農場をめぐる
西部旅行ツアーのメニュー開発のため、レオーニ氏とリアナとその部下と一緒に西部に来ている。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
いまはシャンプの町を拠点に周囲の農場を回っている。この辺の街道や町は山のはざまの低いところにあり、農場は上の高原にある。
だから農場に行くには山を登らないといけない。さっき行った農場ではレオーニさんが食材を買い込んだため、一度町に降りなくてはならなくなった。そこで今回はロバと荷車を借りて農場に行く。
今度の農場もさっきと様子が似ている。ただ親父さんの雰囲気はちょっと違う。主要な穀物はだいたい同じだ。それは気候が規定するのだからそう言うものだろう。
ただ野菜やハーブやスパイスなどはちょっと異なっている。この辺は農場主の趣味が出るらしい。レオーニさんはまたいろいろ買い付けている。
レオーニ氏はまた片っ端から試している。そうしているうちに昼になり、少しお腹が空いてきた。食事をどうするか考えていなかったことに気づく。
リアナ「お昼どうしよう」
フェリス「いま頃3つ目の農場にいるはずで、近くに食べられるところがあったんだけどな」
部下「そこまでお預けですか」
そこまで行くのにまだ1時間以上はかかりそうだ。みんなおなかが空いて少しうなだれる。ところが、この事態の主犯のレオーニ氏は気にもかけていない。
レオーニ「少しなんか食べようか」
とつぜんそんなことを言い出す。そしてザックから小さなコンロと鍋を取り出した。
レオーニ「さっき少し脱穀したもらった麦があるから、これと野菜と干し肉を煮込めばいいだろう」
フェリス「ありがとうございます。こういう事態を想定していたんですか?」
レオーニ「いや、味見するのに熱を通した方がいいこともあるから持ってきていたんだ」
レオーニさんも昼食のことは忘れていたらしい。それでも一息はつけた。麦を煮て野菜と干し肉を入れてから、スパイスやハーブも入れる。レオーニさんは少し小ぶりのナイフも持ってきていた。いつもの高級料理とは全く違って素朴な味わいだが、これはこれで美味しい。
フェリス「おいしいですね」
レオーニ「そうだね。材料もなかなか悪くないようだ」
部下「ちょっと不思議な風味がしますね」
リアナ「あまり見ない香草のようね」
レオーニ「このハーブだけど前に一度使ったことはあるが、なかなかクルーズンでは手に入らなくてね。久しぶりに使うことができたよ」
こうやって買ったものを試しているらしい。
一息はつけたがちょっと物足りない。だいたいそれなりの深さはあったが、大なべを持ってきているわけでもないのだ。4人で食べたら大した量にはならない。そこでリアナが気をきかせる。
リアナ「一息つけたし、とりあえず町に戻りましょうか」
リアナがそう言うと、部下も少し安心したような顔になる。次の農場に行くには町に戻ると遠回りだが、何かもう少し食べたい。
次の農場近くには飯屋があるが、昼食時を過ぎるとお断りという店は多い。行ってみて食べられなかったら悲惨だ。
レオーニ「このままいけばいいじゃないか」
あくまで行きたいらしい。
フェリス「もう少し何か食べた方がいいかと」
レオーニ「あまり満腹だと試食しても味がわからなくなるからね。腹八分くらいの方がいいよ」
八分というより五分くらいなのだが、食べ物のことになるとレオーニ氏は言うことを聞きそうにない。
けっきょく次の農場に向かうことになった。ロバを連れてこなければ一度戻っていたかもしれない。
それはそれで歩く距離が長くなるし、4つ目の農場には行けなくなるから痛しかゆしだ。なお待っている間ロバはうまそうに草を食んでいた。
3つの農場もまた農場主は雰囲気が違う。穀物は同じで、野菜やハーブ・スパイス類はやはり異なっていた。
レオーニ氏はやはり夢中でいろいろ物色している。先に飯屋の方にも行ってみたが、やはりすでに閉まっていた。
けっきょくその農場でも食材を買い込み、レオーニ氏は2回目のかゆを作ってくれた。
4つ目の農場にも行ってみた。やはりいつもと同じだ。ただここは食材より花が結構多かった。
レオーニ氏は興味ないかと思っていたが、意外と花をいろいろ物色していた。
フェリス「あれ? 花にも興味がおありですか?」
レオーニ「そう言えば君は客としてうちの店には来てないね。高級店ならいろいろ調度や飾りなども考えないといけないよ」
考えたら前世でも高級店などめったに行くことはなかった。レオーニ氏にはいちおう弟子としてしばらくしごかれたが、ごく一部しか学べていないことに気づく。もっとも別に料理を専門にするつもりはないのだけれど。
花も少し買って、街の方に降りていくことにした。




