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ウドフィとモナプの総会開催要求

 クラープ町のマルクのところに出入りしている。また明日ウドフィが来るそうだ。


出資分取り上げの通告だけして、マルクが拒否して、名目だけ取り上げたことでうやむやに終わることを期待していたが、そうは問屋が卸さなかった。


強引に取り上げようとしたところで、伯爵や司教と対立するだけなのに、どうしてそれがわからないのだろう。マルクと愚痴を言い合う。


「なんであの人たちは取り上げが無理だってわからないんでしょうね。だいたい取り上げたら、投資なんかしてもらえなくなるのに」

「目先のことしか考えないからね。とりあえず、金が儲かればいいとか、気に入らない相手に嫌がらせすればいいとか」


「それにしたって、信用というものがあるでしょう」

「変わったことを言うね。だってあいつら領府だから、信用を得ようなんて考えないんじゃないかな?」


確かに民主主義でない場合には為政者はやりたい放題にできそうだ。ただ他の領に逃げることが可能となれば、信用がないとうまくない気もする。ともかくやはり俺は別の社会出身の考え方のようだ。


「ええ、だって逃げてしまえるでしょう」

「確かに若い者は逃げやすいな。だけど年を取っていろいろしがらみができると逃げにくいものだよ」


それはそうかもしれない。前世でも都会に出やすいのは若い頃だった。


「なるほど。どちらにしても領の未来のためにはなりそうにないはずで。そういうことをわかる人は領府にいないのかな?」

「それはいるだろうけど、ただそういうことがわかる人が力を持つとは限らない。というより持たないケースの方が多い」


それはそんな気がする。前世でもそうだった。


「たしかにそうでしょうね。残念な話だけど。ただそれがまずいと思う人はもう少し多くてもいいような気もする」

「そう思う人がいても言い出せないんじゃないか? メンツとか他人より甘いとみられたくないとか、そんな理由で」


「どうしたらいい出せるようになるんでしょうね」

「それはふだんからトップが意識的に批判や反対意見が言いやすいようにしておかないと無理だよね」


考えたらドナーティ商会も、マルクの兄のマルキが古株の幹部たちを押さえつけてやりたい放題していたのだった。




 翌日予告通りウドフィが来る。ところが今日は連れがいる。あれはたしかコンサルのモナプだ。


パラダ騒動のときに出入りしていた。俺はまた隣室に隠れて話を聞く。いつものようにマルクが応対する。


「きょうは株主としての要求をしに来た」

「はあ、ウドフィ様は株主ではございませんが」


「だまれ! 領府がシルヴェスタから取り上げた分だ」

「それに関しては見解を異にするところでございます」


「だまれだまれ! 領内でご領主様の決定は法と同じだ」

「しかし領外の方とも関係しますし、だいいち王国法に触れるような決定はできないかと存じます」


その辺でウドフィは詰まってしまい、代わりにモナプが話し出す。

「これはまた異なことを。王国法でも領主様の決定は覆るまでは正しい決定として通ることになっております」

「そちら様はどちら様ですか?」


マルクは領都系商会で暗躍していたモナプのことはよく知っているはずだがとぼけてウドフィに聞く。

だいたい兄のマルキをだましていた一味だ。


「これはこれは申し遅れました。以前はクラープ町の商業の振興にもご協力しておりましたコンサルタントのモナプと申します」

ウドフィを差し置いてモナプが応える。


「はあ、そのモナプ様が、なぜこの席にいらっしゃるのですか?」


「ええ、最近はご領主様の経済面でのご相談にも関わっておりまして」

「はあ、そうですか。とはいえ、領府からの委任状なりがなければ、モナプ殿とは責任のある相談はできかねませんが、お持ちでしょうか」


そう言われるとモナプは露骨に不愉快そうな顔をする。王国法がなどと言っているが、まともに自分の権限も正当性もわかっていないらしい。


「まあよいではないか? せっかく来たのだし」

ウドフィが口をさしはさむ。おそらくウドフィだけでは対応できないとモナプがついてきたのだろう。


「いえ関係のない方に同席されても困ります。モナプ殿はご退席いただけませんか?」


「えーい、だまれだまれ! おとなしくしておればつけあがりおって。領府をなめるなよ。とにかく総会は開いてもらう。どうなるか覚えていろ!」


ウドフィが叫ぶ。どこがおとなしくしていたのかわからないが、確かに最後の罵声に比べればそれまではおとなしかったのかもしれない。


さらにモナプが付け加える。


「お前は総会で過半数を押さえているつもりだろうが、そうはいかないからな。目にもの見せてくれる」


どうやら本性が出たようだ。ところで重要な情報が出ている。俺の持っていた株は半数を超えていない。


それなのにモナプが過半数のつもりでいるということは他の株主で領府への協力者がいるということだ。


クルーズンにいる俺の部下たちということはないだろう。だいたい領府では彼らに接触できそうにない。


それ以外にクラープ町の商人たちにも株を持ってもらっているから彼らのうちの誰かが領府に協力するのだろう。それはこの調子で脅されれば従うのが出てくるのは仕方ない。


しかしそんな重要な情報を簡単に漏らしてしまうモナプもまたへぼとしか言いようがない。


さっそく対策を考えないといけない。

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