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シャンプまで歩いて戻りリアナと会う

 モンブレビルから北のグランルスに戻った。あとはシャンプに戻ればいい。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


そこでジラルドが面倒なことを言い出した。

「シャンプまで歩いてみませんか?」

「えー」

「なんでそんなこと」

俺とカミロは文句を言う。


「店主たちはもう少し体力をつけた方がいいです。それに歩くと馬車では見えないものが見えてきます」

「そんな馬車だってちゃんと見てれば見えるよ」


カミロは文句を言う。ただ体力云々のことはともかくとして、確かに馬車に乗っていると見えないものは少なくない。


実はグランルスとシャンプの間だって小さな宿場がいくつかある。行きのときは馬車に乗ってほとんど通過したのでどんなところかはわかっていない。


ある意味特急電車に乗って途中駅を全部飛ばしたようなものだ。とはいえそれだったら、雇った馬車で途中の宿場も全部見ればいいだけだ。


「途中を見てないのはその通りだと思うよ。だけど、それなら馬車を雇って途中も全部止まればいいじゃないか?」

「そうなんですけどね。この道は古くから人々が歩いてきた道です。そう言う歴史を感じるのもいいんじゃないかと。どうせ今日一日だけです」


珍しくジラルドが自己主張をしている気がする。アランやカミロに比べるとごく常識的であまり強い主張はしない。珍しいことだ。ちょっと味方したい気になる。


「うーん、わかった。今日はジラルドの言うとおりにするよ」

そう言うとカミロは露骨に嫌そうな顔をする。だけどもう2対1になってしまっているのであきらめたようだ。



 実際に歩いてみると確かに行きには見えていなかったものがあった。途中にはいくつか宿場がある。


専業ではないが民宿のような宿もあるようだ。また茶屋もあって座りながらお茶や軽食が出される。


1時間か2時間おきくらいでそう言うところを通るので、そのたびに休んだりする。


ジラルドはそうでもないが、カミロはしょっちゅう足が痛いなどと言って休みたがる。


休憩が終わるときもあまり歩き出したがらない。


「暗くなる前につかないとまずいよ」

「途中で馬車に乗るか、途中の宿場で休めばいいじゃないか」

この調子だ。グランルスからシャンプの間を2日かけるなんてありえない。




 お金の点だけ見たら馬車の方がかからないかもしれない。とはいえ、それも楽しみだ。


お菓子がおいしい店もあればいまいちの店もあったりする。愛想のいい店もあればぶっきらぼうの店もある。




 道で旅人にすれ違うと声をかけられる。

「お気をつけて」

「そちらもお気をつけて」

そんな感じで返す。


あるときには危険を知らせてもらった。

「この先の林間になっているあたりにクマがでているらしい。行くなら気を付けた方がいい」


そう言われて警戒する。実際歩いて行くとそれらしい足跡がある。動物の足跡としてはかなり大きめだ。


さすがに怖くなってギフトのホールで逃げてしまう。クルーズンのクロの前に帰る。そこで1時間くらい

3人でまたお茶を飲んでクロを触りながら過ごす。とは言え、クロは2人を警戒しているので、俺だけ少し離れたところだ。




 そうして夕方遅くにはシャンプの町についた。馬車なら昼過ぎにはつくので、やはり倍以上時間がかかっている。


もっとも何度も茶屋で休んで家にまで帰ってだから歩いている時間は案外少ないかもしれない。


ともかく真っ暗になる前にシャンプの町にはつけた。



 シャンプにはうちの商会で持っている家があるのでそこにとりあえず入る。リアナもそこにいる。

「あら、帰ったの?」

「うん」

「あれ? シンディは?」

「モンブレまで行って、シンディだけは頂上まで登ってくるんだって」

「体力あるのね」

「ほんとに恐れ入るよ」


「フェリスたちはどうだったの?」

「グランルスまでは馬車に乗って、そこから歩いてきたんだ」

「グランルスからここまで歩かされたんだよ」

「そんな大した距離でもないじゃない?」

「いーや疲れた、もうくたくた」

「カミロは横になっていていいよ」


こちらの話はそこそこにして、リアナの方も聞いてみた。


「どうだった、ここの名物の薬膳は」

「けっこう家によってつくり方が違うみたい。店で出しているのは旅人用ね。この辺の人は店では食べてないわ」


「へえ、なんで店で食べないの?」

「家で簡単に作れるからそんなにお金出したくないとか、あと慣れた味がいいみたい」


「なるほどね。旅行者向けはお店に連れて行けばいいか」

「それがね。ふつうの家でも食べさせていたりするのよ。しかもお店より安いの」


「ふーん。面白いね。じゃあ食べ比べとかもできるかもしれないね」

「ええ、そう言うのもありだと思うわ」




 リアナの方はけっこういろいろ調べてくれたようだ。


とりあえず旅行客が無茶苦茶増えなければ食べ物の方ではあまり問題なさそうな気がしてきた。


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