クルーズン市おみやげ(上)
引き続きお土産を探す。
「母さんたちにも何か買わないとね」
「シルヴィアさんは何が好きなの?」
「アクセサリも洋服も好きみたいよ」
ものすごく他人ごとのようだ。
「セリーヌさんは?」
「うちもその2つは好きみたいだな」
「だけど洋服のサイズわかる?」
「うーん!?」
「サイズもわからないし、アクセサリなんかは好みもあるからなあ」
「じゃあ、食べ物でも買っていく?」
「保存できるものでないとだめだ。ギフトがばれるので、馬車で運んだことにしないといけない」
「本人たちの好物ならいいんだけど、家族のためのものより本人だけのものの方がいいかな」
「じゃあさ、セレル村やクラープ町で見かけそうにないきれいな布を買っていこうよ」
「そうだね」
「ついでにマルクの店におろすものも探そうか」
そういって、洋品街に向かう。
洋品街は衣類自体と衣類を作るためのものを売る店が多数ある。布に針に糸に、ボタンや小物なども多数並んでいる。
店頭に筒状に丸めた布を多数置いてある店で、店員さんに聞いてみる。
「こんにちは。母たちへの贈り物に布を買いたいんですが、どれがいいですか?」
「そうですね。こちらなど上等なものになっていますので差し上げるには最適かと」
勧められた中でシンディは割と鮮やかなものを、マルコはわりと落ち着いたものを選んでいる。
「服を作るのにどれくらいあればいいですか?」
「えーと。こちらの服だと2mくらい(換算)ですが、同じ布がまた手に入るかわからないので、少し余分にお買い上げいただくといいですよ。
補修に使ったり、おそろいの服を作ったり、小物を作ることもできますから」
もっともだと思っていると、マルコは店員さんの商売のトークに感心している。
ついでにマルクの店で売る分について相談する。
「そういうことでしたらとこちらへ」
と番頭さんのところに連れていかれる。
番頭さんと相談して1本10mくらいのものをとりあえず5本買い、2割引きにしてもらって、4万ハルクほどの支払いとなった。
ただ持ち歩きたくはないのとお金は教会にあるので内金だけ支払い、後でとりに来るからと取り置いてもらうことにする。
少し歩き疲れたのと、のどが渇いたのでお茶を飲むことにする。
街を歩いていると感じのいいカフェが見えてくる。緑を配したゆったりとした作りでテラス席もいくつか置いてある。
日本ではこの手の店には入った覚えがない。店に入ろうとするとかなり上等の給仕服がばっちりと決まったウェイターが話しかけてくる。
「お客様方、このようなメニューですがよろしいでしょうか?」
ウェイターはメニューを見せてくる。軽食で飲み物がついて2000ハルクからで払えるか心配のようだ。確かに安い食事5回か6回分になるので高いが、いまは懐が温かい。
「ブドウを売りに来て、すっかり売れたので」
そう言って、銀貨を見せる。青果商のブリュールからは金貨も受け取ったが、すでに教会に持ち帰っていた。あんなものは持ち歩くものではない。
「それは大変に失礼しました。ご案内します」
相手は納得したかな。まあ、日本でも10歳にならない子どもだけで飲食店に、まして高い店に来たら、店員も戸惑うよな。トラブルになる前に確かめておきたいだろうし。
テーブルにはクロスがかけられている。こちらの世界であまり見た覚えがない。あ、日本でも俺の生活圏ではそれほどなかったか。
木製で花文字で書かれたメニューを見ると、飲み物と軽食とお菓子らしいものがいろいろとある。
タルトやカステラやクッキーなど小麦粉を焼いたものが多いようだが、よくわからないところもある。食品見本かせめて絵があるといいのだけれど。
シンディはマルコにどんなものか尋ねて、あっちも食べたいし、そっちも食べたいと言う。マルコもそこまで出さないが、同じようだ。
「じゃあさ、みんなで別々のをとって分け合おうか」
そういうと2人とも目を輝かせて同意する。給仕を呼んでお茶とともに頼む。
しばらくして運ばれてくる。だいたい思った通りで、それに果物を飾り付けてある。ナイフで切り分けてお互いに3等分ずつして食べる。
日本で食べていたコンビニスイーツよりも素朴なものであるが、みんなで食べるのは楽しい。お茶もこちらに来てから一番おいしいように思う。
プリンやケーキはなさそうだ。その辺なら試行錯誤すれば何かできそうな気もする。
それからアイスクリームも欲しい。魔法で作れないかどうか調べる価値はありそうだ。
すっかり休んで、いろいろアイディアも浮かんで、また街歩きを始める。




