表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
444/639

70. シャルキュの商人オルソン氏に会う

 クルーズン伯爵領の西の山稜地帯の方で旅行ツアーや郵便を進めようとしている。いまはグランルスの町にいる


 クルーズンから西は伯爵領の西の果てのシャルキュの町まではわりと平坦だ。そこからは山がちとなる。


(西)カンブルー ---- 峠 ---- グランルス ---- シャンプ ---- 峠 ---- シャルキュ ---- クルーズン(東)


 そうは言っても川が流れていて川沿いはやや低くなっているし、街道も街もある。水がなければ人は生活できないから人がいるのはたいてい川沿いだ。


川がないところはそもそも人がほとんどいないから商売も気にかけることはない。



 そこで旅行ツアーをするのに寺院と宿屋と飯屋は面倒がなかったが、馬車業者だけはちょっと面倒だ。もっとも前者とは取引形態が違うから仕方ないところもある。


どう面倒かというと、うちの商会のことを知らないからすぐには大きな取引はできないというのだ。それはわからないでもない。


司教の書付を出してみたが、本物か偽物かわからないという。それで10日後にシャルキュの商人が来るのを待って紹介してもらうことにする。


とはいえ、シャルキュの商人もまだあったことはない。ただシャルキュの商人ならうちの商会のことは知っているだろうと踏んだまでだ。



 それはともかく、その間にシャンプの町に視察に行っていたアランが戻ってくる。アランの方は見どころや宿屋や飯屋ときちんと話をつけてきたという。


とくにシャンプの町は薬膳料理が有名らしい。それで複数の店と話してきたという。どこも1月前に予約すれば大丈夫なようだ。ただ馬車業者はそう簡単にはいかなかったらしい。



 俺と違いさすがに小僧扱いはされなかったようだが、手代さんくらいの扱いだったとか。アランも取締役でよその店の番頭より上になるのだけれど。


それで本格的な契約となるとやはり紹介がないとできないと言われたそうだ。確かに一時的に馬車を使うだけなら大した取引ではないが、今回はそうでもない。


やはりシャルキュの商人を待って紹介してもらわないといけないようだ。



 結局3人でひとまずクルーズンに戻ることにする。10日後にまた3人でグランルスに向かう。そこでシャルキュの商人が来るという時間に町の商店で待つことにする。


しばらく待っていると店の主人から到着したと知らせが来る。そこで3人で会いに行く。30代半ばくらいの男だった。あいさつして、彼の仕事が終わるのを待つ。


それからこの町の商店の主人に聞かせる話でもないので、うちで持っている家に一緒に来てもらった。


「はじめまして、クルーズン市のシルヴェスタ商会とシルヴェスタと申します」

「はじめまして、シャルキュにおりますオルソンです。お噂はかねがね」


「実は私の商売にご協力願えないかとの相談ですが、よろしいでしょうか」

「はて、私にできることかどうか」

相手は少し警戒しているようだ。


「いえ、実はこちらの方で旅行のツアーや郵便をしようかと考えておりまして」

「はあ」


「そこでオルソンさんにもご協力願えないかと思っております」

「どのようなことをすればよろしいのですか?」


「うちでクルーズンからの郵便物をシャルキュに届けますので、それを受け取ってシャンプやグランルスに運び、逆もお願いしたいと考えております」

「なるほど、ただ私は郵便を配るほどの余裕はございません」


「いえ、そちらについては別の係を置いて行うつもりです」

「つまり私は町の間を運べばいいと」


「ええ、そのつもりです」

「なるほど、それなら可能です」


「ただオルソンさんは月に1回と聞いております」

「ええ、毎月決まった日に来るようにしています」


「それだと郵便としては足りないのでうちで別に月に1回商人を回そうと思っています。それについてはオルソンさんとは競合しないように別の商品を出すつもりです」

「なるほどご配慮ありがとうございます」


「それではシャルキュとシャンプとグランルスに集配の体制が整い次第始めたいと思います。委託料については改めてご相談させてください」

「わかりました。お待ちしています」


「それからもう一つお願いがあります」

「さて何でしょう」


「実はシャンプとグランルスの馬車業者に取引をお願いしましたが、クルーズンの商人など知らないと断られてしまいました。ご紹介いただけないでしょうか?」


「なるほど。ただ私はあなたがシルヴェスタ商会のシルヴェスタ氏だとほとんど確信して取引もするつもりですが、他人に紹介するとなるとさらに裏付けが欲しいです」


けっこう慎重な男らしい。


「どのような裏付けがあればよろしいでしょうか」

「なに、クルーズンの商業ギルドの紹介状をお送りいただければそれで十分です」


「それでしたら郵便でシャルキュにお送りしましょう」

「よろしくお願いします」


少し時間はかかってしまうようだが、何とか進みそうだ。とは言え、また少し時間がかかりそうだ。次に彼が来る時だと面倒なので、紹介状を書いてもらおうかと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ