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クルーズン市おみやげ(下)

「ブドウ関係で、醸造をするとなると参考書が欲しいね」

「それならお手本になるようなちょっといいワインもあるといいね」

「じゃあ、後は酒屋さんと本屋さんくらいかな」


あまり遅くなるわけにもいかないので、それくらいにしようかと思う。


さっきの布を引き取ったりする都合もあり、チートを使って家から金貨と小さめの荷車を持ってくる。


先ほどの洋品店で支払いと受け取りを済ませてから、酒屋に向かう。

店員さんに聞きながら、高すぎず安すぎないワインを何種類か買う。



 酒屋を済ませると次は書店である。人に尋ねて書店の方に向かう。店は少し高級感のある外見だった。


「おやおや、お坊ちゃんたち、何かお探しかい?」


やや年のいった店主が話しかけてくる。ところで栄養のせいか、こちらの世界の人は日本より年齢の割に老けて見える。だからもう70代くらいだと思った人が実は50代などということはざらだ。


マルコが答える。


「こんにちは。私の方はちょっとお店を見せていただいていいですか? 彼は今日はブドウを売りに来て、醸造の本を探しています」

「なるほど。それなら」


書店主は何か目録を見ながら目当ての本を探してはじめる。


「醸造の本となると1冊有名なものがございます。5万ハルクくらい見ていただければよろしいかと。

今すぐには手前どもには在庫がございませんが、探すことはできます。1週間ほど見ていただけますか」


また次回にブドウを売りに来るときに引き取ればいいので、探してもらうように頼んだ。


マルコは何か欲しい本があったようだが、ちょっと金額が手に届かないようだ。2週間後の来店を約束して店を出る。




 2週間後に店に行って、入荷していた醸造の本を受け取る。4万2千ハルクだった。


本を村に持ち帰り、各集落の名主にワインを作ってみないかと呼び掛けてみた。


こちらは子どもだが、商売をしていたのと教会の子なのでなんとなく一目置かれている。


ほとんどみな尻込みしたが、東の集落の名主の娘だけは興味を示したので、写本するように言って本を預けた。


貸本なら数千ハルク取る所だが、こちらからの申し出なので無料だ。こうやって仕込んでおいていつか良いワインが特産品になるのを期待する。





 時間を元に戻して、荷物について大半の荷物は持ち帰るのだが、ギフトが使えないことになっているつじつまを合わせるために一部を発送することにした。


だけど送り方がわからない。ブリュール青果店の手代さんに聞いたところ、商人は商売用の商人同士の便を持っているが、小さな荷物は運べないという。


冒険者ギルドに聞くと冒険者ギルドの仕事で使う専用便はあるが、それ以外だと冒険者に頼むしかないという。


ただその荷物だけのために動くのでバカ高い値段なってしまう。次に馬車業者に聞くように言われる。


馬車業者で聞いてみると、主だった街道なら宿駅まで運ぶことはできるという。


宿駅ではその宿駅の別の馬車業者の倉庫でしばらくは預かるのでそれを受け取りに行くそうだ。


クルーズン市からクラープ町までの便はあるというので頼む。半金を支払い、残りは受け取り時に払うのだという。


それは輸送業者が信用できるとは限らないからそういう制度になったとのことだった。




 なんとも面倒だ。発送したら後は家に帰って届くのを待つだけの郵便や宅急便が欲しい。そのうちに絶対にそれを作ってやろうと思う。


それには馬車業者を束ねる必要があるし、クラープ町や村内の配達を担う組織も必要だと打算する。いつになるかわからないが、マルコとも相談だ。




 あとはチートで帰るだけだ。口裏を合わせてシンディとマルコは村はずれで遊んでいたことにする。


お土産はロレンスにだけはすぐに渡すことにした。ロレンスは気を使わなくてもいいのにと言いつつ、さっそくペンをインクにつけていた。


他の人のお土産や仕入れた商品は1か月くらい後にする。フェリスがクルーズンまで行くとなると往復6日村からは不在にしていないとおかしい。


1か月もたてばフェリスがその頃にいたかいないかなど自信をもって覚えている人はいない。実際に3日はいなかったわけで、その頃だと言い抜けられるだろう。


ついでに発送した荷物の方もそれくらい遅れることは多々あるとのことだった。




 この日は散々歩き回って疲れたのでクロともべったりだった。いつになく触ってくるフェリスにクロも少し当惑しているようだった。もっとももっとべたべたと触る神(猫オタ)はいるのだけれど。


「あれ、何か頼むことがあったんだけど」

「神はな、人の頼みは聞かないことにしておるのじゃ」

「あ、思い出した。クロの成長を様子をきちんと残しておきたいんだ。絵でも写真でもいいから作ってくれ」


クルーズンで似顔絵を描いてもらったときのことを思い出して話した。


「なるほど、クロ様の記録をとるのはぜひとも必要じゃな」


とつぜん手のひらを返す。この神に何か頼むときは猫にかこつけるしかないな。


神が何か唱えて作ったものは、クロの実物大の人形だった。完全に精巧で動かないだけの生き写しである。さすが中身は残念でも神だけのことはある。


作ったはいいが、これはわしのものじゃからなと言って、持ち帰ってしまった。まあ、記録が取れればいいのだけれど。


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