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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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レーヌの魔法学校との契約

 クルーズンとレーヌの間の冷蔵流通ルートの確立に努めている。役員が入れ代わり立ち代わりで、こちらに来ている。


観光でもしてもらおうと思っていたが、皆それぞれ仕事のことを考えていたりする。従業員だとよくない傾向だが、役員だったら経営者だからいいか。


使用人に過ぎないものに経営者マインドを持てなんて言うのはおかしな話だが、名実ともに経営側が経営者マインドを持つのは自然と言えば自然だ。




 その中でアーデルベルトは本当に仕事の話をしてきた。


「氷魔法使いの養成がまだ不安でしたね」

「いちおうクルーズンの魔法学校には要請してあるけど」

「ついでにレーヌの魔法学校も押さえてしまいましょう」


確かにその通りだ。この商売は氷魔法使いの獲得が勝負のところがある。氷魔法使いがいないと冷蔵庫は使えない。


「確かにその方がよさそうかも。うちは氷魔法使いが足りないし、押さえてしまえばよそが手を出しにくいだろうし」

「ええ、そうです。それによそに取られたら目も当てられません」

「それもその通りだ」

「早く契約してしまいましょう」

「そうだね。じゃあ一度クルーズンに戻って役員に諮ろうか」


そういってまたギフトのホールでクルーズンの家のクロの前に戻る。なおホールについては多くの人に知られると危険なので限られた人にしか知らせていない。


ホールで帰ってクルーズンでうろうろしていると、レーヌ滞在を知っている人からなんでこの日数で戻って来れるのかと疑われかねない。


そこで変装して社屋に行くが、あいにくというか、こういう時に限って役員が集まらない。外で仕事をしていたり、休んでいたりとそれぞれだ。


「みんな捕まらないね。どうしよう?」

「仮でもいいから契約してしまいませんか?」


アーデルベルトはいつになく強引だ。いつもはもう少し慎重だ。ちょっと気になるので聞いてみる。


「ずいぶん急いでいるけど大丈夫なの?」

「ああ、そうでしたな。いえ、以前にタッチの差で契約を取られてしまい、あとでうまくなくなったことがありまして、ちょっと焦っていたのかもしれません」


確か彼は大商会にいたというからそう言うこともあったのかもしれない。一応聞いてみたい。


「その時はどんな感じだったの?」

「私が担当だったわけではないのですが友人が担当で、新しい商品の契約を躊躇しているうちによそに取られてしまい、けっこう後々まで響きました」


あまり詳しく話したくないようだが、けっこうつらいことだったようだ。本人というより友人のことだったからかもしれない。


「とりあえず契約してしまおうか」

「いいのですか?」

「いくらか手付金を出して、それ以外はこちらの義務がないようにしておこう。後で承認を取ればいいよ」

「そうしてもらえると私も安心です」


そういうわけで、とりあえず100万持ってクロのところから2人でレーヌに戻る。100万と言っても金貨なので実際はそれほど大きくない。


アーデルベルトには見えていないが、神が「なんともあわただしいのう」などとぼやいている。




 レーヌに戻るとすぐに魔法学校に向かう。アポイントなしだがギルドのゼーマン氏からもらった名刺を見せて副校長という人と面会する。


「はじめまして、クルーズンのシルヴェスタ商会のシルヴェスタと申します」

「はじめまして、当校の副校長でございます。ところでそのクルーズンの商会の方がどんな御用でしょうか?」


副校長はなぜかアーデルベルトの方を見て話す。アーデルベルトの方が主人で俺が付き人に見えるのはわからないでもないけれど。


アーデルベルトが俺の方が商会長であることを言うと、副校長氏はあたふたしていた。ともかく話を進める。


「実は先日、冷蔵庫というものを当方で開発しました。実はそれを使うのに氷魔法使いが必要なのです」

「ほう、氷魔法ですか?」

「はい。それで貴校に氷魔法使いの養成をお願いしたいと存じまして」

「当校では氷魔法専門のコースというものはございませんが」

「ええ、そこでこちらでも費用を出しますので作っていただきたいのです。それでうちから派遣するものを優先的に育てていただけませんか」

「それは興味深い話ですが、私ではお約束できませんで」


たぶん別に理事か何かがいるのだろう。ちょっと強引に迫ってみる。


「実は私どもあまり長く滞在できません。どなたか権限を持っている方にお出でいただけませんか?」

品がないが金貨まで見せてしまう。


「はあ、それでは呼び出してみますが、1時間ほどかかるかもしれません」


金貨のせいかすぐに話が進む。待っている間は氷魔法について詳しい話をしていた。


理事という人が来て、また話を進める。副校長から紹介されたのだが、理事もまたアーデルベルトの方に話をするのだ。


副校長は俺の方が店主だと理事に耳打ちすると、理事はきょとんとしていた。それはともかくまた話を進める。


「今回は氷魔法使いの養成コースを作って欲しいのです」

そこでさっき副校長に話したことを繰り返す。


「なるほど興味深いお話です。ぜひ前向きに検討させていただきましょう。最終的には理事会で諮って決定します」


「実は先ほど副校長先生にも申しましたが、あまり長く滞在できないので、仮の契約だけでもこの場でお認め願えませんか?」


「ずいぶん急なお話ですぐにはお応えしづらいのですが」

「この通り、手付けも持ってきておりまして」

そういって金貨を見せる。


「なるほど、わかりました。仮の契約をするということで承りましょう」


金貨が効いたのか、すぐに契約書を交わす。これでひとまずは大丈夫だ。もしうちの役員会でうまくなかったとしても手付け流れで済む。



 そうして冷蔵流通ルート確立のためのレーヌ滞在も終わった。役員たちにもレーヌを見せることができた。


なお滞在中に代言人に頼んでいた特許の件はかたがついたらしい。無事に認められるとのことだ。一緒に来た氷魔法使いはすでに帰っているので、代言人には船で帰ってもらうことにした。


俺の方は陸路で帰るからと言って別れる。実際はホールで帰るのだけど。




 帰ってすぐに役員を集めて魔法学校の件の承認を取った。


そちらは人を派遣して魔法学校と本契約を取ったが、やはりその間にレーヌの商人から接触があったという。手付けだけでも打っておいてよかったようだ。


 ただ今回のことで他の商人も気づき始めたことはわかる。他の地域との流通もだが、各地の魔法学校や魔法塾との契約も急いで進めた方がいい気がしてきた。



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