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大型店からの不穏な脅し

 西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


旅行客の食事について、元は大通りの大型の飲食店と契約していたが、あまり良い店ではないことが分かった。


そこで「里の飯屋」という小型店に目をつけ、客席が足りないので宿の食堂を使うことでスペースも確保した。


またそこの主人にレオーニ氏の料理を食べてもらい、レオーニ氏の協力もあってずいぶんとメニューを大幅に改善できた。



 この辺の食材も見たし、そろそろ南のモンブレビルに行こうかと思う。ところがトラブルが発生した。


前に飲食を頼んでいた大型店の主人が、里の飯屋の主人との契約をかぎつけたらしい。話がしたいと宿にやってくる。


別に契約を切ったわけではない。もともと必要があれば5日前までに注文する形だった。里の飯屋がさばききれないこともあるだろうし、その場合には大型店に頼むつもりだった。もちろん結果的には頼む回数が大幅に減ることにはなると思う。


大型店の主人がやってきて苦情を言う。


大型店「聞きましたよ。里の飯屋と契約したって。うちが何したって言うんですか?」


いや別にこちらが誰と契約しようと勝手だと思う。独占契約だったわけでもないし。何をしたかというより肝心の仕事をしなかったわけだけど。


ただ本当のことを言っても面倒なので、適当に済ませたい。あまり期待はできないけど、あの店がもう少しましになればまた頼むかもしれないし。


フェリス「いえいえ、お宅にもまた依頼しますよ」

大型店「そうでなくて、うちだけ使ってくださいよ。前はそうだったでしょう」


こんな押しかけまがいの営業をするより、きちんと客にまともな料理やサービスを提供することを優先した方がよほどいいと思う。


とはいえうちだってここに来るまでは、便利なところにある大型店というだけで使っていたのだから、彼が勘違いしたのは一部にはうちの責任もある。


だいたい彼はもともとしょうもない料理を提供していて、レオーニ氏の料理を見せられて教えられても面倒そうに手抜きすることばかり考えていた。


それに比べると里の飯屋の主人はもともと悪くなかったうえに、さらにレオーニ氏の料理を見せられると積極的に自分からそれを取り込もうとして、こちらがついていけないくらい夢中だった。これでどうして元の大型店に頼む理由があるのかと思う。


フェリス「まあ、それはそうでしたが、別に未来永劫そうすると言ったわけでもないですし」

大型店「そちらがそう言う態度なら、こちらも考えがありますよ」


何か不穏な言い草だ。


フェリス「何をするつもりですか?」

大型店「仕入れだって飯屋をやっているものの責務ですな」


こいつ仕入れ先に圧力をかけるつもりなのか。もちろんそういうことは古今東西ある。前世にだってないわけではなかった。


大型店「どうです? うちと独占契約にしませんか?」


冗談じゃない。こんな奴と独占契約などしたら骨の髄までしゃぶられそうだ。うちの旅行客にもよいものが提供できなくなるし、だいたいこの町の飲食も無茶苦茶になりそうだ。


フェリス「さすがにそんな条件は受け入れられません」

大型店「残念ですな。それならそちらの旅行客のお食事はそちらで責任を持たれることですな」


こいつ人の足元を見てきているな。自分の思い通りにならないことがよほど腹に据えかねているのか、小さい店に契約を取られたのが気に食わないのか。


それとも俺が子どもだから下に見ているのか。いずれにしてもどうしようもない。元のように契約させて、もしかすると吹っ掛けてくるのかもしれない。


ただ旅行客にはとりあえず別の町で食事を済ませることはできるが、さすがにグランルスくらいの大きな町となると、素通りというわけにもいかない。


昼食だけとか夕食だけなら何とかなるが、2食続けて外でというのは難しい。とにかくその場はそれで別れる。




 一息おいてから、里の飯屋にも迷惑が掛かりかねないので、そちらにも話をしに行くことにした。


フェリス「ちょっとお話があります」

里の飯屋主人「はあ、なんですか?」


フェリス「実はうちがお宅と契約するとの話が漏れたらしく、大型店の店主が乗り込んできまして」

主人「ああ、あの方から見るとメンツをつぶされたというところでしょうか」


フェリス「ええ、そのようです。それで仕入れに圧力をかけるようなことを言っていたので心配になってきました」

主人「なるほど。あの方ならしかねませんね。うーん、そうするといろいろ難しいことになりますね」


フェリス「食事の提供は難しいですか?」

主人「いえいえ、仕入れは飲食店の責務ですから。あの方だって別に万能というわけではありません。言うことを聞かない人だっていくらもいるので、ご提供はできます。

ただ食材に制限が出てきてしまう可能性がありますので、華やかなお料理は難しいかもしれません」


フェリス「ご面倒に巻き込んでしまい申し訳ありません」

主人「あなただって巻き込まれたわけですし。この町の問題です」


あの大型店の店主に比べて随分腰が低い。こちらとしても何とかしないといけないと思う。

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