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100.

 西部旅行のメニューの開発に、レオーニ氏の助けを借りている。レオーニ氏と俺とリアナとリアナの部下の4人で西に向かっている。1日目の夕方にシャルキュについた。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


途中の町ではレオーニ氏が突然知り合いの店に立ち寄って地元の名物を食べさせてくれた。けっこう無理な立ち寄りで、相手は少し困っていた。


いちおうこちらの方は将来取引があるかもしれないので自己紹介をしたら、商会の主人なのにレオーニさんに巻き込まれたと少し同情された。




 シャルキュでも本領を発揮する。やはり大通りにないちょっと奥にある店に案内される。


店につくと案内の係から、すでに満員だから入れないと言われる。ところがレオーニ氏は臆することもない。

「ああ、主人にクルーズンのレオーニが来たと伝えてくれ」

「はあ、クルーズンのレオーニ様ですか。わかりました」


しばらくすると主人が現れる。

主人「お前は、いつもとつぜん来るな」

レオーニ「ちょっとこっちに用事があってね」

主人「あいにくだが、今日は満員だ」

レオーニ「いや、連れは俺の弟子だから、客席でなくてもいい」


俺も弟子扱いなのか。確かにかつては彼のもとで修行させられたけど。ともかく、それで主人は少し考えこむ。


主人「う、うん。まあ、家の方に来てもいい」


どうやら客席でなく、すぐ裏の主人の家に行くことになるらしい。


主人「料理人もいっぱいいっぱいだからな。自分でやってくれよ」

レオーニ「わかった」


そう言って家の方の厨房に案内される。


レオーニ「材料は好きに使っていいのか?」

主人「どうせ止めたって使うんだろう?」


厨房に案内されると、レオーニ氏は勝手知ったるかのように、あちこちから材料を取り出して、準備を始める。


リアナに指示を出して、同時作業になる。リアナほどではないが、こちらにも指示が来る。リアナの部下ももちろんだ。ときどき主人が覗きに来る。


 一通りでき上って、テーブルに並べる。その頃には主人もくる。一人分ずつ盛り付けているわけでもないので、主人も入って食事が始まる。主人はジビエを衣で包んであげた料理を食べている。


主人「あいかわらず変わった技法だな」

レオーニ「ああ、これはもっと北の地方の料理から考えたものだ」


主人「お前はあちこち行っているからな」

レオーニ「旅はいいぞ。お前も行ってみたらどうだ」


主人「そう簡単に行ければ苦労はない」


まったくもって主人の言うことの方がもっともだ。レオーニさんは恵まれすぎている気がする。


料理の方はおいしい。こちらの地方の材料を使っているが、主人の言う通り技法が違い、まったく別の料理になっている。



 出したものはそれだけではない。もう一つよく見知ったものがある。麺だ。ただしこの辺の特産の雑穀が使われている。


山がちなので、できる穀物が平地とは違うのだ。だから色が少し黒っぽい。味もクルーズンの麺とはずいぶん違い、うどんとそばくらい違う。


主人「この長いのは麺だな。クルーズンで見たぞ」

レオーニ「ああ、実は元はこちらのフェリス君が考えた料理だ」


主人「え? 本当か。それはすごいじゃないか」

レオーニ「ああ、それでまた新しい料理を研究中だ」


主人「でも向こうで食べた麺とはずいぶん違う」

レオーニ「そりゃ材料が違えば、ずいぶん違ったものになるよ」



 せっかくなので、こちらの店の主人とも挨拶する。


フェリス「どうもお世話になっております。クルーズンのシルヴェスタ商会のシルヴェスタと申します」

主人「え? 商会の主人? さっき、レオーニの弟子だと聞いたが」


フェリス「ええ、以前に商品開発をお願いしたときに、しばらく修行させられまして。今日も商品開発のお願いなんですが、この後に修行させられそうなんです」

主人「まったくあいつときたら、料理のこと以外は何にもできないからな」


フェリス「いえ、きちんとお店を経営しておられますよ」

主人「いやいや、あれは立ち行くまでパトロンがずいぶん面倒見たんだ」


そう言うことだったのか。レオーニ氏にへそを曲げられても困るので、とりあえず話の方向を変えよう。


フェリス「また、こちらの名物などありましたら、うちでも扱いたいと存じます」

主人「ううむ。あいにくだが、日持ちするようなものは扱ってないんだ」


フェリス「ええ、こちらの町にも伺っている冷蔵流通ですが、あれは実はうちの商会で扱っております。あれを使えば、ずいぶん日持ちも伸びます」

主人「え? あの冷蔵技術か。けっこうな規模の商会じゃないか。なんでまたレオーニの弟子のマネなどしているんだ?」


フェリス「ええ、最近西部旅行のツアーを企画しておりまして。高級化を図っていますが、その料理にレオーニさんのお力を借りたいと」

主人「ああ、確かに料理のことだけは頼りになるからな」


フェリス「ご主人ともまた商売のことでお話しできれば幸いです」

主人「ああ、こちらもよろしく頼みます」



 その晩はうちの商会の支部の宿泊施設に泊まる。翌日はシャンプに向かった。

林間の山道を通り、峠を越えてシャンプに至る。午後にシャンプにたどり着いた。


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