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伯爵にも株式引き取りを頼む

 子爵領で俺の出資分が領主である子爵に狙われていた問題で、何とか持ち株の半分を司教に引き取ってもらうめどがついた。


後は残りの半分を今の領主であるクルーズン伯爵に引き取ってもらう算段だ。



 伯爵は司教のような古狸ではないものの、子爵のような無能でもない。司教相手のような面倒なコミュニケーションはしなくてもよいが面倒はある。


まず司教相手には大っぴらに献金していて司教が俺の苦境に手を差し伸べるのはある意味当然だ。義務があるわけではないが、今後も献金が欲しければ損にならない範囲で便宜を図るだろう。


だが伯爵相手にはいくらかのものは献上しているが、大っぴらに出しているわけではない。そう言う慣習がなく出すわけにもいかない。



 それに司教はややこしいコミュニケーションを取るものの、教会の勢力拡大や利益を求めていることははっきりわかる。


だが伯爵だとそこまで露骨でもない。もう少しふんわりと領全体の利益を考えている感じがある。


若くて理想肌で育ちもいいからかもしれない。そういうと司教の育ちが悪いような言い方だけれど。


必ずしもそうとは限るまい。前世でも育ちがいいはずなのに品がないのはいくらでもいた。



 ただ逆にとらえどころがないところもある。司教相手なら相手の利益を申し出ればそれで合意するが、伯爵相手だとそうでもないところがある。


法的整合性とか道徳的な観点からも意見されたりすることもあるのだ。その点は少しややこしい。




 以前に出した手紙への返答の形で、領府の政庁に呼び出しを受けたので、準備して向かうことにする。


司教座教会のような豪華さはないが、機能的には洗練された執務室だ。


さすがに俺は前世のオフィスを知っているのでそこまで驚かないが、同行しているマルコなどは目を見まわしている。


「よく来てくれた。何か相談事があるそうだが」


「お時間をいただき大変にありがとうございます。早速ですが」


そう言って話を始める。司教だと回りくどい儀式ばった挨拶が必要だが、伯爵はそれを好まない。けっこうな好対照だ。


「実は出身の子爵領クラープ町の商会にいささか出資をしております。ところがそれを子爵様が取り上げようとしているのです」


「はて、子爵殿といさかいでも起こしたのか」


伯爵には何度か会っている。直接、トラブルについて話した覚えはないが、当然調べていると思う。


ただ知らない振りして説明させているのだろう。あまり一方的にこちらに都合のいい話をするとまずいのかもしれない。


「実は、ずっと以前に子爵様の取り巻きの商人が私の商売を取り上げました。その挙句に大失敗して、私のことを逆恨みしております。子爵様は子飼いの商人の利益を図ろうと私に無茶な要求を出してきたということです」


司教相手だと子爵と呼び捨てしても大丈夫なのだが、伯爵は領主同士で爵位はともかく同じ立場で気を悪くしそうだ。いちおう敬称をつける。


「ああ、そうだったな。確かそれでこちらに移ってきたのだったか」


目の前にいるこの人も無能ではない。おそらく別ルートですでに事情などもつかんでいる。言葉巧みに誘導などというのも難しいだろう。


司教といい伯爵といいやりにくいと言えばやりにくいが、まともな論が通るのでやりやすいと言えばやりやすいかもしれない。


これが子爵と来ると無茶苦茶だから困る。


「はい。その通りでございます。あちらでは先が見えない状況でした」

「なるほど難儀だな。それで今日はどのような用件か?」


「はい、実はお願いしたいことがございます。ちょっとややこしいことですが、先ほどお話しした出資分を形の上で買い取って欲しいのです」

「形の上でというのは何かよくわからないな」


「実は将来のことを考えると持っていたいこともございます。ただ持っていると取り上げられてしまう。そこでお譲りして後で買い戻せるようにしていただきたく存じます」

「またずいぶん面倒な話だな」


「はい。こんなことを伯爵様にお願いする筋だとは存じません。ただあまりに子爵様がご無体なのでご領主様におすがりするしかないのでございます」

「まあ、あの方は仕方ないな。ただそれにしてもあまりに面倒ではないか。単に私が買い取るのではまずいのか?」


「可能ならあちらの商売は続けた方が私にとっても都合がよいですし、おそらく伯爵様にも貢献できるものと考えております」

「ほう、それはどういう理由でだ?」


司教のときはここで献金を増やすことをにおわせればよかったが、領主となるとそうもいかない。


「はい。クラープ町とクルーズン市はわりと近いにもかかわらず、流通は必ずしも多くありません。

長らく子爵領都ゼーランの商人が主流を占め、当地との商売に熱心ではなかったためです。

しかし領都系の商人は没落し、いまは地元の商人が主流となっております。そこで今後の流通の拡大が期待できます」


「ふうむ。それはそれでよいことだが、それなら当地の他の商人に任せてもよいのではないか?」


「実は以前もクラープ町への出資を募りましたが、必ずしも芳しい結果ではありませんでした。

さらに今回の件でも他の商人の方にも出資分の引き受けをお願いしましたが、やはり十分ではありません。

まだあの領はクルーズンの商人にとって利益は不明でリスクが大きく何が起こるかわからない場所なのだと存じます」


「なるほどな」


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