仕入れが難しくなる
西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
旅行客の食事を大型店に頼んでいたが料理がよろしくないので、小型店の里の飯屋に替えたところ、元の大型店から仕入れについて嫌がらせをされそうだ。
里の飯屋の主人と相談したところ、いろいろな仕入れルートはありうるが、食材に制限が出てきてしまうことはあると言う。
翌日に里の飯屋に行ってみると、やはり仕入れに問題が起こっているようだった。
フェリス「どうですか? 仕入れの方は問題ありませんか?」
主人「それが……、ある店でいつも頼んでいるものが売り切れと言われました。本当に売切れかもしれませんが、もしかしたら手を回されたかもしれません」
フェリス「それは大丈夫なんですか?」
主人「ええ、私自身の菜園もありますし、親族や友人知人もいるので店が開けないなどということはありません」
それなら一安心だ。
フェリス「そうは言っても材料が足りないとなるとなかなか難しい面も出てくるでしょう?」
主人「ええ、それはあります。ただこの辺は昔から寒い季節など乏しい材料で何とか工夫してきた地域です。野菜を干して乾燥させるのもそんな工夫の一つです。なんとかいろいろ工夫してやってみますよ」
前向きで頼もしい。そうは言っても小手先の工夫で何とかしようと言うのはあまりいいことだとは思えない。やはり抜本的な対策が必要だと思う。
一つの方法はクルーズン寄りの町シャンプから物資を持ってくることだ。人を置かなくてはならないので少し経費は掛かるが、半日の距離なのでさほどでもない。
フェリス「私は商売をしているので、シャンプから物資を持ってくることも可能です。必要でしたらおっしゃってください」
主人「ええ、ありがとうございます。必要になりましたらお願いすることにします」
その日もレオーニ氏たちとともに近くの農場を回った。特に売り惜しみなどはないが、やはり肉などは買いにくい。
圧力がかかっているのか、それとも買い占めでもされているのだろうか。もしお金だけのことなら、向こうは気づいていないかもしれないが、こちらの方がよけいに出せると思う。
ただ人間関係やしがらみでやられるとなかなか手出しもしにくい。
一通り回って少し早い夕食を里の飯屋でとることにした。
主人「ようこそ」
フェリス「夕食をいただきたいのですが大丈夫ですか?」
主人「ええ、ただちょっといつものメニューとはいかなくて」
フェリス「やはり仕入れがうまくありませんか」
主人「ええ、やはり肉類が手に入りにくいですね」
フェリス「何ができますか?」
主人「こちらに新たに書いたものからお選びください」
もともとメニューは多くないがさらに絞り込まれている。ともかくそこから4人で適当に選ぶ。
しばらくどうしたものかと話していると、主人がスープから料理を持ってくる。
主人「どうぞおあがりください」
スープは変わらぬ味だ。だがメインの方はちょっと難がある。丁寧に作ってあるし、おいしいことはおいしいのだが、何か物足りないのだ。
フェリス「うん? これは……」
レオーニ「いや、手をかけてきちんとは作ってあるよ、技術だけ見たら前よりもっと上かもね。だけどね……」
リアナ「肝心の肉が足りないわ。豆類で補っているけれど、ちょっと物足りないわね」
部下「ええ、十分美味しいんですけどね」
やはり材料がないとあまりうまくいかないらしい。主人が暇になったタイミングで少し話してみる。
主人「いかがでしたか?」
フェリス「ええ、おいしかったです。ところで仕入れの方はどうでしょうか」
主人「ええ、なかなか肉類が手に入りにくいようで」
フェリス「私のせいですいません」
主人「なに、あの方は昔から横暴でした。迷惑している人はたくさんいます。今回はたまたまあなたのところに来ただけです」
フェリス「よかったら、あちらの店と再契約しましょうか」
主人「シルヴェスタさんにとってそれがいいことならそうしてください」
そうきたか。それは悩ましい。あちらの店と再契約したら吹っ掛けられそうだし、実際に食べる旅行客にも気の毒だ。それを悟ったのか主人が続ける。
主人「あまりよくないようでしたら、こちらは何とかしますから、よいようにしてください」
フェリス「私との契約のせいで本当に申し訳ありません」
主人「いえ、昔からあの大型店の店主は横暴でした。今に始まったことではありません」
フェリス「ともかく必要なものはシャンプから運ぶので何とか店を続けてください」
主人「もちろんあきらめるものですか。仕入れについてはありがたくお受けします」
そう言うわけで1つ東側の少し大きな町から仕入れをすることにした。
もうそろそろ夜に入ろうと言う時間だったが、この町にいるうちの従業員と相談して、知人と馬車業者を紹介してもらい、明日からでも仕入れをしてもらうことにする。
ただそれだけでも終わりそうにはない。何らかの形であの横柄な大型店店主をやりこめないといけない気がしていた。




