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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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85. 迷惑な客

 冷蔵の水運によりシーフードを仕入れ、領主やら司教やらが自慢して大人気となり、品薄になっててんてこまいだ。


いまは何とか流通を増やしつつあるが、まだまだ足りない。魚の供給が足りないため、どうしても欲しい人たちが近づいてきて大変だった。




 たとえば取引先だと称する人からの面会要求があった。


うちはまだ大企業というわけでもないので、わりと徒弟さんが主人である俺に話しかけてくる。


そこで怪しい人がうちの徒弟にご主人に用があると言えば、俺のところに来てしまうのだ。

「何か取引先だという人が来ています」


アポがなければ断ってもいいのだが、たまたま暇だったので行ってみる。するとシーフードの要求だ。

「エビが10匹くらい欲しいんですが回してください」

「いえ、そう言うのはこちらの方では扱っていないので店舗の方に行ってください」

「私は取引先です。いいんですか?」


取引先だろうと知ったことではない。だいたい政庁ですら断ることもある。だがどんなひとか一応聞いてみる。

「どのようなお取引先でしょうか?」


そう聞いても要領を得ない。よくよく聞いてみると、けっこうな取引先だが、それの娘婿の妹の夫とのことだった。もちろん断る。


領主とか司教とかにねじ込まれれば何かすることもありうるが、それ以外は考えられない。


「お受けできませんのでおかえりください」

「いいのか? うちは取引先だぞ」

「ええ、けっこうですのでお帰りください」


そう言うと、悪態をついて帰って行った。


あとでその取引先に問い合わせると、主人と番頭と娘婿とで菓子折り持ってやってきて平謝りで、あちらの妹夫婦とは全く関係ありませんからどうか構わず追い返してくださいと言う。娘婿など恐縮しきって震えあがっている。


後であちこちの取引先にその旨の文書が回ったらしい。まるで破門状だ。





 他にも流通に問題があると難癖をつけてきたケースもあった。いきなりケンカ腰だ。


「こんなに誰も買えない状態がいいと思っているんですか?」


だからいま一生懸命増やしている。しかも別に3年とか5年とか放置しているわけでもない。


「ええ、流通の拡大に努力しています」

「だけど結果が伴っていないじゃないか」

「いえ、少しずつ成果は出ています」

「それを見せろというのだ」

「何が言いたいのですか?」

「ここに出せばいいんだ」


結局これか。またお帰り願う。中小企業だから気軽に主人に会えた方がいいと思っていたけど、そろそろ受付を置かないといけないのかもしれない。





 ただ受付を置いても対処しきれないかもしれない。休みの日に家の近くを歩いていたときだ。


「ああ、店主さん、ちょうどよかった」

何かちょうどよくなさそうな呼びかけだ。


「はあ、何でしょうか?」

「いやね。ずっとシーフードを買おうと探しているんだけど、高くてちっとも買えないんだ。店主さんの顔で何とか安く手に入らない?」

「いえ無理です」

「そんな、私と店主さんの仲じゃないか」

「どなたでしたか?」

「これだけ近所に住んでいるのだからもう仲間でしょ。向こう三軒両隣、融通してもいいでしょう」


どうも歩いて10分くらいのところに住んでいる人らしい。向こう三軒両隣でも何でもない。


その程度近所に住んでいる人は数百人か下手をすると千人はいるんじゃないかと思う。隣に住んでいても融通するつもりはないけれど。


「いやできません」

「そんな冷酷な」

「だいたいその理屈ならあなたのお仕事をご近所だからとタダでやってもらっていいんですか?」

「それとこれとは話が違うでしょう」

「とにかくできませんからお引き取りください」


前世で開業医がゴルフと称して休日は留守ということにしていると聞いたが、こういうのはどこにでもいるんだと思う。




 ことさらひどいのは渡さないなら政庁に訴え出るなどとなんだかよくわからない脅しをしてくる人がいた。


「あなたは私に白身魚を渡すべきなんです。まだそれをしていただいていません。それとも政庁の方にあなたが供給の義務を果たすよう指導を要請するべきでしょうか」


正直言って何を言っているのか意味が分からない。


「何を言いたいのかわかりませんが」

「あなたがシーフードを私に出さないのは不当だ。訴えますよ」

「私は妥当と考えますが、不当だと思われるなら問い合わせたらいかがでしょうか?」

「そうさせてもらう」


後で政庁の方に変な人が来ると知らせておこう。相手をする人も気の毒だ。





 世の中にはごく少ない割合だがあまりにも変な行動をとる人がいるらしい。


それで俺が希望したわけではないが、いまみたいに何か特別な権限を持っていると、その人たちは俺がその人たちのために使うべきだと確信するらしい。


そう言う地雷みたいな人がごくわずかでも一定割合いると、どうしても他人とはあまり関わらず通り一遍の対応になってしまう。


もう少し人と交流した方がいいかもしれないが、地雷がごくわずかだがあるので、どうしても避けてしまうのだ。



 何で中小企業の経営者に過ぎないのにヤラカシに囲まれないといけないのかと思う。


もっともよそで手に入らないものを独占に近い形で持っているのだからこういうことも起こるのかもしれない。


ある意味では領主や司教に派手に宣伝されてしまったのも原因かもしれない。


宣伝してほしくなかったわけではないが、もう少し流通が確立してからの方がよかった。それはそれで図々しい考え方というのはわかる。


ともかく流通の拡大に努力しよう。それでややこしいことも片付くはずだ。


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