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伯爵にギフトについて話す

 子爵に拉致され、ギフトで逃げ戻ってきたが、伯爵も巻き込んで反撃しなくては安全は見込めそうにない。


それもあるし、そうでなかったとしても、伯爵にはギフトのことを説明しないといけないように思う。


それについてはすでに話してある商会の幹部たちの同意も取った。だが何か忘れている気がする。



 家に帰ると、忘れていたことを思い出す。いちおう神にも断っておいた方がいいような気がしてきた。


あほで暇神で冗談みたいな存在だが、いちおう超常の力を持っている。後でへそを曲げられても困る。


他のことはたいてい許してくれるというより興味がないようだが、クロのこととなるとクロの福祉のためなら世界でも犠牲にしかねない。


とはいえ俺のことは興味ないから、どっちでもいいような気もする。


「おい、神!」

「なんじゃ? いまいいところなのに」


どうせいいところというのはクロの頭をかくかなんかしていて、クロが気持ちよさそうな顔をしているあたりだろう。


「なんだ? クロが気持ちよさそうにでもしているのか?」

「それ以外にこの世界にいいものなんかあると思うか?」


まったくこれで神だと言うから困る。ギリシャ神話かローマ神話か日本神話かその辺の神ならそんなものかもしれないけれど。


だけどこれは一神教だった気がする。クロの相手など年から年中しているのに特別視することだろうかと思う。気を取り直して、例の話をする。


「実は伯爵にギフトのことを話そうと思うのだけどいいか」

「別にわしは構わん。好きにせい。お主がどうなろうとわしゃ興味もない」


やはりはじめに思ったとおりだった。俺が困っても助けないだろう。いちおうクロの世話人にしているが、いなくなったら適当な代わりを立てるだけだろう。


相談して損した。まあ神がこういうものだと再確認できたと思えばいい。ただそこに付け加えることも忘れていなかった。


「じゃがクロ様に迷惑をかけることは許さん。そうなればお主も伯爵もタダでは済まぬと思え」


ああ、恐ろしい。ただこれについては後から考えると逆に助かることもあった。



 しばらくして伯爵との面会の日になる。いつもの領府の政庁だ。


「この度はずいぶんと難儀だったな」

「閣下のおかげ様をもちまして無事に帰還できましたこと、感謝いたします」


「ああ、その方が無事で何よりだ。ところで主犯は子爵殿と聞いているが、確かか?」

「はい、間違いございません。彼が直接、私に鞭を打ちました」


「鞭で打つという行為自体も信じがたいが、それを直接貴族が行うというのはまた……にわかに信じがたい」

「伯爵様は公明正大な方でいらっしゃいます。しかし貴族の中でもそういう方ばかりではありません」


「まあとかく問題のある貴族というのも見聞きしているが、それにしても度が過ぎていると思うのだが」

「ただ似顔絵で見た顔にそっくりでしたし、着ている物も趣味はともかく金のかかった者で、配下のヤクザ者が御館様と言っておりました」


「ふうむ。確かに貴族相手以外に御館様とはなかなか呼ばないな。しかしそれでなぜその方は逃れられのか? さすがに子爵殿とて逃すはずもないと思うが」


やはり来たか。話すのと話さないので微妙なところだが、やはり話した方がスムーズに行きそうだ。ここでごまかしてもまた後々蒸し返されることになりそうだ。


「それについてはお話ししなければならないことがございます。大変恐縮ですが、お人払いをお願いいたします」


そう言うと周りの者がやや動揺する。


「他の者がいてはまずいのか?」

「ええ、まったく勝手とは思いますが伯爵様限りにしていただきたく存じます」


そう言うと周囲も改めて動揺したが、伯爵は少し考えてから納得したようで、周りの者を下がらせた。


「それでどうしたのだ?」

「私の身の安全にかかわることです。どうか他言無用にお願いいたします」


「うむ。ここで聞いたことは一切誰にも話さないと神に誓おう」


あの神に誓われてもあまりありがたみがないが、伯爵は神がどんなものかは知らない。ここで言うのは社会的に是認されている神のことだろう。あれこれ言っていても進まないので、正直に話す。


「実は私にはギフトがあります」


伯爵に近づき声をひそめて話すと、伯爵は多少驚いたようで目を少し大きくする。そして逆に声の方は落とす。


「ほう、ギフトか。してそれはどのようなものか」

「はい。いまいる場所からいなくなり、瞬時にある場所に移動できます。逆に一日以内なら、立ち去った場所に戻ることも可能です」


「なるほどな。それが本当なら子爵殿に捕らえられても逃れられたのももっともだ」

「はい。それで何とか帰れたというところです」


「それでどこに移動するのだ?」


やはり聞かれたか。実はそちらの方も話すにはかなり微妙なところだ。だいたい神は俺のことはどうでもよく、クロのことだけ気にかけているのだ。


ギフトについて話したことは問題にならず、むしろクロがどうこうなる方が問題になる可能性が高い。


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