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オーク対策(下)

 老人たちからすっかり巻き上げて、マルクとほくほく顔になる。


「マルクさんもなかなかのワルですね」

「いやあ、フェリス君にはかないません」


どこぞの時代劇のようなコントを繰り広げる。


「口は禍の元ですね」

「金を持っている自慢なんてろくなことにならないよ」

「そういえば商売をする方はぼちぼちとよく言いますね」

「変なこと知っているんだなあ」


こちらの世界でもそういうのはあるらしい。




 後から老人たちの息子や娘にありがとうございましたとニコニコ顔でお礼すると、


「どうせ飲み代に消えるのだから、少しくらいむしり取ってもらっても構いません。これで少しはくだらない口を慎んでくれればいいのですが」

などとこぼしていた。どうやら家族からも嫌われているらしい。むしろ家にいられないから料理屋に居つくのか。




 老人たちから金を巻き上げたので、仔鹿亭の売り上げに響くかと思い、エミリーにそれとなく聞いてみた。


エミリーは人のいるところでは言わないが、後でこっそり話してくれた。


「こういっては何ですが、いなくなってせいせいします。ばあさんたちはお茶一杯で何時間も粘るし、ジジイどもはお金は使うけれど、嫌らしい話を振って下卑た笑いをするし、おしりを触ってきたりするし。どっちにしても妙に偉そうで」


こちらの評判も散々だった。




 そんなくだらないことはともかくオークを退治しなければならない。老人から巻き上げた金で少しは賞金も増えたが、冒険者が来てくれる保証はない。


ギフトを使って退治できないものかと考えだす。ただああいう老人がいるとしたいこともしたくなくなる。そうはいっても友人たちも村人も困っている。


友人への感情だけで引き受けてまたろくでもない期待をされても困る気もするが、もらえるものがもらえるなら引き受けるのもいいかと思い始める。


こういうことは専門家に任せるべきだし、ましてや子どもなど関わるべきでないと思うが、フェリスにはギフトがあるのだ。




 ギフトを使って退治することをロレンスとレナルドに相談してみる。ロレンスは「止めませんが……」といいつつ、あまりして欲しくはないようだ。


レナルドの方はギフトの存在は知りつつ中身は知らない状態だが興味を示す。


ただフェリスの危険があるためレナルドともう1人くらい頼りになる者が欲しいようだった。




 数日後にレナルドのところにスコットがやってきた。スコットは最近は危険を伴うような仕事はしていない。クルーズンの方に依頼を持って行って気にはかけていたが応募がないようだ。


他の件ならそれで済んだのだが、今回は昔世話になったレナルドが当事者になってしまっていることから、どうしても解決したい。


そこでレナルドと組んで退治することを考えたのだ。ただ2人だと少し分が悪い。オーク1体でも2人は最低必要だ。3体が連携してくるとなるともう少しいた方がいい。


そんなことを考えつつ、スコットはレナルドに退治しないかと話しかける。レナルドにとっても前にオークに遭遇した時よりずっと戦いやすい状況だし、勝手な噂とはいえ恥をそそぐこともできる。そんな考えでレナルドに持ちかけると、やはり人数が少ないことを指摘された。




 そのときレナルドはフェリスのギフトのことを考えていた。中身はどんなものかわからないが、一度検討してみる価値はある。


そこでフェリスを対オーク戦の演習に加えることを提案する。だがギフトのことを知らないスコットは何を言っているのか全く分からなかった。


あんな子どもはオークどころかゴブリン狩りさえも参加させない。演習だけ加えるにしてもむしろ足手まといで演習になるはずもなかった。




 レナルドは秘密魔法の警告もあり、フェリスのギフトについて話すことはできない。


「フェリスを加えたいというのは理由があるんだ。教会までついてきてくれないか」


スコットはレナルドが妙に真剣なので同意する。スコットはレナルドに連れられて教会に行く。




 先に相談があるから待っているように言われ、スコットは礼拝堂の椅子に座っていた。しばらく待っているとレナルドと司祭とフェリスが一緒にやってきた。


「司祭のロレンスです。以前にお会いしたことがあったかと思います」


この村の教会に来たことはないが、村に来たときに会った覚えはある。


「これからある秘密を打ち明けなくてはなりません。それには秘密保持魔法にかかっていただく必要があります。よろしいでしょうか」

「ああ、そういうことか。じゃあ、頼む」


スコットはなぜかすぐに納得して、ロレンスと目を合わせる。ロレンスも納得したように、魔法をかけ始める。一通り魔法がかかると


「それで、フェリスの坊やのはどんなギフトなんだ?」

「よくわかりましたね」

「そりゃまあ、この状況で秘密保持魔法ならな。ギフトのことを聞くのもこれで3回目だしな」


さすがにスコットはいろいろな経験があるようだ。




「俺のギフトはホールです。どこからでもこのクロのところに戻ることができる。そして1日間は逆に元のところにも戻れる」


クロを指さしつつ話すが、ロレンス相手の丁寧語とスコット相手の砕けた言葉が混じって変な言葉になってしまった。


「へえ、こんなへんてこな犬がねえ」


クロはスコットにひょいと持ち上げられてしまう。知らない人には常に警戒する猫にしては珍しい。


なぜかクロはおとなしくしている。いつもなら抱いているときに知らない人が近づいてきただけでじたばたし始めるというのに。


なお、へんてこな犬というが猫と言ってこの世界では神より上の存在かもしれないのだ。




「口で説明してもわかりにくいので実際に使ってみましょう」


そういって俺はレナルドとスコット、そしてついでに見ておきたいというロレンスを連れて外に出た。レナルドにも今回改めて魔法をかけなおしたとのことだった。


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