シャンプにつくなり仕事に取り掛かる
レオーニ氏を連れてクルーズンの西側の地方に来ている。新しい料理を考えてもらうためだ。
シャンプにたどり着いた。ここシャンプとさらに西のグランルスあたりが中心となる。
(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)
今までの町ではレオーニ氏の知り合いの家に連れていかれた。来られた方もいささか迷惑だったと思うが、不思議と嫌がってはいなかった。
食に関する好奇心の赴くままに無茶ぶりもするが、惜しみなく技術を提供するレオーニ氏の人徳のおかげかもしれない。
ここシャンプでは特にそのようなことはなく、うちと提携している食堂に行く。
ちょうど忙しい時間は過ぎたので、店主もこちらの相手をしてくれる。レオーニ氏を紹介する。
フェリス「お世話になっております。クルーズンのシルヴェスタです。今日は新メニューの助っ人として名店の店主のレオーニ氏に来ていただきました」
店主「それはわざわざどうもありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
レオーニ「さっそくだがこちらのメニューを作ってもらえるかい」
そう言ってメニューから多数選んで作ってもらう。店主は少し驚いている。店主には断ったがレオーニ氏は調理中しっかり側によって覗いている。
そして出来上がるとけっこう種類が多いので6人前くらいありそうだ。これでも1品ずつは減らしてくれたらしい。
とはいえ、昼食は取っていないので結構入りそうだ。レオーニ氏は健啖家でどんどん口に入れている。高級店の店主だけにどんな感想を持つのか少し怖い。
フェリス「どうですか? レオーニさんのお口には合わないかもしれませんが」
レオーニ「いや、私だっていつも高級料理ばかり食べているわけではないよ。庶民的な店にもよく行くよ」
そうは言っても昨日行った2軒はどちらもわりと高級な店だった。
フェリス「それはまたどうしてですか?」
レオーニ「うん、高級店ばかりだと飽きるよね。それに何か方向性が似ているから、だんだん先細りになると言うか、似たり寄ったりになって行くんだ」
フェリス「庶民的な店だといろいろあると言うことですか」
レオーニ「うん。おいしい店もあるよ。もちろんまずいものもあるけど、それはそれで、経験だと思う。わざわざまずいと知られている店にはいかないけど」
フェリス「でも庶民的な店は材料なんかがやはり劣ったりしませんか?」
レオーニ「それはそうなんだけどね。でもそれをカバーする調理法があったりもするからそれを見たい」
やっぱりレオーニさんは調理についてはどん欲だと思う。こういう人に助けてもらって本当にありがたいと思う。いろいろ面倒はあるけど。
一通り食べ終わって、レオーニ氏は主人から材料の仕入れ先などを聞いている。この辺は山がちで、山の上の方からも仕入れているそうだ。
「じゃあ、明日はそこに行ってみよう」
明日は山登りさせられるらしい。
やはり量が多く、かなり満腹になった。少し休みたいと思ったが、レオーニ氏は街を歩くと言い出した。
フェリス「観光ならまたおいおいでいいんじゃないですか?」
レオーニ「いや、観光じゃないよ。どんなものが売られているか見て回るんだ」
あーあ、スイッチが入ってしまった。もっとも寝ているとき以外はずっと入りっぱなしのような気もする。
町もそんなに広くないので片端から店に入っていく。あんなに食べたのにまだ味見をしたり、買い物したりしている。
ほとんどの店を回ってずいぶんと食材やら調味料やらを買い込む。お土産向きの菓子も買った。レオーニ氏は太っているわけでもないが、どこでそんなにカロリーを消費するのだろう。
さすがに歩き回って疲れたので、うちの社屋に行って休む。いちおうレオーニ氏だけは宿を取ってあるが、我々3人は社屋の中で寝泊りすることになっている。
彼だけはやはり少しいい部屋に泊めた方がいいとの判断だ。
ところがそれが裏目に出た。厨房を使いたいと言うのだ。もちろん宿屋の方ではそう言う準備はない。いちおう社屋の方には小さな厨房がついている。
そこでさっき買った調味料や食材を並べ、さっそく料理を作っている。ただやはり狭いので、いろいろテーブルを持ってこさせられたりした。
幸か不幸か、厨房が狭すぎて2人は入れないので、それ以上は手伝わされずには住んだ。出来上がってみるとどうやら昼に食べた料理の再現のようだ。
また同じものかと思いつつ、食べてみると味がまったく違う。やはりこちらの方が洗練されている。肉の火の通りなども絶妙で、さっきのはちょっと硬かったような気がする。それ以外にも香りがよかったり、風味が違う。
フェリス「ずいぶん違うんですね」
レオーニ「いろいろ下ごしらえしてあるからね」
なんでも事前に肉に粉を振っておいたり、切れ込みを入れたり、2段階で熱を加えたりいろいろしているそうだ。
とはいえ、今回の趣旨はこちらの地方の食堂の店主にすこし高級そうな料理を作ってもらうことだ。あまり手間がかかったり高度な技法を使われてもちょっと使えそうにない。




