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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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95. 冷蔵流通ルートを開放する

 冷蔵流通を確立する過程で、今まで需要のなかった氷魔法使いを多数育てることになった。その中でアンセンという氷魔法使いが引き抜かれてしまった。


けっきょくアンセンはうちに遠慮した舟運商会が乗船を拒否したため引き抜かれた商会で役に立たず、向こうで首になってしまった。


それに対して市議や母親がうちへの復職を要求してくる。彼はたいして仕事もできないし身勝手だしで、勘弁してほしいと思う。




 さすがに市議の方は領主の書付を見せられてもう何も言ってこない。だがあの強烈な母親の方はその後も何度か接触があった。


ぜんぶお断りしているが、業務に支障をきたすのでやめて欲しい。だいたい自警団に引っ張って行かれたのにまた来るというのもずいぶんだと思う。


ただ塩対応しているうちに、向こうもあきらめたようだ。正直助かる。




 けっきょくアンセンは途中の町でうちが卸した冷蔵品をその町の中小の商会が買って小売りするときの冷蔵庫用の氷を作って糊口をしのいでいるらしい。


後からうちが提示した額より稼げているのかもわからない。安くて安定しないのでは目も当てられないと思う。


ただうちに来て同僚より安い給料というのはやはり耐えられないのかもしれない。




 何とか騒動は収めることができた。競業避止契約はやはり必ずしも有効ではなかったようだ。


むしろ大型船の舟運会社との関係やうちが大半の氷魔法使いを押さえているから解決したようなものだ。




 ただ今のやり方にはうちが何もかも独占している問題がある。これでは不満に思う業者があるだろうし、市場は広がらないし、競争が健全にならない。


現状を整理するとポイントが3つある。うちが氷魔法使いを押さえていることと、うちが冷蔵流通を押さえているところ、そしてうちがシーフードの流通を押さえているところだ。


氷魔法使いは何となく押さえておきたいが、後の2つは別にそうでもない。よその業者が使ってくれてもいい。うちが用意してよその業者が使うならそれもいい。



「今回のこともあったし、よその商会にもうちの冷蔵流通ルートを少しずつ提供していこうかと思うんだ。」

「何でよその商会にうちの氷魔法使いを使わせるんですか?」

「うちだけでやっていればもっと儲かりますよね」


正直言うとあまり社会的責任がなどというつもりはない。ただあまり無茶しない方がむしろ得な気がしているだけだ。


「うーん。独占していると何が何でも氷魔法使いを分捕ろうとしてくると思うよ。競業避止義務だって伯爵領の外では微妙で本当に有効かわからないしね。

前にうちがしていたみたいによそから連れてくることもありうる。それなら少し高めの値段で提供した方が、相手も対抗策がとりにくいんじゃないかな」


「それはわかりますが、どちらにしても対抗してくるんじゃないですか。それなら別に使わせなくても」


「まあそうなんだけど。ただうちの冷蔵流通が使えるようになると、よそは対抗しにくくなると思うよ」


「え? それは、なんでですか?」


「例えばさ、今回は1つの商会が1人だけ取ったから1つの川湊しか担当できなかったけど、複数の商会で組めば複数の川湊を担当できるようになるよね。だけどうちの冷蔵流通が使えるなら、あえて組もうとしなくなる」


「あ、なるほど」


「それにね、うちだけじゃ限界があると思うんだ」


「どんな限界ですか?」


「例えばうちだってマルポールをくまなく知り尽くしているわけじゃない。もっとおいしい魚があるかもしれない。マルポールにまだまだ珍しいものがあるかもしれない。

それがうちだけだと十分に見つけられないと思うんだ。だからよその人も入った方がいいと思う」


シーフードの市場自体を広げた方が結局はいいと思うのだ。そんな感じで、方向性としてはよその業者にもうちの冷蔵流通ルートを開放していくことになった。


ただ具体策は検討中だし、始め小さくだ。また新しい局面に来たと思う。




 また家に帰ってクロに声をかける。いつもなら眠たそうにして何度かあくびをして、こちらに来てくれないのかとばかりの顔で見て、最後にようやくこちらにのたのたと来る。


ところが今日に限ってはあくびもそこそこに早足で俺のことろに来た。どうも神がいなかったらしい。それでエサがなくなっているようだ。


あの神のことだから自動給餌期でも仕掛けていると思ったが、そうでもなかったようだ。しかしまあクロは人のことを飯出しマシーンとでも思っているのだろうか。



 すぐに残っていた魚を焼いてやる。少し時間がかかるが、足の周りに絡んでくる。早くよこせというところだろう。


焼きあがってやると、今度は熱いのか食べあぐねている。あおいでやってしばらくしてがつがつと食べ始める。



 これは缶詰とかドライフードが必要な気がする。缶詰を作るだけの工作精度はこちらの世界にはないような気がする。


まあそれらは神に要求すればいい。基本的に人の頼みなど聞かないが、猫のことになると頼みもしないことまでする。



 神が戻ってきたので非難すると、土下座して頭を床に擦り付けかねないほどだった。もちろん俺相手ではなく、クロ相手にだけれど。


「ちょっと研究に進展があったのじゃ」


たぶん猫を増やす研究だろう。そうでなかったとしたら猫を甘やかす研究だ。間違っても人のためや俺のためではない。


「それはそうとドライフードを作っておいてくれないか? いやもちろんクロの分」

「なるほど。それくらいならわけはない」


缶詰の方はゴミを捨てると目立ちそうなので頼むのはやめた。神は処理してくれないだろうし。


「それから自動給餌器もあるといい」

「うむ。そうじゃな」


やはり猫のこととなるということをよく聞く。


ただ狭い家ではないがこの調子でやっていると猫グッズだらけになりそうなので、ほどほどにしてもらう。物をくれてありがたいはずなのだが、とにかく神などというものは扱いにくい。


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