別の店にも行ってみる
西部旅行のメニューを考えるために、レオーニ氏とリアナとその部下で西部を旅行している。いまはグランルスにいる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
グランルスではうちが契約している食堂に行ってみた。ただ店の主人が横着者で、あまりうまくない。
しかたなくレオーニ氏がいろいろ試してみて、料理の基本はそのままにはるかに洗練された味を作り上げる。
そこで店の主人に料理の内容を見直してほしいくれというが、主人はプライドがあるのか、単に横着なのか言を左右にして逃れようとする。
とは言え、うちはけっこうな金を払っている立場だ。レオーニ氏の料理を食べさせ、取引上向こうに有利な条件を提示して、それを飲ませた。
だがどうにも横着ぶりはどうしようもないようで、いろいろと手を抜きたがる。レオーニ氏もおかんむりだ。
いまは仕方ないが、体制を整えてこの店との契約は見直さないといけないかもしれない。
店からの帰り、みんなで文句を言いまくる。
フェリス「ありゃ、ひどい親父だったね」
レオーニ「うん、ああいうのは人に食べ物なんか出しちゃいけない」
リアナ「あんなの出していたなんてうちの商会の名折れよ」
部下「あの程度なら僕でももう少しましなものが作れます」
レオーニ「なんであんな店と契約してしまったんだい?」
フェリス「それは、あの店が一番便利なところにあるし、客席もあそこ以外は少ないんですよ」
リアナ「さっさと別の店にするか、うちで店出すかしないとダメよ」
部下「ええ、ちょっとあれ食べさせられたら、ちょっとツアーの質を疑いますね」
ごもっともとしか言えない。いちおう今まで苦情は上がってきていなかった。
ただ旅行だと現地の食べなれないものを食べるからおいしいかまずいかよくわからないことも多い。
出されればこんなものかと思う方がふつうだ。それでもこれを食べさせられてまた来たいかと思うかとか人に勧めるかと言えば、そういうことはありそうにない。
レオーニ氏の出したようなものであれば、たぶんまた食べたいと思うだろうし、人にも勧めてくれそうだ。
いちおうさっきの意見してうちがチェックに入ると言ったので、少しはましになると思いたい。
とは言え主人の俺が意見したのにあの態度じゃ、うちの現地の人間が言ってもあまり聞き入れそうにないと思う。早晩、契約を見直さないとまずい気がしてきた。
レオーニ「他の店も行ってみないか?」
フェリス「1つ行くのはいいです。ただ複数行くのはちょっとおなかの具合が……」
少し食べ過ぎてお腹が張っている気がする。俺がそう言うと、リアナたちも明らかに同意するような顔になっている。
レオーニ「うん、じゃあ1つでいいから行ってみよう」
フェリス「でも、どこに行くんですか? どこか知っていますか?」
レオーニ「うーん、ちょっと人に聞いてみよう」
レオーニ氏がどこか店を知っているわけでもないらしい。ともかくレオーニ氏が探してみると言う。お腹がいっぱいだし、それほど急がないので、任せることにする。
するとレオーニ氏は賑やかなあたりで実際に聞いてみている。
何人かに話しかけて、どこの店がおすすめかを聞いている。と言ってもそんなにたくさん店があるわけでもない。
何となく絞られてきている。ついでにさっきの親父の店についても聞いてみるが、あまり評判はよくない。
それで少し外れたところにある店がなんとなく評判がいいのでそちらに行ってみることになった。
行ってみるとけっこうこじんまりした店だ。4人で入ってテーブルにつくと、あとはもう一つテーブルがあるくらいだ。
「いらっしゃい」
さっきの親父よりは若いが中年の親父さんが迎える。レオーニ氏はここらの名物をと言って注文する。
わりとすぐに野菜に軽く火を通したものが出てくる。クルーズンではあまり見ない野菜だ。
「これはここらの野菜でして」
とりあえずそれを食べる。ちょっと変わった風味だが、なるほどと思う味だ。
その間にメインのすいとんのようなパスタが出てくる。さっそく食べてみる。
これは明らかにおいしい。レオーニ氏の作ったような洗練されたものではないが、きちんとつくられたものだ。
これなら都会に出ても客がつきそうな気がする。最後に芋を使ったお菓子のようなものが出る。
と言っても砂糖が貴重なのでいものでんぷんを使ったようだ。こちらもなかなか気が利いている。
レオーニ「こちらの店の方がずっといいじゃないか」
リアナ「そうですね。ここなら自信をもって人にもお勧めできます」
部下「本当においしいです」
レオーニ「契約をこっちに替えることは考えないとね」
確かに味だけ見るとこちらの店の方がずっといい。いやセンスもはるかにいい。
親父さんも朴訥だが、それはそれで悪くはない。
とは言え、この店の規模はとてもうちの客はさばききれない。どうしたものかと思う。




