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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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ブラックで使用して高額報酬を出す

 冷蔵流通を行い、シーフードを輸入している。ただ氷魔法使いの不足で相変わらず不足気味だ。


卸の方も急な注文があるとさばききれないし、小売りの方も全く足りない。



 品不足はあちこちに言い訳してやりくりして氷魔法使いが育つのを待つしかない。3か月ほどで何とか仕事になる魔法使いが出てくるはずだ。


それまではある意味ブラックで何とかやりくりする。つまりいまいる氷魔法使いに頼み込んで、かなりの超過勤務をしてもらう。


それだけだとさすがに申し訳ないしブラック排除の俺の方針にも合わないので、通常の倍の手当にさらに特典を出すことにした。


「悪いけど、また船乗ってくれない?」

「勘弁してくださいよ。1日は休みあるけど、ほとんど船の上ですよ」

「頼むよ。しばらくの間だけだけど、手当を倍にした」

そう言うと少し目が泳いでいる。



「恋人にも会えていないんですよ」


そうか恋人がいるのか。前世ではそんないい人ぜんぜんいなかったな。だけどそんなことで従業員をいじめたりはしない。


俺は心が広いんだ。気に食わないけど……。大海のような心だから。ともかく心を北極海の氷にしてなんとしても勤務を飲んでもらう。


「それなんだけど、船に4人の客室を用意したから3人までタダで同乗してもらってもいいよ」

そちらの条件にもまた動揺している。


「だけど向こうには1日しかいられないじゃないですか」

「ごめん、それは勘弁してくれ」


船はマルポールには1日停泊して、翌日に折り返す。


次の船となると5日後となる。2日後とかにあれば待つこともできるのだが、5日後となると負担が大きすぎる。


「マルポールに1日滞在してとんぼ返りか」

「じゃあさ、3倍にする。君だけじゃなくて全員」


あまりに高騰した価格からすると正直言って氷魔法使いの経費など大したことはない。


どうしてもブラックになってしまうなら、せめて労働に見合うものは出したい。


ついでに1人だけひいきするのもいいとは思わない。相互不信になるからだ。


とにかくさすがにそれで折れたようだ。


「わかりましたよ。それで結構です。行きますよ」

「そうしてくれると助かる」


 この手の無茶な交渉以外にも、さらに遠く離れた地方にまで人をやって、臨時で高額の報酬を出して氷魔法使いを確保した。


マルポールの魔法使いはとっくに確保している。レーヌの方の特産品の乳製品はもちろんそれなりには魅力的だが、それほど品薄にはならないので余裕のある魔法使いに来てもらう。


もちろん高額の手当て付きで、札びらで顔をひっぱたくようなやり口だ。


さらには東のクラープ町やそちらの伝手で領都ゼーランでも探してもらう。まだほとんど行ったことのない西の方にも募集を出してみた。


それら外部の魔法使いにはあまり詳しいノウハウは教えないようにする注意も必要だった。


元の地方に戻ったときにうちのノウハウを使って先に冷蔵流通をされても困る。競業避止契約も外の領となると有効でない可能性が高い。


もっとも魔法使いはそういう商売の部分には疎いものが多いから、なかなか始めるのは難しいような気もする。ただ他の商人が目をつけてその氷魔法使いに頼むのはありうる。



 そうしてみたが、こういうやりくりのようなやり方は後まで続かない。ブラックを続ければ人は疲弊するに決まっている。そんなことはしてはいけないのだ。


前世のブラック企業は疲弊した人を平気で切り捨てていた。つまりブラックの経営者だけ儲けて労働者から奪っていた。そしてゆくゆくは社会の負担になる。


けっきょく連中はズルしているだけなのだ。



 それで何でおれが報酬以外のブラックを許容しているかというと、出口が見えているからだ。研修の成果が出つつあり、少しずつだが魔法使いも増えている。


近いうちにはそれこそマルポールで次の船まで滞在していていいとできるだろう。ただ手当3倍はやめるだろうけど。


そうは言っても氷魔法使いの待遇は他の職種よりずいぶんいい。だから3倍となると役員より高額なのだ。


そう言えば前世で保険の勧誘の人は歩合制のため成果次第で役員より高額の報酬をもらっていた。


レーヌの魔法使いには元の都市で乳製品の輸出に携わってもらえる。他の人たちも帰ると思う。景気の悪いゼーランの魔法使いは帰るかどうかわからないけれど。




 そうしてだましだましでしているうちに流通量もずいぶんと増えてきた。


教会や政庁から多少多めの注文が入っても対処できるし、レオーニ氏の店に卸したりうちの店で売る分も十分になってきた。


いやさらに他のレストランからも求められて、卸し始めるようになった。そうすると珍しさがなくなったのか熱狂で買いたがった人たちは、潮が引くようにいなくなる。


げんきんなものだと思う。変な人に絡まれていたが、それもなくなってきた。


うちの店でものすごい値段をつけていたのも穏当な価格に落ち着いてきた。それでもさすがに冷蔵で外から持ってくるので、従来からある肉などよりは少し高い。



 以前は白身魚1人前で1万を超えていたが、いまは2000ハルクくらいで手に入るようになった。1万超えはさすがに熱狂が過ぎていた。


たぶん手に入らないからますます欲しくなるとか、人が食べていないものを食べたいとか、あまり合理的でない考えで買われていたのだろう。


2000ハルクでもこの辺で手に入る肉などよりずっと高いが、それは冷蔵で持ってきているのだから仕方ない。


ただふつうの庶民でも少しぜいたくすれば十分買えるくらいまでは落ち着いた。もちろん貧困層はなかなかそうもいかないだろうが。


そうは言っても元々この土地の文化にない文字通りの舶来品だ。どうしても格安であまねく誰にでも提供する必要もないと思う。


そんな調子でなんとなくやや高めの食材として定着していくように思う。


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