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果物の輸出の相談

 冷蔵流通ルートについて、クラープ町とクルーズン市の間で実験を行った。


その際にふだん付き合いのあるクラープ町の商人たちといろいろ情報交換をする。



 基本的に領主が俺を目の敵にしているためクラープ町での商売を広げたいわけでもない。


だが商人たちは俺にまだいて欲しいようだ。しかも彼らも領主が気に入らないので一緒に対抗してくれる。



 それはともかく彼らも冷蔵流通に参加したいらしい。そこでいろいろアドバイスをする。


果物が良さそうなので、時期を決めてクルーズン市の青果商のブリュール氏に話を通すことになった。



 そこで日程を決めて相談の機会を設けた。クラープ町の商人に集まってもらい、クルーズンからはブリュール氏の店の手代さんに来てもらうのだ。


実物の果物を持ち寄れればいいのだが、こればかりは季節があって、なかなかシーズン買いには持ってこれない。



 それでも当日は商人以外にも周辺の村の農家なども集まってブリュール氏の店の手代さんの話を聞いていた。


ほとんど近隣で消費していたものが商品として売れることがわかり、農家の人などは驚いている。


セレル村はブドウの生産でずいぶん豊かになったので他の村も後を続けとばかりにかなり熱心に聞いていた。


そこでブドウはもちろんプラムなども売れそうだということがわかってきた。


「いや本当にありがたいことです」

商業ギルドのパストーリ氏から感謝される。


「そうは言っても成果が出るのは数年後ですよ」

「それでも未来に希望が持てることはいいことです」


もちろんいま売れる物はわずかだし、品質もそれほどではない。本当に売ろうとすれば木を植えて、実も選別しなくてはならない。


それには数年かかる。とはいえこの町では領主の失政で商業は振るわず人口も減少していた。


そこにわずかでも上向きの要素が入るのは関係者としてはうれしいことだろう。


「何とかうまくいってくれるといいですね」

「あなたにもますます協力してもらいたいですね」


正直手を引きたいところだが、そうはいかないと言われてしまう。


故郷はセレル村で、その次の故郷でもあるが、前世の記憶があるので、なんとなくそういう意識も薄い。


だがシンディやマルコやその後に入ったアランたちにとっては故郷だろう。


彼らに聞いてみても何とか一緒にやっていきたいという。



 いよいよとなったら俺の持ち株を彼らに譲ることも考えようかと思う。


まだ領主の子爵は俺の持ち株までは手出ししようとしてはいないが、いずれそうなることも考えられる。


いくらクラープ町の商人たちが持っていて欲しいとは言っても、みすみす取り上げられる状態を放置するわけにもいかない。


さすがに領主も別の者に譲渡したものまでは手出しできそうにはない。そんなことをすればいよいよ人々は領を見放す。というより役人たちすら逃げ出しそうだ。


もっとも彼らだけでは持ちきれないだろうから、もう少し他の譲渡先も考えないといけない。





 家に帰るとクロが気づいてすり寄ってくる。正確には近づいてきて俺の脚に向かって体を横付けしてくるのだ。必ずしもすりすりしてくるわけでもない。


横付けして、もちろん構ってくれるよねとばかりに待っている。そこで無視するようなことはもちろんできない。


別にあの神が怖いわけではなく、猫のあまりの魅力に抗いがたいだけだ。



 そして持ち上げて抱きかかえる。それはいいのだが、クロが手を出してくるのだ。


以前は猫パンチを喰らって、たいして痛くはないが、顔を引っ掻かれたことがあった。


いまは抱きかかえるときに適当に距離を取って簡単に避けられる。もっとも神は愛の鞭を受けろと言ってくる。


俺はあんたほど変態じゃない。もちろんよける。だが爪を立てるので服には引っかかるのだ。



 引っかかるだけならいいのだが、引っかけたまま、今度は降りたそうにじたばたと体を動かす。


それはそれで困るのだ。まさか服を切るわけにもいかない。


爪を外そうにも両手がふさがっているのでうまく外すこともできない。


けっきょくクロが爪を引っ込めてくれるまで抱きかかえて待つしかない。


しばらくしてクロが爪を引っ込めると、ようやく降ろしてやることができる。


「クロねえ、爪たてるのはやめなさい」


「そんなもの、クロ様のなさることに文句をつけるべきではないぞ」

相変わらずあほな神が余計なことを言う。


「あのなあ、クロは人の服に爪を立てて、それで降りたいと言っているんだぞ」

「すべてかなえて差し上げればよい」


「爪が引っかかっていたら下ろせないだろ。だけど爪を外さないんだ」

「なら服を切ればいいだろう?」


「爪を外すにしても、服を切るにしても、両手がふさがっているのにどうすればいいんだ?」

「引っ張れば簡単に切れる服にしておけばよいだろう。何ならお主の手を3本にしてやろうか?」


神だけに本当にしかねないところが怖い。しかもここまで猫中心にしか考えられないのもなかなかすごい。


それに手が4本というのは想像がつくが、3本というのは想像がつかない。


ああ、なんで領主とか神とかアホなんだろう。

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