やっぱりレオーニ氏が首を突っ込む
西部旅行ツアーを企画していてそのメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
うちが契約していた大型店の食堂に食べに行ったがいろいろ様子がおかしい。まずいし、それ以外もいろいろよくない。
どうやら策略を使ってうちとの契約を取ったようだった。そこでこじんまりしているが、もう少しいい店に契約を変えることになった。
契約を変えることになり、レオーニ氏がまた首を突っ込みだした。
レオーニ「あの店はなかなか良かったけど、まだまだ改良の余地はあるぞ」
そりゃ腕がいいとはいえ田舎の一食堂と、大都市で評判のレストランで、比べるのも酷な話だ。
そうは言っても彼を止めることはできない。まあこの前に大型店にしたくらいのことならさせておいても大丈夫な気もする。
あまり変な方向に行かないようにコントロールしないといけない。
フェリス「じゃあ、この前みたいにレオーニさんの料理を食べてもらいましょうか」
レオーニ「うん、それはいいとして、この地ならではの新メニューを作り上げて、仕入れ先もすべて再検討して、また必要な作物を植えて、さらに調度も……」
それだけやっていくら時間と金がかかるかわかったものではない。あなたはレストランの主人だろと思う。彼のレストランの事務方のマンロー氏など帰ってくるのを待っている人だっている。
さすがに当初の予定の2週間は無理にしても1月以内に帰らないといけない。もう少し現実的な路線で行ってほしい。
フェリス「いちおう旅行の予定は2週間でもうすでに1週間は経過しています。その間にできることからしましょう。その後は継続としてまた時間のある時に来ればいいことです」
別に何度も来るつもりはないが、そう言うことにしておく。元気いっぱいの目がキラキラしているフェリス君だったはずなのに、すっかりオッサンの処世術が身についてしまっている。
2週間というのは出発するときに立てた予定だ。もちろん守れそうにない。ただ裏で関係者で協議した中ではひと月まではいいだろうと言うことだった。
レオーニ「うん、そうか。とりあえずメニューの見直しだな」
それだって他人の店のメニューをあまりどうこうというのもどうかと思う。もちろんうちの旅行客に食事を出してもらうわけだから注文するのはありだ。
とはいえ、メニューをすっかりコントロールするとなるとやはり異常だ。それに全面見直しするほど時間がない。
フェリス「この前、大型店で披露した腕前のほどを見せてはいかがでしょうか?」
レオーニ「うーん、一度出したものをまた出すのは気が引けるのだが」
そんなことあってたまるか、あんたはレストランの主人だろ! と思う。国王か大貴族のおつきの料理人じゃあるまいし。
ともかく里の飯屋の主人に大事な話があるから、近いうちに時間を取ってくれないかと話す。
さいわい明後日が定休日なので、その日に来てくれると言う。そこで宿の方の厨房も借りておく。
翌日は予定が空いてしまい、またレオーニ氏に付き合って農場回りをすることになった。今回ははじめからロバ付きの荷車を持って行く。
あいかわらず、いろいろ買いあさり、それだけでなく農場主にあれはないかこれはないか、あれを育ててみないかなどと言っている。
彼自身のレストランの仕入れも考えているんじゃないかと思う。それならそれで、こんなところまで来てもらった収穫にでもなればいい。
その翌日になり、里の飯屋の主人が宿に来た。
主人「今日は何かお話があるとのことで」
フェリス「はい、前にもお願いしましたが、うちの旅行客向けの食事をお願いしたいのです。場所についてはこの宿のこの食堂が借りられることになっています」
主人「なるほど。それならお引き受けするにもやぶさかではありませんが」
フェリス「そう言っていただけると助かります」
レオーニ「おいおい、待て待て。こちらも話がある」
しっかり介入してきてしまった。こちらがビジネスの話をしているのに、どちらが子どもかわからない。もっとも中身は俺の方が年長だけど。
フェリス「こちら、クルーズンのレオーニ亭のオーナーシェフです。今日は彼の料理をお召し上がりいただきたいと存じます」
主人「はて、それはまたどういった意図で?」
レオーニ「まあ、あまり面倒なことを考えずにおあがりください」
というわけでレオーニ氏のコースが始まる。この前、大型店で出したものよりさらに洗練されている。
品数は多いが、この前こちらの主人が出した、野菜の炙り・メインのパスタ・締めのデザートも意識している。
パスタは麺状に近い形にして、この地域の特色を出しつつも、新たな方向性も付け加えている。
野菜もデザートも仕入れたものを使いつつも、やはり新味がある。しかも多種のハーブやスパイスを使っているのか、香りや複雑な風味が伴っている。
主人「こ、これは……、いや大変にけっこうなお点前ですな」
レオーニ「どうかな? 何のハーブとスパイスを使っているかわかるかな?」
主人はいくつか答える。
レオーニ「ほとんど正解だ。ただあと2つある」
主人は味見しているがわからないようだ。降参したのでレオーニ氏が答えを教える。
レオーニ「これがほのかな苦みを出す。こちらは香りづけだ」
主人はつまんで試している。においをかいだり、いろいろする。
主人「はあ、完敗です」
フェリス「いえ、でも大半は当てたわけですし」
主人「ええ、それはこの地のハーブやスパイスをふだんから用いているわけですから、大抵はわかります。ただ使い方まで自信を持って言えません」
レオーニ「うん、それはおいおい話そう」
そう言って会話が続いて行った。




