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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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シーフードを取り合うエラい人たち

 シーフードを河口の町から輸入しているが、仕入れが十分でない。ネックは氷魔法使いが足りないことだ。


だいたい俺が冷蔵庫を「発明」するまで氷魔法使いの用途はほとんどなかったからだ。


そこに突然需要ができたので、既存の氷魔法使いがほとんどいない。急遽養成しているくらいだ。




 ところがシーフードの仕入れ足りないのに注文はどんどん来る。足りないので卸先は制限せざるを得ない。


伯爵領府の政庁と司教のいる教会とレオーニ氏のレストランとうちでやっているデパートのような小売店だ。


要するにどれも断れない先と言える。あとのところからも頼まれるが基本的に全部断っている。




 優先順位は政庁と教会が同率1番で、レオーニ氏の店が3番、うちのデパートが4番だ。


さすがに政庁と教会で優劣はつけられない。一度かち合ったことがある。


こっちにくれ、こっちによこせと面倒で仕方ない。


「伯爵様の善政の下に貴君らの商売も成り立っている。伯爵様に回すのが当然だろう」


「人はみな神によって立ちます。何もかもが神の御心に根差すのです。神と人をつなぐ教会こそがそれを受け取るべきです」


両方とももっともらしいことを言っているが両方とも間違っている。みんな違ってみんなダメだ。


仲裁するのも面倒なのでこれで全部ですから話し合って分けてくださいと投げ出してしまった。


後は偉い人同士で勝手に決めてくれればいい。いっそオークションにしてやりたいくらいだ。ただそれもまた何かうらまれそうだ。力のない俺の方が権限があるのはややこしくて困る。




 レオーニ氏の店よりうちが低いのもあの強烈なキャラにかなわないからというのもある。

「シーフードではまだまだ試したいことがあるからね。ジャンジャン持ってきてくれ」


船の到着時刻を知っていて川湊に乗り込んでくるからたちが悪い。どこにそんな暇があるのか。


前に政庁の方と取り合いでタフな交渉をしていたこともあった。


レストランでシーフードばかり出しているのだろうか。既存の料理だって食べたい人はたくさんいるだろうにとは思う。


そうは言ってもシーフードがいま一番の人気だから押さえておくのが必要なのかもしれない。


レストランの中では事務担当のマンロー氏と丁々発止という話も聞く。




 うちのデパートが一番順位が低いのは、小売りなんかしているとうちから仕入れたい取引先から恨まれて面倒だからというのもある。


だからデパートの方は本当にたまたま余ったものを売るようなスタンスにしている。


それでも売り場か担当者らは回してほしいとの声が上がる。それを待っている客もいて忍びないということだ。


余った物しか売らないと言っているのだから、客にもたまたま来てあればラッキーくらいでいて欲しいのだけれど。


品薄のためか食べれば自慢になるらしく、一部の人は熱狂してしまっている。だいたいシーフードを買ってもみんな調理できるのだろうか。


さいきんようやく売り出されたものでレシピも出回っていないはずだ。ネットで検索できるわけでもない。それでもとにかく口にできればいいのだろう。



 冷蔵庫の発明から始まったシーフードの輸入だが、当初のもくろみでは少しずつ広がって行けばいいと思っていた。


少しずつ供給が増えて、少しずつ売り先も増えて、少しずつ知れ渡っていくのが理想だった。


だがそうは上手く行かないようだ。あちこちで狂騒曲がなっていて、こっちによこせ、不足だ、何とかしろの怒声が上がる。


あちこちに、ごめんなさい、努力していますと言い訳する日々が続く。


魔法学校や魔法塾では氷魔法使いが育ちつつあるというので、それもあと2か月くらいで収まるのかもしれない。


いや、どうせまたややこしいことが起こるに決まっているだろうけど、長期的には収まっていくはずだ。



 実は買い付けが増えたら増えたで心配事はある。値段はそれなりに下がるだろうが、儲からないところまで下がったら仕入れを減らせばいい。それは経済の原則で全く構わないことだ。


問題なのはやはり同じ経済の問題でマルポールでの買い付けの値段が上がりかねないことだ。


いまのところは流通のネックがあってそんなに大量に輸入で来ているわけではない。だが氷魔法使いが増えて流通が可能になると大量に買い付けることになりうる。


そうしたときに現地での買い付け値が上がり、さらに現地の人が買いにくくなるような気もしている。


ちょうど前世で和食の材料が海外に買い負けるようなことが起こりそうだ。まあそんな心配はいまからしても仕方ない。とりあえず目の前の問題を片付けよう。




 家に帰ると、クロが起きだしてきてこちらにすり寄ってくる。ところで猫というのもなかなかげんきんなところがある。


いちおう俺はクロには好かれているようだ。クロが寝ぼけていても、俺が呼びかけると起きて寄ってくる。


ただ寄って来かたがいまいちのことが多いのだ。何度かあくびしてからでないと動けないらしい。


ときどきあくびはするが、面倒だからいいやとまた寝てしまうことがある。


別のときは何度かあくびして歩いてくるのだが、のろのろとしか来なかったりする。むしろ来てくれないのかと言わんばかりの顔で見ている。


前世にいたころ缶詰を空けたときの音に反応して脱兎のごとく走り寄って来ていたは何だったのかと思う。


別にあれからさほど年をとっているわけでもないし、だいたい体の方は例のアホ神の祝福で万全のはずだ。


脱兎のごとく走ってこなくていい安心感があるのはいいのだが、もう少しうれしそうにしてもいいんじゃないかと思う。


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