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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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シーフードに競合参入

 冷蔵流通に水路の交易をかけ合わせてシーフードを加工の町から輸入している。


だが品薄で苦情が出たりあちこちで問題が起きている。しかもバカ高くなってしまっているのだ。



 ところで冷蔵流通に必要な氷魔法使いはうちが大半を押さえているが、独占しているわけではない。


もっともいまの調子でうちがどんどん押さえていくと、そもそも資質のある人が限られているので、うち以外はなかなか雇えなくなる気はしている。


ともかくシーフードの不足に目をつけて他の商人が参入してきた。それは品不足でいくらでも欲しがる人がいて、しかも高く売れるとなれば参入しないはずがない。


冷蔵庫は別にうちの独占ではない。木工業者に行けば作ってもらえるし、実際に使っている業者もある。だから持っている業者はいくらでもある。


そう言うわけでうちが契約してない氷魔法使いを使って輸入をしようという者が出てきた。




 ただそれができるならうちでとっくにやっているというのが本音だ。やってみてもできないから品不足になっている。


それなのに競合業者が売り出しを始めた。


うちの店に並んでいる客からいろいろ声が聞こえる。


「あっちの方が安いかな」

「さあこっちの方が前からしているし安心じゃないか?」

「でも見てみたいよな」

「どちらにしても供給量が増えれば安くなりそうだな」


「こっちの店も大名商売だからな」

「ああ、安く買えるならそっちの方がいいな」

「これで向こうに負けたらいい気味だな」


 言いたい放題言われている気もする。別にうちの店員が威張っている様子もない。もちろん品薄でほとんど出していないし、やたらと高いのが気に入らないのはわかるけれど。


 よそが気にならないかと言われれば気になる。とは言え、別に独占したいわけでもないので、競合が来ても全くかまわない。


ただちゃんとやってくれるかということだ。冷蔵庫を使えたとしても流通となるとけっこう難しい。


きちんとしてくれないとシーフード自体の評判が悪くなってしまう。




 しばらくしてそちらの評判が聞こえてきた。どうやら魚が傷んでいたらしい。


「いやあ、ずいぶんひどいものだったらしいですよ」

「味が落ちていたとか、そもそもにおいがしたとか」

「もうドロドロでドブのにおいがしたとか」


「やっぱり新興はダメだな」

「やはり前からやっている店の方が安心か」


 信仰と言えばうちだってシーフードはまだ3か月くらいで新興ではある。それから前に悪口を言っていた人たちと別の人だろうけど、人の言うことはずいぶん気分に左右されてあてにならないように思う。


 いろいろ聴こえてくるが、噂話というのはどこまで正しいかわからない部分はある。聞いた人が思い込みで脚色したりすることも多い。


仕方ないので少し金はかかるが調査員を雇って実際に購入した人の声を拾ってみた。


そうしてみるとやはり完全にダメになっていたわけではないらしい。とはいえいくらか傷んでやはり味は落ちていたようだ。


まるっきりダメになっていたわけではないということはまったく氷魔法を使わなかったわけではないは思う。



 ただうちで運ぶときはかなりノウハウをため込んで悪くならないように工夫している。それが全くないとしたらいろいろと難しいことが多いだろう。


氷を入れるタイミングと量とか解凍のタイミングとか途中でのチェックの方法とかいちいちマニュアルにしてある。これが流出したら困るとは思う。


そう言うわけでできるだけ限られた部署だけにいてもらい、あちこちに行くのはそれなりに昇進してからにしてもらう。昇進してからだとさすがによそにはいかないと踏んでいる。


またそう言うマニュアルの秘匿を理由にして氷魔法使いには競合避止義務契約をして、数年は同業で働けないようにしている。


もっともうちは待遇は悪くないから、よほどよそが何かたくらんで高給を出さない限り、待遇面で負けてはいないと思う。


あまり契約で縛り付けるより、待遇で正面から勝負したい。



 よそは失敗したのにうちだけ成功しているのは、何度も実験してから本番に移しているからだ。


いきなり本番にするような真似はしていない。そう言うところで圧倒的に先行している。


結局そこで蓄えた知識があったために、難しそうだから避けていた仕事を、何も知らない人たちが踏み込んでしまったようだった。



 よその業者が参入することについては必ずしも悪いことではない。


正直な話をすると独占した方が儲かる。ただ独占がよくないこともわかる。


うちの都合で価格が決まり、消費者は黙って買うしかなくなるからだ。


そうすると消費者の利益にならないのはもちろん、限られた人が限られた機会にしか買わなくなり、市場が狭まる。


ただ独占を崩そうとするなら、氷魔法使いを育てることとか、実際に売る前に実験をするとか、きちんと段階を踏んで対抗してほしい。




 けっきょくよその業者は売り物にならない物が大量にできてしまったり、返品や苦情が相次いだりしたために、シーフードの交易はやめてしまったという。


やはり小さいところで試すに限る。いきなり大がかりにするとか、いきなり本番にするとかそう言うのはやめた方がいい。



 転売業者が出てきたあたりで、うちの店の中で彼らと一緒にされたくないとの声が上がってきた。


シーフードについては卸売りがメインで、というより領主と司教とレオーニ氏がほとんど持って行ってしまい、小売りをしているのは繁華街のうちの高級店だけだ。


卸売りについては別によそと混同されることを心配する必要はない。




 ただ小売りの方はもしかすると客がうちとよそと混同するかもしれない。冷蔵が怪しい業者と一緒にされても困る。


そこでうちは冷蔵はしっかりしていますと説明文を店頭に掲げたり、冷蔵庫の展示や船や港で冷蔵庫に氷を入れている絵などを店の壁に貼りだしたりしてみる。


さらに店に雇っている氷魔法使いの数を掲示したり、氷魔法使いの似顔絵をやはり壁に貼り付けたりと、いろいろやってみた。


さすがに氷魔法使いが10人以上いる組織というのはクルーズンどころか王国中探してもほとんどないと思う。


少しイケメン風の氷魔法使いの絵が人気だったので、よそにも貼ろうかなどと話していたが、本人が嫌がったのでやめにした。



 いろいろしてみたが、むしろよその方が潰れてしまったので、混同されることはなくなったように思う。


ただまた別の業者が出てくるかもしれないし、しばらくは貼っておこうかと思う。


もしかしたらうちの品が安心できるものだとの宣伝になるかもしれない。


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