表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
345/639

ダーフ川を南へ北へ

 冷蔵流通の必要性で各地の魔法学校や魔法塾と契約しようということになった。ただそれだけだと卒業生の就職先が浮いてしまうため、結局流通ルートも作らないといけない。


就職先がなければせっかく育てたのによその商会に行ってしまう。


うちの商会のお金で研修を受けたから数年はよその商会で働くなとの競業禁止契約があっても、あまりにも遠いところにしか職場がないのでは認められるかわからないし、


だいたいそこまでブラックなことはしたくない。そう言う無理に頼らずにきちんと妥当な条件で動けるようにしておいた方がけっきょく後でしっぺ返しを受けなくて済む。




 北はレーヌ市に行ったがその先もありうるし、実はその手前にいくつか小さい町もある。東はクラープ町があり、その先には子爵領の領都ゼーランがある。


その先はまた峠を越えるのでちょっと行けそうにない。南は川を下っていくと5日ほどで海にたどり着く。河口には大都市マルポールがあり、その手前にもいくつか町がある。


西は東と同じで大都市はないのだが、いくつか町がある。




 東のクラープ町とはすでに交易しているが、ゼーランに行く気はない。あの領主とは関わりたくない。北のレーヌより先はちょっと手が出しにくそうだ。


それはレーヌに支店ができてからになると思う。ただ途中のいくつかの町は押さえておいた方がいい気がする。


南のマルポール市と途中の町はぜひ押さえておくべきだ。西は急がないが、手だけつけておいてもいいかもしれない。



 そういうわけで流通についてブリュール氏に相談に行く。


「四方八方に冷蔵流通を広げたいと商会の中で相談しています。どちらがおすすめでしょうか?」

「それはやはり南のマルポールでしょうな。海外からの産品に加えてうちでは扱いませんが海産物も入ってきています」



 実を言うと海外産品は冷蔵流通にはあまり関係がない。常温で1月や2月たった産品が入ってきているのだ。だから冷蔵にする必要がなく、よその業者に比べてうちの利点があるわけではない。


海外まで冷蔵を広げるとなると、たぶんマルポールに支店を作って船に氷魔法使いを載せて、海外にも氷魔法使いを置かないといけない。それはいまはとてもできない。




 だが海産物の方はものすごく冷蔵流通に有利だ。この辺り内陸部では海産物は味わえない。旅行でマルポールに行って食べたことのある人はいるし、名物として知られている。


だから冷凍してここまで持ってくればおそらく売れる。海の魚は川の魚より種類が多い。それにカニがいるかどうかは知らないがエビはいそうだ。


タコやイカもいるのかもしれないし、貝類もある。それはぜひ行くべきだろう。


「北や西の町なども私は青果を輸入しているので、冷蔵流通が発達してくれるとありがたいのですが」

「ええ、もちろんそちらの方も進めていくつもりです」


 そんなわけで商会に帰り、方針を決めた。

「じゃあ、俺がマルポールに行くよ。そうしたらまたみんなギフトのホールでマルポールに連れて行くから」

「まあ、それは順当だよね。大都市だし」

「賛成」

「他のルートはどうするの?」


「北方の各町は、アラン行ってくれる?」

アランは出店先の開拓などが得意だ。それでいて仕入れや総務のような恒常的な仕事には関わっていないので、もってこいだ。


「あれー。俺はマルポールは行けないのか?」

「タイミングが合えば行けるようにするよ。それがダメでも今後は何度も行く機会はあるだろうし。それに北部の各町は誰も行ったことないよ」

「まあ、それもそうだな。じゃあ北部の方を開拓してきますか」

「よろしく頼むよ」


そう言うわけでまた俺は氷魔法使いと代言人を連れて、今度は船で南に向かった。


途中の町にもよりたいが、そちらは時間がかかりすぎるので、アランが帰ってきたら任せようかと思う。



 アランは冷蔵庫をもって氷魔法使いを連れ、逆にダーフ川を北にさかのぼる。川沿いにレーヌまで3つの町がある。


それぞれで下船して次の船が来るまでの5日間で魔法塾と契約し、各町の商業ギルドで冷蔵庫を見せ、取引したい商会と話をつける。


ついでに時間があれば見聞という名の観光をしてもらってもいい。女の子を口説くか、リサイタルになるかもしれないけれど。




 俺の方は前と同じでちょくちょくギフトのホールで家に帰りクロをモフモフしていた。人の顔を見て足元にピタッとくっついてくるのがなんともかわいい。


あれは撫でて欲しいという仕草だ。じっさいになでてやると気持ちよさそうにしているし、また次の日も寝ているところを起きて来て、ピタッとくっつく。嫌がっていたらそんなことはしないだろう。


「よしよし、クロ。もう少ししてマルポールについたら魚を買ってきてあげるからね」

「猫様は魚を食べるのかのう?」

「日本じゃ猫は魚を食べるんだ」

「でも変じゃないか? 猫様は水が嫌いじゃろ。川や海で魚を取ることはほとんどないんじゃないか?」

「そりゃまあそうだが、それを言うならネズミや鶏ならともかく、牛や豚を食べるのも変だろ?」

「そりゃまあ、そうじゃな」

「とにかくクロが食べたいものを食べさせておけばいいんだ」

「いや、その言い方は間違いじゃな」

「何がおかしいんだ?」

「『クロ様がお召し上がりになりたいものとお召し上がりいただけばいい』と言うべきじゃな」


ああ、これをあの教会の信者たちに見せてみたい。それでも信仰は揺らがないのだろうか。これ自身のクロへの信仰は揺らぎそうにないけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ