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40. 冒険事始初日(下)

残酷シーンがあります。苦手な人はあとがきにあらすじがありますので読み飛ばしてください。

 それから狩りとなる。


「じゃあ狩りをしてみるか」

「何を狩るの? ゴブリン?」

「ゴブリンは子どもにはまだ早い。きょうはカエルだ」


そう言って森の方へ向かう。カエルなら年上の子たちが捕まえていたなと思う。

森の中に池のような水たまりのような場所があり、その近くでは夏近くになるとカエルが大合唱する。


「この辺のカエルは毒のあるのはいないが、地域によっては毒ガエルもいるので注意しろ」

「どうやって注意すればいいですか?」

「その地域の冒険者に聞くのが一番だな」


水たまりに流れ込む小さな流れのあたりでそれぞれカエルを探す。

追いかけまわすと、飛び跳ねて逃げていく。シンディが真っ先に見つけて捕まえて来た。


「じゃあ、絞めるからよく見ていろ」


そういうとスコットは自分ですでに捕まえていたカエルを地面に押さえつける。


あまり見たくないが、見ないといけないと思い目を向ける。


ナイフを取り出して首元に当てると、じたばたしていたカエルがあっという間に動きを止める。


そのあとは腹を裂いて、皮をむいて、解体していく。


「同じようにやってみろ」


言われたシンディは少し戸惑っている。シンディが戸惑っている姿を見るのは……、議論に負けそうなときはよく見るかもしれない。


とはいえ何か心に決めたのか、同じように絞めて解体していた。


さっきまでは楽しかったカエル取りが一気にシビアになってしまう。


必死に取ろうとしていたのが、いまは取れないでくれと願ったりする。

だけど取らないわけにもいかず、結局は取れてしまう。


「と、取れました」


あまり申告したくないが、取れないままでも困る。


「じゃあ絞めてみろ」


そう言われて、カエルを抑えつつもそっぽを向く。ナイフを持つ手がおぼつかない。


「本当に弱っちいわね、さっさとやってしまいなさい」


さっきまでおろおろしていたシンディが急かす。

自慢ではないが、ゴキブリにとどめを刺すのだって苦手だったんだ。手の震えを感じる。


「一気にやってしまった方が獲物も楽なんだ」


そう言われて、一気にする。瞬間は何があったのかよくわからなかった。


左手でじたばたしていたのが動かなくなる。何とかやり遂げたようだ。


後はスコットに聞きつつ、腹を裂いて皮をむいて解体する。

ちょっと不格好だが、いちおうは形になった。


「自分で食べる分にはどっちでもいいが、人に売るときは解体の仕方も値段に関わってくるからな」


練習するほど解体したくないが、覚えておこう。




 マルコもカエルを取り無事に処理して、あっという間に2時間くらい過ぎていく。


日本でおっさんをしていたころは2時間も野外で活動するともうくたくただったが今のこの体は疲れなくていい。


「それじゃあ昼飯にするか」


スコットの声にみんな一息つく。


「昼飯はさっきさばいたカエルと持ってきたパンだ」


実はこちらの世界に来てからカエルは何度も食べている。だから抵抗があるわけでもない。

わりと淡白で鶏肉のような味だ。ただ自分で処理したものを食べるのは初めてだった。



 まずはたきぎを探す。森の中に枯葉や枯れ枝などが落ちているので適当に持ってくる。もちろん湿っているものはだめだ。


「じゃあ、火おこしをするか」


実は火魔法で着火できるのだが、今日は練習ということでそれは使わないことになった。


火は火打石を打ってこよりに移してからさらに枯葉と枯れ枝に移す。

火打石の方は何度か打ったら火花が出るようになったが、そこからこよりに移すのがなかなか難しい。さらに早く枯葉に移す必要がある。この辺は習っておかないとできないと思う。



 火を起こしている間に、スコットが持ってきた金串に先ほどのカエルの肉を刺しておく。


後は火で15分くらいあぶる。ジュクジュクと表面が煮立ち始め、いい色になったら塩を振って食べる。


味自体は知っているものだが、自分で捕まえたからか、けっこうな満足だ。


「香草を入れてもおいしいかもね」


スパイスもと思ったが、この社会ではバカ高い。胡椒も容易には手に入らないのだ。実は塩もそんなに安くはない。


あとから揚げもあるか。フィールドでは鍋と油を持ってこないとできないが、チートがあれば余裕かもしれない。


いやチートがあれば、食事の時だけ家に帰ってもいいのか。クロだってたまには変わったものを食べたいかもしれないし。



 考えたらダンジョンでは食べられるものが採れるとは限らないし、取れたとしてもたきぎなど集められるはずもない。


それでスコットに聞いてみた。


「ダンジョンなどの探索中は何を食べるのですか?」

「干し肉と乾パンだな。軽いし日持ちするからな」


何か聞いているだけで口の中が乾きそうだ。シンディもマルコも残念な顔をする。それを見てスコットは

「干し肉だってうまい店はあるぞ。あと夕食は干し肉と乾パンだから」


何事も経験だと思いつつも、残念な打撃が来た。





カエル狩りをして解体して、焼いて食べます。


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