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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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港町マルポール滞在

 冷蔵流通ルート確立のために船で南下して河口の都市マルポールに向かっていた。


途中にもいくつか町があるが、今回は大都市であるマルポールに直行する。


マルポールは海に面しており、海外からの産物に加えて、海産物までが期待できる。



 クルーズンからマルポールまで5日かかる。もっとも俺の場合はちょくちょくギフトのホールで家には帰っている。


とはいえ同行者もいるし、長々と向こうにいるわけにもいかない。基本的に猫分を補給するためだけ

だ。



 川を下って行ってマルポールにたどり着く。海の上は空の色が違う。また港も磯の香りがする。あれは微生物の作り出す化学物質らしいけれど。


港の周りにはその場でシーフードを焼いて食べさせる店がある。せっかくなので、氷魔法使いと代言人と3人でイカなどをほおばる。



 その後は宿に荷物を置き、その日は休む。翌日は代言人は領府へ、俺と氷魔法使いは冷蔵庫をもって商業ギルドに向かう。


商業ギルドでは前と同じようにあらかじめブリュール氏からマルポールの取引先経由で知らせが行っており、お披露目会を開く。



 お披露目会もいつもと同じものだ。肉やジュースや果物を出す。もう口上などもだんだん慣れてきてしまった。その辺は毎回変わらない。


いつものように驚かれ、好意的な評価をもらう。ただこちらの人はやはり海産物の輸出に興味があるようだ。


「その冷蔵庫というのは海産物にも使えるのですか?」


シーフードが冷凍できることは前世の知識として知ってはいるが、俺にとってこの世界では初めてのことだ。あまりうかつには答えられない。


「肉に使えるのでおそらくは可能かと思われます。ただし冷凍の仕方や解凍の仕方によって味が落ちることも考えられます。その点は試行錯誤や研究が必要でしょう」


「それならうちの魚を離れた町に売れるな」

「漁期のうちに保存しておいて、漁期外で出せるかもしれないぞ」

「ふだん傷みが早いものもあるが、うまいまま食べられるかもしれないな」


海産物関係者が多いのか、その手の会話が多い。


「私もぜひマルポールの海産物をクルーズンの人々に味わってもらいたいと思っています」



 いまのところクルーズンに出回る海産物というと干物や塩漬けや乾物ばかりだ。


ごくわずかに金持ち相手に塩水の樽の中で泳がせて持って行くこともあるらしいが、微々たるものだ。


それが庶民でも少しのぜいたく程度で手に入るようになりそうだ。


あ、思い出した。レオーニ氏がいたんだ。持って行かないと後で何か言われそうだ。




 何か言われそうと言えば、クルーズン伯爵と司教にも持って行かないといけない気もする。


ただあっちはモノが悪くなっていると困るからとりあえず知らせておいて、品質が安定した適当な時期に献上するのがいいのかもしれない。



 翌日は各商会から主人やら番頭やらが入れ代わり立ち代わりで面会に来る。


どちらともネームカードをやり取りし、いずれ流通ルートができたら取引しましょうと話す。


冷蔵庫自体に興味を持つ商人もいて、そちらにはうちがマルポールでの特許を取って、それを公開してこちらの木工商で作られることを説明した。



 それが終われば魔法学校だ。もう条件としては今までの交渉でほぼ基準が確立しているので、ほとんど交渉なしにこちらの条件を提示する。


あらかじめ手紙を書いておいたので、向こうも戸惑くことなくスムーズに話は進んだ。


こちらが推薦した生徒を氷魔法使いとして育ててもらうことで合意する。



 氷魔法使いには次の船が出るタイミングでクルーズンに戻ってもらう。冷蔵庫に冷凍のシーフードを山ほど詰めてからだ。


氷魔法があるのにいままでなんで冷凍輸送がなかったのかと思う。ただ氷魔法の使い手は少ない。資質ではなく育ててこなかったからだ。


氷魔法使いが少なくて見たことがある人も少なかっただろうから、冷蔵庫を作ろうという発想にもならなかったのだろう。


それで冷蔵庫がないと、氷魔法があっても運ぶのは大変だ。外気にさらされているとしょっちゅう魔法をかけていないといけないからだ。


冷蔵とか冷凍とかそれを伴う輸送というのは、前世で冷却技術をさんざん見てきた俺だから実現できたのだと思う。



 一通りの仕事が終わると、後はまたギフトのホールで幹部たちを入れ代わりマルポールに招待する。みなシーフードに舌鼓を打っている。


シンディなどは体を動かすからか、また両手に串をもって食いちぎるようにして食べている。まあ喜んでくれてうれしいと思う。


一方でカミロの方はいまひとつお好きでないようだ。人それぞれだ。


アランはやはり間に合わなかったようだ。ただ彼にはギフトでなく船でもう一度こちらに来てもらえばいい。



 今回は特許を取るために連れてきた代言人は早く終わってしまい、俺が滞在中に帰ってしまった。一度した申請だから本人も慣れたのかもしれない。



 マルポールでは都度都度、クロの元へ帰ってお土産に海産物を持って行った。


はじめはフンフンとにおいをかいで、そしてお召し上がりになる。


だがそのうち飽きるようだ。また2回目3回目と出すとやはり以前は食べたのに食べなかったり逆に食べたりと気まぐれだ。


ただ神の方はいままで魚という選択肢はあまり頭になかったようだが、俺が持って行ったものをクロが食べているのを見て、魚も出すようになった。


全能でないにしてもそれなりの能力があると思っていたが、あんがい考えは狭いのかもしれない。


「クロ様~、おいしいですよー」

孫の気を引こうとするジジイみたいなものだろうか。だがやはり猫だけに気まぐれだ。


「お気に召さないようでしたら、おいしくしましょうねー」

またいろいろ加工している。


ただよくよく考えると猫の反応はちゅーる以下で、神なのに日本の食品メーカー以下なのかもしれない。


ところで神がクロにタコやイカを与えていたことがある。


「それは猫にはよくないんだぞ」

そう言うが、神はすかさず反論する。


「クロ様には状態異常一切無効の加護がついている。そんなものまったく問題ないわ」

こういうところだけはいちおう神らしい。ちっとも神らしくないのだけれど。


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