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シンディの活躍

 子爵による拉致から無事帰還して、医師に診てもらった。ところで帰ったときにもちろんクロの前に出たのだが、すぐ近くにシンディがいた。


何でいたのか聞いてみてもシンディは答えない。あとでマルコに聞くと、彼女は俺が絶対にクロのところに帰ってくると言って、そこで寝ていたそうだ。そこまで信じてくれるのはなんともありがたい。



 翌日はまだ人に姿を見せたくない。万一ギフトのことがばれると困るからだ。だが役員たちはギフトのことは知っているし、彼らには帰還したことを知らせないといけない。


留守中のことも気になる。それで役員たちに家に来てもらうことにした。



 役員たちの話ではまず俺の失踪について、やはり拉致が疑われたそうだ。何日たっても帰ってこずにみんな不安が募っていたという。それぞれ思い思いの反応を聞かされた。


ジラルド:「子爵とずいぶんもめていましたからね」

アラン:「本当に心配したんだからな」

カミロ:「いや、アランはフェリスだってたまには旅に出たいんじゃないかなんて言ってましたよ」

アラン:「それは冗談だ」

リアナ:「まだまだフェリスには頑張ってもらわないとな」

エミリ:「ええ、もっといろいろ教えていただかないと」

アーデルベルト:「商会の方は順調です。ただ今回のこと、伯爵様も交えてきちんと整理しないといけませんな」



「なんか俺が子爵に全財産を献上するとかいう馬鹿な書類に署名させられたけど、どうなった」

「ははは、あの馬鹿な書類ですね」

「まともに形式も整っていない」

「あの馬鹿のウドフィが持ってきましたよ」

「まあ神妙な振りして、財産を精査しなおすからしばらく待ってくれとクルーズンで待たせてありますよ」

「もうこっちのものですから伯爵に言って逮捕させましょうか」


よかった。最高の結果だ。もし少なくない額を渡していたら、容易には取り返せないし、浪費される可能性も高かった。


ただ俺の身の不安はなかったのだろうか? まさかもう俺は用済み? そんなことはないと思うけど。どういうことか聞いてみる。


「だけど拉致されたとしてあの書類が来て不安にならなかったの?」

「それが、実は……」

「その点はですね」

「実はそれはシンディの功績なんです」


「えっ? どういうこと?」

「実はフェリスさんが失踪して私たち右往左往してしまって」

「ええ、身代金も用意しなきゃいけないなんて話していたんです」


「それでシンディはなんて言ったの?」

突き放すようなことを言っていないといいんだけど。


「『こういうのはね、お金を払ったら負けよ』でしたね」

どういうことだろう? シンディは確かに無茶なことをするが、お金に執着するタイプではない。本人に聞いてみる。


「それはどういう意味だったの?」

「たぶんお金を払ったら、むしり取れるところまでむしられて、これ以上取れないとなったら、始末されると思ったの。だからそれじゃまずいって」


それはおそらく正しい判断だ。たぶんまとまった額を払っていたら、俺は殺されていた可能性が高い。


「それはそれでよかったと思う。だけど、それなら、後はどう解決しようとしたの?」

「騎士団よ」

「そう。シンディが言うには、こういう問題は騎士団一択だって。もっと強い者に頼らないといけないって言うんだ」


そうか。そう言えばシンディは騎士団に憧れていた。商売よりそういう方面の方が向いているのかもしれない。


「それでシンディはすぐに騎士団に駆け込もうとしたんだけど、さすがにそれはまずいと思ったんだ。まだ拉致と決まったわけじゃなかったしね。

それで商務部長のアンドレアン氏に相談して、拉致の可能性もあると言ったら、騎士団につなげてくれたんだよ」


確かに初対面の騎士団に直接行っても相手にしてくれるかどうかは疑問だ。ただちょっと抜けているところもあるが、方向性としては悪くない判断だ。


「その後はどうしたの?」

「騎士団の方で、表立って動くといろいろ危ないからと、伯爵様の指示で家宰様が指揮して密偵の方も動いたんだ」


ずいぶんいろいろな人が動いてくれたことがわかる。


「その後は?」

「うん。騎士団の方では誘拐を取り扱った経験があるからそれに従って動いたんだ。相手の言い分に乗る振りをして相手を追跡し人質を確保してから逮捕する」


「なるほど。すでに経験があるなら強いな」

「うん。それもシンディはわかっていたみたいなんだ」


「えっ? 知っていたの」

「そりゃそうよ。貴族や金持ちなんて誘拐がときどきあるから、騎士団はお手の物よ」


今回は本当にシンディの判断に助けられた。彼女がいなかったらどうなっていたかわからない。


正直、商売の方はいまいちだったが、やはり人はそれぞれ得意不得意がある。得意なところで活躍してほしいようにも思う。


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