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家宰が帰った後の相談

(少し時間が戻り、フェリス視点に戻ります)


 株主総会が休会になり、しばらくマルクやアンドレアン氏や司教座付き司祭の人と話していた。マルクはここのところウドフィ関係の対応ばかりに追われているらしい。


「あのような者の対応ばかりでお店の方は大丈夫なんですか?」

アンドレアン氏が聞いている。


「もともとこの店は兄夫婦がしていた店で、兄は困ったものですが、兄嫁はよくできた人で、安心して任せておけます」

「それならよかった。やはり1人で組織を動かすのはいろいろ問題がありますね」


カテリーナは相変わらず活躍しているようだ。ところでうちのクルーズンの商会は俺がいなくなったら大丈夫だろうか。


それからふだんの経営の状況やクラープ町の様子などが話題に上がる。


そうしているうちに使いに出していた店の子が帰ってきた。店の子と言っても俺より年上なのだけれど。


「お客様がおいでです」


またウドフィだったら困る。ただもしかするとスミス氏かもしれない。そんなことを考えていると、マルクが誰かと問う。


「どちら様だ?」

「なんでも家宰様とのことです」


家宰が来たのか! 俺はここにいることがわかるとまずいかもしれないかと、隠れることにする。




 しばらく経営者だけのスペースにいるが、時間がかかりそうなのでギフトで家に戻ってクロのところにいく。


ただクロの方もなにかまたあんたかいという感じで喜んで飛んでくるわけでもない。


そうは言っても面倒そうにのそのそやってきてすり寄っては来てくれる。


猫なんてそんなもんだし、必死に人間の愛情を求めているより幸せなんだとはわかるけど。


「昼間っからお主も暇じゃのう」

神にぼやかれる。単にクロを独占したいだけだろう。だいたい暇なのはお前の方だと思う。


「あんたに言われたかない」

「ワシはこれが仕事であり使命なのじゃ」


まったく暇人はうらやましい。そういいつつ、マルクやアンドレアン氏が家宰相手にいろいろ交渉している間は猫と遊んでいた。


やはり何と言っても首や頭をかくのが一番いいらしく、首などかいていると目を細めてゴロゴロと声を出す。


両手で抱き上げて、やや斜めにしてクロの顔を俺の耳近くにおく。そして首をなでると何か楽器でも弾いているようにゴロゴロ音が出る。しかも毎回だ。


もうこうなると本当に楽器のようだ。ところでゴロゴロ音で何か回復の効果があるらしいが、それなら患者にゴロゴロ音を聞かせて生活していけないものかと思う。


神にこんな生活が許されるなら、人ならもっと許されていい。





 しばらく遊んで帰ると、家宰は帰ったようだった。またマルクやアンドレアン氏と話す。


「おや、どうかされましたか? ずいぶんと顔色がいいですね」


そう聞かれるが、まさかクルーズンに帰って猫と遊んでいたとは言えない。


「どうも失礼しました。私がここにいるとまずいこともあろうかと思い、少し奥で休んでいました」

「なるほど。ただ家宰殿はまあ常識的な人ですからそんな無茶はしないかと思いますが……」


確かに俺の接触した感じもその通りだ。ただそうは言ってもあの領府は一番上がどうしようもないから、下に少しくらい常識人がいても基本的に腐った決定しかされない。


常識人というならスミス氏もわりとまともだが、結局政策はちぐはぐでしかない。


そんなことは前世のブラック企業でいくらでも経験はあった。ブラックでも中にいる人が全員おかしいわけではない。もちろんまともな人が去っていくので多くはないのだが。


それで上に行くほどおかしくて、まともな決定が通らないのだ。


「それで首尾はいかがでしたか?」

「家宰殿は納得しているようです。だいたい取り上げること自体が無理筋ですから。貴族院に訴え出たら向こうに勝ち目はないでしょう」


「はあ、そういうものですか。ただあの非常識ぶりを見ていると、どこまでも争いそうな気もしますが」

「さすがに貴族院には持って行かないでしょう。そこまで行ったらいろいろ調査が入りますから。

あのウドフィとか言う者、あれの件でも他の件でもこちらの領は探られてはまずいことが多すぎるようです」


なるほど。確かにそうかもしれない。ただあれだけ非常識な連中だ。探られてまずいと思っているかどうかも怪しい。


だいたい常識人は非常識な人間が後先考えずにどれほど支離滅裂なことをするか知らない。


アンドレアン氏も有能そうではあるが、あの常識人ばかりの伯爵領府で仕事をしている。


俺のようにブラック勤めや子爵領府を相手にするような経験は少ないだろう。果たしてそう上手く行くものかと不安になる。



 そんなことを話している間、司祭の方はほとんど話さない。そういう性格なのか、何か考えがあってしているのかはわからない。


あの司教の手下だから一筋縄ではいかない気もするし、逆に司教と長くい過ぎて慎重すぎる態度ができたのかもしれない。


後でマルクに聞いたところ、司教も株を持っていると聞いて家宰は少し動揺していたとのことだった。


やはり面倒で悩ましくていろいろ苦労が多くても司教に譲渡しておいてよかった。




 その後は株主総会の対応について話し合う。さすがに何度も人を集めるわけにはいかない。


とりあえず子爵が株主でないことを確定した上で、変則的だが経営側の案を示して郵便で承認をとろうということになった。


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