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事情聴取が続く

 子爵から拉致されたことについて王府の役人からの事情聴取が続いている。


どうして逃げられたのかについて、下手に答えるとギフトがばれてしまう。そこで嘘ではないが全部話していない答えとして、牢番を買収したことを話した。それについて役人は奇妙だと言う。


「どの程度の条件を付けたのか知らないが、お主に逃げられたら牢番たちもタダでは済むまい。どうしてそれで逃がしてもらえたんだ?」

「私の見たところに過ぎませんが、彼らはヤクザ者で、しかもあまりよい待遇ではありませんでした。

しかも牢番などと言ってもまじめに監視などせず、私など手足を拘束した状態で牢に放置されていました」


「ずいぶんひどい話だな、しかしそれにしてもひどすぎるのではないか?」

「これも私の想像に過ぎませんが、牢番と言っても子爵のごく私的に飼っているヤクザ者に過ぎないのではないかと存じます」


「うん? 全員がヤクザ者だったのか? 領府の役人はいなかったのか?」

「ええ、見た限りヤクザ者しかいませんでした」


「それも変だな」

「ちょっと妙ですね」


やっぱり変な話だ。別に俺が隠そうとして変なのではない。子爵のしていることが変なのだ。それでまだこの王府の役人たちは事情が分かっていないようだ。


「ええ、それはですね……」

といいかけると、年上のいかつい方の役人が止める。

「聞かれたことに答えればいいんだ」


そう言われても聞き方がまずいから、答えに行きつけないわけだ。年下の小太りの方が助け舟を出してくれる。


「何か違和感などは感じなかったか?」

「はい。俺の財産を全部差し出すという文書にサインさせられましたが、その文書がどうも変なんです」


「まあ、確かにずいぶんな文書だが、どう変だったのだ?」

「はい。形式が間違いだらけで、住所や名前も書類としてまともになっていないものでした」


「ほう。確かにそれは変だな」

「どういうことなんだろうな?」

二人で話している。


「何か心当たりはあるのか?」

「はい。実は以前から子爵は私に勝手な恨みを抱いて散々無理難題を押し付けてきました。そこでこちらのクルーズンに逃げたわけです。ですが、どうも子爵領の家宰の方はそれがまずいと思っていたようなんです」


「つまりどういうことか?」

「つまり、今回の拉致は家宰には黙って領主が暴走したような気がしています。つまり領府は一切かかわっていないようだと」


「う、うーむ」

「それは確かなのか?」

「確かかと言われても保証はできませんが、ただ例の文書については見ることができます」


「文書を見たところでなあ」

「いちおう見ておいてもいいんじゃないですか?」

「ええ、ぜひご覧になってください。こんなしっちゃかめっちゃかな文書があるものだと見ものですよ」


「まあ見てみるか」

「それでどこにあるんだ?」

「実は子爵の手下のウドフィというのが持っています。いまクルーズンに来ています。それを盾にうちの商会に財産を出せと言ってきたので待たせています」


「ずいぶんおかしな話だな」

「基本的に子爵のすることは無茶苦茶です」



ともかく例の文書を見せるということになった。ウドフィの都合もあるので、人をやって都合を聞かせる。

財産権上のプロセスの1つだと言うことにすると、いまからでもいいという。

さすがに役人の方の都合があるので、翌日午前に設定した。



 翌日は俺がウドフィの前に顔を出すのはまずいので、ジラルドに行ってもらう。王府の役人2人は証人ということにする。

俺は変装して他の客にまみれて様子を見ることにした。宿のロビーに行くとウドフィはふんぞり返っている。そして席に座り対面する。


「ワシが、子爵領で商務を司るウドフィだ」

「シルヴェスタ商会取締役のジラルドでございます」


「して、その2人は?」

「はい、今回の献上に関わる証人でございます」


「ふん、もったいぶりおって。こちらにはこの通り証書があるのだからな」

「これについて証人の方にご覧いただいて手続きを進めたいと存じます」


「それならよい。重要な証書だからな。決して汚すことのないように」

「はい、わかりました」


そう言って手に取り、ウドフィの目の前で証人と称している王府の役人に見せる。

彼らは書類を見て目を見張っている。そしてメモを取り始めた。


「どうだ? 確かに献上の旨があるだろう。まったくいつまで待たせるというのだ」

「申し訳ありませんウドフィ様。こちらも主人不在で、業務が滞っておりますれば」


「まったくしようのない主人だな。」


お前たちが拉致しておいてよく言うよと思う。もっともウドフィは知らされているかどうかわからない。

軽薄だから漏れそうで知らせれていないかもしれないが、あの領主も軽薄でゴマすりが好みだから、知らされているかもしれない。


役人2人の方はあちこち指さしながら、証書を見ている。いい加減さにびっくりしているのではないかと思う。


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