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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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シーフードの値上げ

 冷蔵流通に加えて水路を使い、南部の港町マルポールから魚を仕入れている。司教やら領主やらが見せびらかしたせいでブームになってしまい品薄が続いている。


冷蔵流通自体が難しくいまのところうちくらいしか扱っていない。その上に司教や領主がよけいに欲しがることもあってますます品薄になってしまう。


その前から使っていたレオーニ氏も絡んでいろいろややこしいことがあった。



 船がダメなら陸路という手も考えられるが、それはもっとダメだ。途中の町の氷魔法使いがまだ育っていない。


しかも馬車は船より運べる量が少ない上にそもそも遅い。氷魔法使いを馬車に同乗させると拘束時間も長くなってしまうし、だいたい無駄が多い。


積載量が少ないためほとんど仕事しない時間があまりにも長くなるのだ。これでは効率も悪いし、あまりに値段が高くなってしまう。


もともとネックなのは氷魔法使いなのでそれが一番生かせる方法を使わないといけない。陸路は完全にダメだ。



 そんなわけでうちの店でも手に入りにくいし、レオーニ氏の店も出す量は限られている。シーフードを食べようと思ったらあとは教会か政庁に伝手を持つしかない。


どうやら食べたことが自慢になって、食べるとその仲間のサークルに入れるようだ。


そんな理由で食べてもいないのに食べたふりをしたり、休みを取ってマルポールまで行った人もいるという。


そうすると今度はクルーズンで食べるからいいとか、本場で食べる方がいいとか変な自慢合戦が始まったとのことだ。


シーフードを持ってきたのは単に面白そうだったのと儲かりそうだったからだが、どうにも世の中というのは変な方向に動いてしまうものだ。




 うちがやっている高級店の方でもややこしいことがあった。供給の少ない魚を買おうと開店前から大行列になってしまったのだ。


近所の店からは苦情が来るし勘弁してほしい。それはまあ近所の店からしたら邪魔で仕方ないだろう。



 ところで俺は行列のような生産性のないことは大嫌いだ。それは前世の日本にいたころから嫌だった。


並ぶような店にはできるだけ行かないようにしていたし、店でも待ち時間を聞いて少し長いとじゃあいいですと立ち去ることも何度もあった。


何か新しい食べ物がブームになっても落ち着くまではあまり近づかないようにしていた。並ぶようなテーマパークは残念ながら一緒に行ける人がいなかったけれど。



「どうしようか、これ」

「値段を上げればいいんじゃないですか?」

カミロが言う。確かにその通りだ。たぶんそれが正攻法だ。そうすれば並ぶ人も少なくなる。


「値段を上げるとなんかあくどいことをしてそうに見えない?」

シンディが言う。それももっともだとは思う。


ただ食べ物だけれども必須の食材ではない。半ば以上は人に自慢するためのものだ。


だから値段を上げてしまってもさほど不道徳だとは思わない。




 だいたい転売まで起こってしまっている。転売でうちで売っている値段よりもはるかに高い値段で売りつけているのだ。


うちで3000ハルクで売っていたものを3倍以上の1万ハルクなどの値段をつけていた。


転売するような連中は冷蔵庫だの氷魔法使いだの使えるわけでないから、品質もかなり心配だ。こんなことはやめさせるに限る。


だいたい品質の劣る食品など流通したら、うちの評判まで悪くなりかねない。




 そこでシーフードの値段を上げることにした。別にバカ高くしたいわけではないのだが、開店前に何時間も並ばれるのも転売されるのも困る。


それなら初めから高額の値段を表示して並びたがる人には諦めてもらい、転売屋には儲けを渡さない様な値段にする必要がある。


経済学的には悪くない手段だろう。ただもしこれがコンサートチケットだったりすると、それ以外の別要素が絡みそうだ。だから転売屋よけに値上げはなかなか使いにくいと思う。


 ともかく客の数が落ち着くまで価格を上げていくと、大したことのない白身魚が1人分1万を越したりしてしまった。


もし3000ハルクくらいならちょっと贅沢してみようと思う人でも1万となると手を出さない気もする。


さらに家族で4人もいれば、1万2000ですんでいたのが、4万になったらさすがに避けるだろう。


しばらくは金持ちしか買えそうにないが、遠くない未来に庶民にも買えるようにはしたい。


ともかくそれで行列は落ち着いたが、1万の魚がおいてある冷蔵庫を見に来るやじ馬がずいぶんと来店していた。別にガラスでもないから見えないのに。



 大幅値上げはしたけれど、シンディの言うようにあまり暴利をむさぼるようなことはしたくない。


ただ実を言うとよけいに経費をかけているのも確かなのだ。


氷魔法使いに超過勤務をしてもらうのにかなりの手当てを出している。それでも超高額をつけているので相当な儲けが出る。


暴利をむさぼっているとみられるのは嫌なので、かなりの金額を慈善事業に寄付して、寄付したことを宣伝することにした。




 家に帰るとクロが残っている魚にそっぽを向いている。

「それは高級品なんだからね」

食べるまで他のものはやらないようにする。


だがまた甘やかすのがいるのだ。

「クロたんおいしいもの食べたいよねえ」


また神が何か作り変えている。まったくしようのない。


クロはフンフンとにおいをかいで食べ始める。神はものすごくうれしそうにしているが、少し食べるとやめてそっぽを向いてしまい、神は落ち込む。


まあ猫なんてこんなものだ。神もこれに早く慣れた方がいいと思う。

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