎食食べる場所ではない。ということは肉の栄養など他の食事でとればいいだけのことじゃないか」
そう言われてみるとその通りだ。大型店の嫌がらせは嫌がらせでしっかり対抗しないといけないが、とりあえずこの路線もいいような気がしてきた。
主人「いま作ってもらったものをうちで出してもいいでしょうか?」
レオーニ「もちろんだよ。どんどんやりたまえ」
レオーニ氏はいろいろ無茶苦茶な人だが、こういうところは気前がよくていい。そうでなかったら付き合いきれない気もするけど。
ともかくそう言うわけで店の常連さんを呼んで試食してもらった。
常連「休みというから心配しちゃったよ。なにかあったの?」
主人「ええ、ちょっと仕入れが上手く行かなくなってしまって」
常連「ふーん、大丈夫なの?」
主人「まだそれは解決してませんが、とりあえず別のものを出せそうです」
そう言って料理を出すと、なかなか好評のようだ。
常連「なんかいつもと違うけど、これはこれでいいね」
主人「そう言ってもらえると、ありがたいです」
他にも客が入ってきて好評のようだ。
主人「レオーニさん、フェリスさん、ありがとうございました」
フェリス「いえいえ私のせいで面倒に巻き込んでしまいまして」
レオーニ「もう少し品数は必要だと思うけど、いけるね」
主人「ええ、考え方はわかりましたから、工夫してみます」
何とかなりそうな気がしてきた。あとは大型店退治の方を考えればいい。




