表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
342/640

レーヌから帰ってきて家に引きこもる

 冷蔵流通ルートの確立のために北部のレーヌに行き、多数の商会主と会い、また魔法学校との契約も果たした。


船では帰らず、またホールで帰る。ところがそうすると他人から見ると日数が合わなくなるので、しばらくどこか隠れることにする。


「フェリス、早く商会に出てきてほしいんだけど」

マルコに言われる。


「いやだって俺がいるのは変だから、しばらく家に引きこもろうかと思う」

「え?」


何か露骨に迷惑そうだ。俺がいない間にずっと猫吸いでもしていたのかもしれない。


あまり変なことをしていると、神がご覧になっているのだけれど。


「なんか困ることあるの?」

「いろいろ処理してもらうこともあるし」

「他の人でもできるんじゃないの?」

「だけどいちおう商会長だし」

「俺以外ができるなら、そうした方がいいよ」

「まあそうなんだけど」


「ちょっと調べたいことがあるんだ。各地の魔法学校や魔法塾のことなんだ。さっさと契約した方がいいことに気づいたんだよ。レーヌの魔法学校はアーデルベルトが気づいて早めに契約したけど、そのすぐ後くらいにレーヌの商人が接触して来たらしいんだ」


「なるほど、他の商人も氷魔法使い養成の必要性に気づいたんだ」


「そう。いままでは他の商人はうちに頼るか、従来いる氷魔法使いに頼ればいいと思っていたと思う。だいたい氷魔法使いを抱え込むほど大量の冷蔵庫を使っていなかったからね。だけど流通に関わろうとしたら、抱え込むだろうね」

「そうしたら早晩足りなくなるね」


「そうそう。だから養成しないといけない」

「だから学校や塾を押さえると」


「そう。教育機関は軌道に乗るまで時間がかかるんだ。だから必要な時にすぐ作るのが難しい。さっさと確保してしまった方いいよ」

「だけど契約するにも金がかかるんじゃないの?」

「まあ、そうだね。それは賭けの部分もあるけど、余るよりむしろ足りなくなる方があり得ると思う」


氷魔法使いに十分な需要があれば大儲けになるだろうし、なければ学校や塾に出す資金などこちら持ちで大損になる。とは言え、流通が拡大して需要が増えるのは必至だと思う。


「で、どうするの?」

「ともかく小さい契約でもいいからクルーズンの四方八方の魔法学校や魔法塾と契約してしまおうかと思う」

「確かに流通経路は魔法使いが確保できるかどうかの勝負だもんな」

「そう。それでクルーズン周辺の各地の魔法学校や魔法塾がどうなっているか調べてきてほしい」

「え? 僕が直接行くの?」

「まさか。図書館で調べるか、クルーズンの魔法学校で聞いてくるか、それも部下に頼んででいいよ」

「わかったよ。ところでごまかすのに10日間引きこもるの?」

「うん。そのつもりだけど」

「えー、出ていた方がいいよ」

「クロならその間もちゃんとマルコが触れるようにするよ。いやマルコとクロだけの時間をとってもいい」

「それはそれでそうしてもらうけど、そう言うことじゃなくて」


もらうんかい? と思う。ともかく何で休んではいけないのだろう


「だって俺はここにいるはずじゃないから出ない方がいい」

「変装すれば出られるじゃない」


変装してもばれる可能性はある。だから変装で出歩くのも最小限の方がいいのだ。


「変装したってばれることはあるよ」

「みんな働いているのに」


ああ、そう言うことか。レーヌ行きでも役員のうちシンディはしたいことをして、アランは遊んでいたが、他はみんな仕事をしていた。


商会が大きくなって責任ができたり、また目標ができてそれに向かっているのかもしれない。だけどちょっと働き過ぎだと思う。それは俺もそうなんだけど。


前世のベンチャーとかにありそうだが、もう少しきちんと休みを取った方がいい。


「いや、みんな仕事しすぎだよ」

そう言いつつ、俺も資料は調べるつもりだったんだよな。


「だって商会を大きくするときじゃない」

「それはそうだけど。もっと部下に任せなよ。儲かっているんだから人が足りなければ採用すればいい」

「だけど幹部が判断しないと」

「少しずつ部下に任せて行かないと、幹部が病気したり事故があったり辞めたり他に何かしなきゃいけなくなったときとかに何にも動かなくなっちゃうよ」

「そりゃそうだけど」


「決めた。俺は10日間引きこもる。俺に事故があった想定で、マルコが商会の臨時の長をして。

それからマルコのふだんの役は他の人に委ねないとダメだよ。いつも通りの時間に帰ってきてもらうから」


「さっき言っていた魔法学校との契約の件はどうするの?」

「それもマルコがやって。どういう結果になっても受け入れるから」


そう一方的に宣言する。ついでに本社の方にも変装して行って、同じことを幹部に伝える。後は本当に引きこもってしまう。


本当に引きこもってしまった。だいたい陸路だったら本当に10日不在のはずなんだ。ギフトがあること前提で考えるのもよくない。


本当のことを言うと魔法学校の件は気になることは気になる。


だけど本当に病気や事故になってどうしても手出しができないときじゃなくて、危なくなれば手出しができるときにいなくなってみた方がいい。


マルコはその日はずいぶん遅く帰ってきたので、いつも通りに帰ってくるようにと言う。

「長がいつまでもいると他の人が帰れなくなっちゃうぞ」


そう脅すと翌日はいつもに近い時間に帰ってきた。その間シンディの方は全くのマイペースだ。

マルコからはいろいろ相談を受けるが、聞いていない振りをする。


「事故の想定だし、いまの長が判断した通りでいいんじゃない?」

とだけ答える。


実際は聞いてしまっている。どうもそう言うところが割り切れない。


正直よほど無茶苦茶をしなければ大丈夫だとは思っているのだけれど。



 マルコは数日して諦めたようで、こっちに聞いてくることもなくなった。


10日して出勤する。こちらはけっこう魔法の練習になった。


幹部たちは戸惑った顔をしているが、聞いたところ特に商会の方は問題がないようだ。




 すぐには変化はわからないとは思う。


だけど確実に何か異なる意識が生まれて、それがほんのちょっとの分かれ道になって、何かが変わっていくような気がする。


ほとんど思い付きだったけれど、行き止まりに向かうのを避けられたような気がしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ