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司教に株式買い取りを依頼する

 子爵が俺のドナーティ商会への出資分を取り上げるのに対抗するために、クルーズン司教に出資分の株を担保にお金を貸してもらうお願いをしに来ている。


実際は買い取ってもらい、その旨をドナーティ商会に登録し、しかも俺が買い戻せるように特約を付けておくのだ。その間利子も払う必要がある。


とりあえず一部の株を献上し、株について詳しく説明をした。


「そこでお願いしたいことがございます」

「さてどのようなことでしょうか?」


「実はまだ株式を持っております。実質的にはそれを質にお金をお借りしたいのですが、形の上ではお買取りいただいて、私が後で買い戻せるようにしていただきたいのです」

「はて、これはまた難しいことをお求めになる」


「子爵は私から取り上げようとしております。しかしまさか司教様から取り上げるようなことは子爵にはできないということでおすがりしているのです」

「そのようにうまく運ぶでしょうか?」


子爵あたりじゃ、司教にかなうはずがないことはあんたが一番よくご存じのはずだ。伯爵ですら当てこすりくらいはともかく表立って対立などできないというのに。


「私は子爵は手出しできないと確信しております」

「しかしもし取り上げられたら、皆様からお預かりしている教会の資産を棄損してしまいます」


そう言われるとつらい。とはいえ予想はしていたことだ。あらかじめ考えておいた手を使う。


「その時は私の方で確かに保証いたします。つまりその分はお支払いします」


後でいろいろ譲歩させられそうなので交渉材料として後回しにしたかったが、これをしないと先に進みそうにないので、出してしまう。


子爵が手を出せないことは確信しているし、万一手を出せたとすると結局は失うことになるので、少しでもそれがなくなる方向にかけた方が得だ。


「教会の資産をお守りいただけるそのご熱意、大変にありがたく思います」


こちらから譲歩をひきだしておいて、よくもまあ口が回ることだ。ともかく株式を譲渡する障害が一つ減ったようだ。


「そこでもちろんこの取引は私にとっては都合の良いものですが、教会にとってもよいことがないとお引き受けいただけないことはわかっております」

「信者の皆様からの浄財を預かる身としては、教会の発展を常に願っているところでございます」


いーや、あんたは金が好きなんだ、そうは思っても言えない。


「そこで実質的に私がお金をお借りしている間、当然のことながら利子をお支払いいたします」


教会が運用をしてはいけないという理屈はない。


その宗教が積極的に利殖を禁止しているとすれば、信者はともかく教会自体が運用をするのは上手くないだろう。とはいえ、往々にしてそれは行われるのだけれど。


俺は教会育ちだったが、利殖をとがめるような教えは聞いた覚えがないし、実際に教会は金貸しをしていたはずだ。


いちおう家に神がいるのだが、利殖が禁止かどうかあれに聞いても何の足しにもならないことはわかっいる。司教も大司教も教皇も神とは話せないのだから。


「信者の方が大変に困っているときにはいささか用立てすることはございます」


なるほど、金貸しするというのをそう言いかえるのか。


「はい、私はいまとても困っているところでございます」

手元に金がなくて困っているわけではないが、司教が金を貸す言い訳ができればいい。


「なるほど。よくわかりました。ところでもしそのお金をお貸ししている間にクラープ町の商会の方で事業が続かなくなったらどうなりますか?」


つまり潰れたら株はどうなるかということだ。よくそう言うことに気づく。やはり並みの坊主ではないようだ。とはいえ想定内の質問だ。いちおう答えは準備している。


「それはこちらで保証します。つまりもしクラープ町のドナーティ商会が潰れてこの株式が紙切れになっても、うちでお約束の価格で買い取ります」


「保証していただけるのはありがたいですが、それではこちらにリスクがなさすぎるのではありませんか? 商売をされている方は一方があまりに得をするような取引は好まないかと聞いております」


まったく食えない坊さんだ。だいたい金を借りたいということは事前に言ってあったが、株の話はしていなかった。


ということは向こうは考えるための材料はあまりなかったのだ。ところが正確にこちらの弱みを突いてくる。


もしかしたら俺がクルーズンで株を処理していたことをすでに嗅ぎつけていたのかもしれない。



 答え方は2つある。おべっかを使って教会だからよい条件にしているというのはある。ただそれは嘘だ。


本当のところは、こちらでリスクを引き受ける代わりに支払う利率は低くしてもらうというところだ。


嘘を言うか、本当のところを言うか迷う。ただこの坊さんはうそを言っても見抜いてしまう可能性が高い。


見抜かれたときにこっちはかなり不利な立場に追い込まれそうだ。ここは正直に話した方がいい気がしてきた。


「ええ、その通りです。商売で利益はリスクに見合うべきです。ですからお支払いする利子はそれに応じてそれなりのものにさせていただきます」


そう言うと司教はにやりと笑う。

「なるほど、ごもっともですな。これで一つ安心してお引き受けできそうです」


「他にご心配の点はありますか?」


長いバトルシーンはあまり好きではありませんが、なにかそれを書いているような気がしてきました。

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