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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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90. 小型船輸送の本格化

 冷蔵流通により加工のマルポールからクルーズンまでシーフードを運んできている。だが大型船で5日に1回しか来ない。


これでは仕入れとして不安定なので小型船も使うことにした。ただそうすると氷の補充は船に同乗でなく途中の町の川湊でする必要がある。


だんだん各町の氷魔法使いも育ちつつあるので、アランに小型船輸送体制を作るための実験をしてもらうことにした。


初めての輸送は成功ではなかったが、課題が見えて来た。その意味では実験としては成功なのかもしれない。



 アランは2回目の実験も行ってくれた。


「前回は上手く行かなかったんで、もう1度やってみますよ」

「また行くのきつくない? 部下に任せてもいいよ」

「いや、外出るのも楽しいので。結構旅は好きなんですよ」

「それならいいけど」




 そう言うわけで2回目を行ったところ、前回と違ってきちんと保存された形でシーフードが届いた。


何でも前回は氷の搬入が間に合わなくてものすごい少ない量だったり、やはりトラブルで氷が届いていなくて、余計に費用を払って待ってもらったりもしたらしい。


今回はそう言うトラブルがほとんどなかったそうだ。まあ初回は仕方ないところもあるとは思う。


「今回は上手く行ったみたいだね」

「そうなんですが、何というかちょっと危ないところもあったような」


確かにぎりぎりでとかたまたま上手く行っただけだと困る。小型船は何隻も使うので、ようやく上手く行くような状況で回しているとそのうち事故が起こる。


もちろん積荷がダメになるような事故の確率を完全にゼロにするのは現実的でもないし、費用も掛かりすぎるだろうが、めったに事故が起こらないくらいで業務を回す必要がある。


「いまの状況だとそのうち事故は起きそう?」

「ええ。たぶんそのうち起きるでしょうね」

「じゃあ少し余裕を持たせた方がいいね」

「あまり余裕を持たせ過ぎちゃうと、氷魔法使いの待ち時間が長くなったり、無駄な費用が発生してしまいそうです」

「完璧は無理だから、ここまでのミスは認めるという基準を決めて、それ以内に収めるようにしよう。それで費用や負担がかかりすぎるならやり方を見直そう」


前世なら確率の計算などしていただろうが、こちらではそこまではできそうにない。ただ経験をためながらそれに近いことを実現できるような気はする。




 そんなわけでアランは3回目の実験も行うとのことだった。

「じゃあ、またマルポール出張に行ってきます」

「アラン、マルポールに誰か気になる子でもいた?」

ジラルドが聞く。

「ああ、まあ」

アランは隠しもしない。まあ必要な出張だしいいけれど。もし必要もないのに出張するとなったらさすがに咎めるかもしれない。



 アランが帰ってきて首尾を聞く。

「どうだった?」

「ええ、今回はかなりスムーズでした」

「それはよかった。じゃあこれで行けそう?」

「まあ、そちらの方は大丈夫じゃないですかね」


何かちょっと気になる物言いだ。


「何かほかの点で気になることがあるの?」

「小型船何隻もだと、荷物を積み込んだり、氷を積み込んだり、そういうスケジュールがかなり面倒になりそうですね」


実際にやってみるといろいろ面倒が見えてくるらしい。確かにそれは何となくそう言う気がする。ただそれもいちおう考えていることはある。


「しばらくは面倒でもスケジュール調整するしかないかと思っている」

「しばらくの後はどうなるんですか?」


「氷魔法使いが増えて、船の数も増えたら、川湊の中に大きな冷蔵庫をおいてそこに氷を作っておくようにするよ。それで荷役の人が船に持って行く。

時間がたつと少し解けるかもしれないけれどタイミングぎりぎりで待たせておくよりは楽だと思うよ」


エネルギーの使い方としては無駄があるが、船の来そうな時間を押さえておけば、あまり無駄にせずにすむとは思う。


「なるほど。でもそれでもマルポールで小型船に積み込む方の指示は大変ですね」

「いやそっちはうちで全部やらなくてもいい。その頃にはよその業者が参入してくるよね」

「え? よその業者を入れるんですか?」


「いくらいま冷蔵流通はほとんど全部うちでやってるからと言って、いつまでも独占はできないよ。しかも独占しない方がいい。

うちがかなりの輸送量を持つのはいいけど、他の業者だって入ってもいい。ただ大半の氷の供給はうちがすることになるだろうけどね」


「そんなもんですかね」

何かアランは悔しそうだ。


「うちだって各都市や町のすべての需要を把握することはできないよ。だからよその業者も入った方が結局は交易が拡大してうちにも利益があると思う」

「ふーむ。でもそれで輸入が拡大すると、クルーズン近郊で今までの食べ物を作っている人はつらくなりますね」

「それはさ、他の町や都市に持って行けばいいんじゃないか?」

「確かにその方が儲かりますね」

「しかし苦労したのによそが入るのも何か面白くないような」

「まあそれでもうちの取扱量は断トツ多くなるだろうし、それに氷の供給でもそうとう儲かると思うよ。氷はよそは参入がかなり難しいだろうしね」

「だけどよその業者がうちの分まで氷を持って行ったら面白くないです」


「そりゃもちろん飛び込みで来た舟なんか氷が足りないときは断るとか待たせておけばいいと思うよ。

だけどきちんと契約している船には責任もって氷を供給する方がいいよ。もちろんそんなに安くは契約しないし」

「それはごもっともですね」


そんな風にしてなんとなく未来のカタチも見えてきた。ともかく今はアランが成功させた小型船の途中の町での氷供給型の冷蔵流通を進めるときだと思う。


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