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シンディと別れて戻る

 クルーズン西部の地方の旅行ツアーを企画し、下見としてモンブレの中腹まで登り、あちこちの店の店主に顔つなぎをした。


あとは下山するだけだ。ところがここでシンディがまたわがままを言い出した。


「ねえ、やっぱり頂上まで登らない?」


さすがにそれはダメだ。第一危険だ。もちろん遭難してもギフトで帰れるが、それにしてもそもそもそんな危険を必要もないのに冒すべきではない。


ここで1泊してまた上の方の山小屋で1泊しないといけない。さらには俺とカミロはもう体力が続きそうにない。


「さすがにダメ! 危険だし、時間もかかりすぎる。俺たち商会の幹部なんだよ」

「そうね。じゃあ、あたしだけでのダメ?」


「山の一人歩きは危険だ。事故があったら助けも呼べなくなる」

「じゃあ一人じゃなきゃいいの?」


「見ず知らずの人と一緒も危険だろ」

「身元の分かっている人なら?」


「まあそれならいいけど」


なんとなくシンディに主張されると受けれいてしまう。とは言えそんなちょうどいい人などいそうにない。


荷運びの強力ごうりきを雇えばいいが、シンディはそこまでのお金を持ち歩いていないはずだ。そう思っていたら、シンディは俺たちを連れて強力の店に向かった。


「え? 強力を雇うお金なんて持っているの?」

「いや、持ってきていないわ。持ち歩くのも危ないものね」

シンディを襲うような族は……いるかもしれないが、返り討ちにあいそうなものだとは思う。


「ここは強力の店だよ」

「わかっているわ」


「じゃあ、なんで」

「私が強力をするの」


「えっ?」

「さっき強力と話したの。ずっと上の頂上近くの山小屋に荷を届けに行くんだって。今の季節は人がいくらいてもいいくらいだそうよ」


「だから強力をするというの?」

「ええ、強力と一緒に山に登るわ」


いくらなんでも無茶苦茶だ。いくら体力があるとはいえ成人前の女の子に重荷を持たせるなんて。


「さすがにそれは無茶が過ぎるんじゃない?」

「でも信者の人も余裕のある人は少し荷物を持って行くそうよ。あたしはかなり自信があるから」


そんな方法があるとは思わなかった。こうなるともう何を言っても聞きそうにない。


「本当に大丈夫なの?」

「フェリスと違ってここまで楽々だったわ。荷物を持つくらいした方が体力がつきそうだもの」


「高い山は地上より体に負担がかかるよ」

「だからいいトレーニングになるんじゃない」


もう脳筋でどうしようもない。高山病は心配だが、本人が平気そうにしているから文句も言いにくい。俺の方はグロッキーに近いのに。


ただいちおう身元が確かとは言え、知らない男と2人で行くのも心配だ。


とはいえ、シンディはナイフを持っているから、よほど本人の体調が悪くでもない限り相手が襲おうとしても勝てそうにない。


「わかったよ。くれぐれも気を付けてね」

「ええ、わかったわ。ちゃんと上がどんな様子か見てくるから」


「じゃあシャンプの町の商会の家で落ち合うのでいい?」

「わかったわ」


そう言うわけでここでシンディが分かれてしまった。シャンプではリアナが分かれたし、女の子の方が冒険的かもしれない。


 俺とジラルドとカミロは中腹から下に向かう。行きよりずっとペースが速い。これなら夕方になる前に町に戻れそうだ。


そうして3時間も歩かないうちにモンブレビルの町にたどり着いた。行きの半分以下の時間だ。


街にたどり着いたら、まずは茶屋に入ってゆっくり休む。


「シンディは無茶苦茶だったね」

「ええ、ちょっと異常ですね」

「どこにあんな体力があるんでしょう」


「あそこまで行くだけでもへとへとだったのに」

「本当に行ったのを後悔しました」

「そこまでではなかったような。店主たちはもう少し体力をつけられた方がよろしいかと思います」


ジラルドに言われてしまった。まあ俺とカミロは不摂生だということだ。ともかくたっぷりと砂糖を入れたお茶を飲んで休む。


その後はお土産屋などを見る。これも下見と言えば下見のためだし、単にリアナやクルーズンの留守番組のために買いに行くためでもある。


何となくしょうもない物を買って、ショッピングを終わりにする。あとはまた1番泊って明日に備える。


翌日は朝から馬車に乗って北のグランルスに向かう。少し余裕があったので途中の宿場町なども立ち寄ったりする。


乗合馬車だと次が来るまで待たないといけないが、いまは馬車を雇っている。だからお茶を飲んでいる間は待ってもらえばいいだけだ。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


間の町では茶屋に入ってお茶を飲んだり地場のお菓子を食べたりする。何度もお茶を飲んでお腹がタプタプの気もする。


そして茶店の人と世間話をして様子を聞く。やはりこの辺は観光客よりはモンブレ信仰の信者が多いそうだ。その辺でどう観光が増やせるのかと考える。


信仰だと多少の苦労があってもむしろそれを喜ぶものも多いだろうが、観光ではそうはいかない。


お金をもらう代わりにできるだけ客の苦労をなくすのが必要になりそうだ。というよりだいたい儲かる商売というのは金をもらって相手の苦労とか悩みを解決する類のものだ。


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